自律走行型ロボットが「ルンバ」のように草刈り、26台が走り回る福島のメガソーラー

背の高い雑草が淘汰されて植生が変化、発電量も増加

2020/04/14 11:30
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 福島県の平野部に、近隣で3カ所の太陽光発電所が点在している(図1)。3カ所を合わせた太陽光パネルの合計出力は合計約6.7MWになる。地元の企業が開発、運営している。

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図1●敷地内では自律走行するロボット除草機が走り回る
(出所:日経BP)

 太陽光パネルは三菱電機製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 この太陽光発電所には、他にはあまり見ない特徴がある。複数台の自律走行型除草機を導入し、理想的ともいえる除草対策を実現していることである。その数は、3カ所合わせて実に26台にもなる。

 米iRobotの室内用ロボット掃除機「ルンバ」による室内の清掃のように、自律走行型の「ロボット除草機」が草を刈りながら敷地内を動き回り、充電残量が少なくなると充電ステーションまで自分で戻り、満充電した後に、再び刈り途中の「持ち場」に戻って草を刈りはじめる。このような手間いらずの除草が実現している(動画1)。

動画1●走行範囲の隅では4台が近接することもある

(出所:日経BP)

 無人で敷地内を自律的に走り回り、草を刈るという仕様は、太陽光発電所の除草対策として、理想的なものだ。

 これら3カ所の発電所の敷地は、段差はあるものの比較的、平坦である。「ロボット除草機」にとって、こうした地形は重要で、大きな傾斜や凹凸が多い土地への導入はやはり難しい。

 採用したのは、企業の一般的な事業所や住宅の庭などで使われているロボット型「芝刈機」である。スウェーデンの林業・農業・造園向け機器メーカーであるハスクバーナが製品化した。

 今回のメガソーラーでは稼働当初、主に乗用型草刈機を使っていた。乗用型の利点は、刈り払い機に比べると、作業者の身体的な負担と除草作業の所要時間が少なくて済むことにある。実際、こうした利点は享受できたものの、課題もあった。

 まず、架台の下の雑草を刈るのが難しかった。福島県といっても、積雪が比較的少ない地域に立地しているので、アレイ(太陽光パネルの設置単位)の設置高は、雪国ほど高くしていない。太陽光パネル低部の高さは低いところで約40cm、高いところでも約60cm、太陽光パネルの設置角も20度に抑えている。

 このアレイの下を乗用型草刈機で走行するのは安全性のリスクが大きいと判断し、比較的、雑草が長く伸びた状態で運営していた。

 発電事業者は、アレイの下も含めて、発電所の全体をもっと簡単で確実に雑草を刈りたいと考えていた。この時に、ハスクバーナの機種を知った。

 日本法人のハスクバーナ・ゼノア(埼玉県川越市)が現地でデモンストレーションを実施し、効果や運用上の懸念が少ないことを確認し、2018年7~9月の間に、3カ所のメガソーラーに26台を導入した。導入ではリースを活用した。

 第1発電所と第2発電所に10台ずつ、第3発電所には6台を導入した。この台数の違いは、発電所の面積の違いによる。それぞれの発電所で、1台あたり約4000m2の範囲を除草する。プログラムの設定に基づいて、無人の状態でも自律的に日々、草を刈り続ける(動画2)。

動画2●無人でも自律走行するので太陽光発電所に向く

(出所:日経BP)

 発電事業者によると、ハスクバーナの自律走行型を導入して以来、除草の手間が圧倒的に減っただけでなく、植生が望ましい方向に変わるという予想外の効果もあった。加えて、発電量の増加にもつながっていると感じている。

 雑草の植生は、背の高い雑草が育たなくなってきた(図2)。例えば、アレイの下で多く伸びていたセイタカアワダチソウは、ほぼ淘汰された。毎日、欠かさず刈られることから、背が高く伸びた先に種子をつけるタイプの雑草は、種子を実らせる機会がなくなる。

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図2●背の高い雑草は淘汰され、代わりに、発電所にとって都合の良い地を這うような低い雑草で覆われるようになった
(出所:日経BP)

 セイタカアワダチソウもその例で、この効果だけでも導入の利点を感じているという。背の高い雑草がなくなったことから、以前は多かったクモの巣なども少なくなった。

 代わりに増えているのが、クローバーのような、地を這うタイプの雑草である。メガソーラーの中には、背の高い雑草の育成を抑える効果を狙ってクローバーを植栽することがあるが、今回のメガソーラーでは植えたわけではなく、背の高い雑草が淘汰されるのと交代するように、自然に繁茂してきた。

 この結果、まるで公園のように雑草がしっかり刈られていて、芝のような印象を受ける状態に変わった。ハスクバーナのロボット除草機の特徴は、伸びた草を刈るというよりも、常に一定の高さに保つという管理になるため、最終的に背の高い多年草などは駆逐され、背の低い被覆植物が優勢になると見られる。

 この影響もあって、3カ所のメガソーラーの発電量は年々、増えている傾向にあるという。この地域では好天が続いて日射量が多くなっていることだけでなく、除草方法の変更が寄与した面もあると推測している。

 乗用型草刈機を主に使っていたころは、アレイの下に潜って走行して刈ることを安全上の理由で控えていたため、アレイの下には背の高い雑草が所々に繁茂していた。ハスクバーナの自律走行型を導入してからは、アレイ下もしっかり刈れている(動画3)。

動画3●地面から低い位置に固定されている太陽光パネルの下も刈れる

(出所:日経BP)

 以前は、背の高い雑草が多かったことで、アレイ下は風通しが悪く、日中、晴れると太陽光パネルの熱がこもりがちだったが、アレイ下も含めて背の高い雑草がなくなったことで、風通しがよくなった。

 結晶シリコン型太陽光パネルは、高温時に発電効率が下がる特性があるため、アレイ下の温度が下がることで、発電量を増やす効果もあるのではないかとみている。

 導入した自律走行型は、小型ということもあって、ぬかるみの上を走るのは強くない。そこで、ぬかるみやすい場所には、新たに砕石を敷き詰めた。

 雨天の日には、遠隔制御で走行を止めることもある。遠隔制御で走行中に止めた場合にも、自律走行して充電ステーションに戻る。

 万が一、溝などの深い凹部にはまって走行できなくなった場合でも、機体にGPS(全地球測位システム)を備えているので、スマートフォンで発電所内のどこに止まっているのかひと目でわかり、探しに行く労力は少なくてすむ。

 雑草は冬になると枯れる。そこでおもに1月~2月の間は、ロボット除草機は発電所から引き上げてメンテナンスする。3月に再び発電所に戻す。

 3月は、24時間稼働ではなく、1日のうち10時~16時に走行させている。これは、雑草の伸び具合に合わせて設定している。これまでの年では、5月以降になると、24時間稼働させてきた。

 ハスクバーナ・ゼノアによると、地表の状態や走行区域の水平方向の形状などにもよるが、一般的な条件では、車体のリチウムイオン蓄電池の満充電時には約2時間、連続走行でき、その間に1時間に約135m2の範囲で草や芝を刈れる。充電ステーションでは、約1時間で満充電となる(図3)。

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図3●充電ステーション
(出所:日経BP)

 約2時間、稼働して刈り、その後、1時間かけて充電するというサイクルを繰り返すと、一般的な条件であれば、1日1台当たり約3200m2を除草できる。今回のメガソーラーのように、それ以上となる約4000m2を除草することも条件次第で可能となる。

 自律走行しながら刈る範囲は、充電ステーションを発着点として、走行時のガイドとなるワイヤーを地表に張って囲んで設定する。このワイヤーで囲まれた区域の中を、ランダムに走行しながら草や芝を刈っていく(関連コラム図4)。

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図4●ロボット除草機の概要
ワイヤーで設定した区域を自律的に走りながら刈る。充電量が減ると充電ステーションに戻ってくる(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 地表に張ったワイヤーを通じて、信号を発している。ロボット除草機は、この信号を受信して走行区域の境界を把握している。

 今回のメガソーラーでは、この走行時のガイドとなるワイヤーは地中に埋設している場所が多い。これは、ワイヤーの損傷を防ぐためという。ロボット除草機を使えない場所では、乗用型草刈機を使っており、その回転刃による損傷の恐れや、風雨にさらされることによる劣化、また、侵入してきた小動物による損傷の恐れを減らすためという。

 ロボット除草機を使っていない場所の一つは、接続箱からPCSへの送電経路である(図5)。このメガソーラーでは、接続箱からPCSに送電する電線を地中に埋設している。

図5●電線を地中埋設している場所は走行範囲から外した(中央の枯草が伸びている場所)
(出所:日経BP)
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 当初はこの場所も走行範囲としていたが、この上を走行している時に、機体がワイヤーからの信号を適切に受信できず、走行を停止することが続いた。そこで、ワイヤーの敷設を変えて走行範囲から外した。

 接続箱からPCSに送電する電線には、発電量が多い時などに、走行用の信号の送受信を妨げる何らかの現象が起きることがあるようだ。こうした現象は、太陽光発電所に特有の事情といえる。

 このように、ロボット除草機を使うのに向かない場所があれば、ワイヤーの敷設の工夫によって避けられる。また、柵や杭などを設置しておけば、その前で停止して向きを変え、そこを避けて移動する。

 一方で、斜面でも問題なく走行して刈れている場所もある(動画4)。

動画4●ちょっとした斜面も登る

(出所:日経BP)

 草は、四輪の間に備えている回転刃で刈る。回転刃は、乗用型草刈機が備える鎌のような刃ではなく、かみそりの刃のような薄いもので、これを3枚備えている(図6)。

図6●回転刃は、薄い3枚の刃で構成
(出所:ハスクバーナ・ゼノア)
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 この刃は、年に2度ほど交換している。冬のメンテナンス時と、シーズン中にも一度替えている。

 導入したロボット除草機は、後輪駆動のため、前輪にはそれほど負担がかからず、前輪のゴムの摩耗は比較的少ないのではないかと予想していた。だが、意外にも前輪のゴムの方が、摩耗の度合いが大きく、車輪の本体まで損傷させないように、こまめに状態を確認してゴム部を交換するようにしているという。

 これも、太陽光発電所に特有の使用法によるものといえそうだ。既存の利用場所はほぼ芝の上なのに対して、今回の発電所では走行性の向上を目的に砂利で地表を覆った場所もある。芝と砂利では、前輪のゴムにかかる負担が異なるのではないかとみている。

●発電所の概要
所在地福島県
発電事業者林サッシ工業
太陽光パネル出力3カ所合計6.7MW
連系出力3カ所合計約5.6MW
太陽光パネル三菱電機製
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
太陽光パネルの設置角20度
売電先東北電力