三重・南伊勢町のメガソーラー、固い岩盤に苦慮、8段の大面積アレイを採用できたワケ

休耕田や山林を地主が造成して活用

2020/04/28 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 三重県度会郡南伊勢町神津佐(こんさ)に、2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

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図1●南伊勢町神津佐の2カ所のメガソーラー、上が第1、下が第2
(出所:三交不動産)
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 太陽光パネルの出力が約2MW、パワーコンディショナー(PCS)の定格出力が1.5MWの「南伊勢神津佐メガソーラー第1発電所」と、パネル出力・約14.7MW、PCS出力・11.25MWの「南伊勢神津佐メガソーラー第2発電所」である。

 第1発電所は2016年9月の稼働以来、約3年半が経ち、第2発電所は2020年3月に稼働したばかりとなっている。いずれも三重交通グループホールディングスの事業会社である三交不動産(津市)が開発・運営している。

 同社は、地元の三重県内に集中して多くの太陽光発電所を開発・運営している(関連コラム:アレイ間「1m」、セグウェイと乗用型草刈機が活躍、松阪の特高メガソーラー)。稼働済みの太陽光発電所は、28カ所・合計出力約104MWに達している。年間発電量の合計は、一般家庭約3万5200世帯分の消費電力に相当する、約1億2678万kWhを見込んでいる。

 このほか、建設中の太陽光発電所が5カ所・合計出力約10.9MWとなる。

 今後は、稼働済み・未稼働にかかわらず、他社が開発を手掛けた太陽光発電プロジェクトでも、自社の基準に合う案件があれば、買い取って事業化することも選択肢という。

 また、最近では農業事業に参入した。太陽光発電と同様に、三重県内で日射量の豊富な土地を活用して取り組む。植物工場を活用する。

 まず、津市芸濃町のおもに休耕地であった農地を活用し、ブランド野菜の一つとして人気のある「高糖度ミニトマト」を栽培する(図2)。面積が約1万3000m2の農地に農業用ハウス2棟(栽培面積は合計4320m2)を建てて栽培する。3月に着工しており、7月に竣工、8月に苗を植える予定となっている。

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図2●ミニトマトや栽培のイメージ
(出所:三交不動産)
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 建設中の農業用ハウスは、室内の温度や湿度をはじめ、農作物の育成に必要な環境を適切に制御する。日射については屋外から入射する太陽光を利用する。

 三重交通グループにとって、農業は初めて参入する事業となるため、農業ベンチャーであるOSMIC(東京都中央区)と提携し、同社が取り組んでいる「高糖度ミニトマト」のノウハウを導入する。収穫したミニトマトは、同社のルートを通じて販売する。

休耕田や山林を活用

 南伊勢町神津佐の2カ所のメガソーラーは、近隣にはあるが、それぞれ別々に開発した案件となっている。活用した土地は、第1発電所は県道沿いの休耕田、第2発電所は山林が大半で一部が休耕田と異なる。

 第1発電所の用地となった休耕田は、地主が水田だった凹んだ部分に新たに土を盛って、田んぼ時代に周囲に盛り上がった畦畔や隣接する県道と同じ高さにした上で、メガソーラーの用地として活用した(図3)。

図3●第1発電所は、地主が休耕田の凹部を埋めて全体を県道と同じ高さに
(出所:三交不動産)
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 三交不動産の太陽光発電所は、施工や設備については、ほぼ一貫して同じ企業と取り組み、関係を深めてきている。EPC(設計・調達・施工)サービスは千代田化工建設が担い、CIS化合物型の太陽光パネルはソーラーフロンティア製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し続けている。

 同社によると、メガソーラーの設計を検討する際には、EPCや発電設備メーカーと関係を深めていることが奏功しているとしている。

 第1発電所の場合は、EPCサービスを、千代田化工建設の100%子会社である、千代田システムテクノロジーズ(横浜市)が担当した。

 太陽光パネルはソーラーフロンティア製(出力170W/枚)を1万2096枚並べ、PCSはTMEIC製の定格出力750kW機を2台設置した(図4)。

図4●TMEIC製のPCS
(出所:三交不動産)
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 第2発電所は、山林や休耕田だった土地を、地主が造成した上でメガソーラーの用地として活用した。

 このあたりの地質は固い岩盤が多く、近くに砕石場もある。第2発電所の用地もやはり、固い岩盤になっていた(図5)。

図5●第2発電所の調整池の堤体にも固い岩盤が見える
(出所:三交不動産)
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 この岩盤によって、地主による造成工事の時から苦労が絶えなかった。発電設備の設置時も、杭基礎は通常のようにそのまま地面に打ち込むことができず、打ち込む予定の場所は先に掘削しておく必要があった。調整池の施工や電線の地中埋設でも同じような苦労があった。

 また、北から南に下っていく土地だった(図6)。これは利点として生かした。地主による造成では、10度以上の勾配をつけて北に向かって登っていく土地になった。

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図6●南から北に上っていく土地は、影に利点
(出所:三交不動産)
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 北に向かって登っていく土地が、太陽光発電所にとって利点になるのは、前列のアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)による影の影響が、平坦な土地に比べて短い範囲にとどまることによる。登っている分だけ地面に影の当たる距離が近くなる。

 これによって、平坦な土地に比べて、アレイの前後の間隔を短くしても影がかからない配置を実現できる。

 三交不動産のメガソーラーでは基本的に、アレイの前後の離隔距離を約1mと、元々短めにしている。発電量の利点だけを考えれば、さらに短い間隔に詰める選択肢もあるものの、保守のための通行や作業性を考慮して約1mにとどめている。

 第2発電所でも、この間隔を維持した。その上で、影が短くなる利点を生かす試みとして、アレイの構成を変えた(図7)。

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図7●前後の間隔を1mに維持しつつ、段数を8段に増した
上が8段の第2発電所、下は4段の第1発電所(出所:三交不動産)
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 これまでのメガソーラーでは、4段8列のアレイ構成としていた。これはCIS型の太陽光パネルの直列と並列の回路構成と一致している。8枚の直列と4つの並列で回路を構成している。

 第2発電所では、段数を4段増して8段という大面積のアレイ構成に変えた。こうするとアレイ後方の高さが高くなるので、通常は後ろのアレイへの影が長くなるが、今回の土地は後ろに向けて登っていくために、影がそれほど長くならない。

 アレイの離隔距離を維持したまま段数を増やすことによる利点は、アレイ数が減ってアレイ間の通路の数が減ることにある。通路が減ることで、土地面積に占める太陽光パネルの占める比率が増し、土地をより有効活用できることになる。

 ただし、目視点検時には後ろの段の太陽光パネルは、これまでの4段よりも見えにくくなる課題もある。この点に留意した点検を実施する。

 第2発電所ではまた、PCSは中国の華為技術(ファーウェイ)製を採用した(図8)。いわゆる分散型の構成となり、定格出力62.5kW機を180台導入した。

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図8●180台の分散型PCSは束ねて制御できる仕組みに
(出所:三交不動産)
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 これだけの台数のPCSを適切かつ効率的に制御する手法として、PCSを24台単位で束ねた集電箱のような役割の設備を導入した。ここでPCSを1台ごと、あるいは24台までを一律にオン・オフ制御できる仕組みとしている。遠隔監視・制御システムでも、同じ操作を可能としている。

●発電所の概要
発電所名南伊勢神津佐メガソーラー第1発電所
所在地三重県度会郡南伊勢町神津佐
敷地面積約2.0ha
発電事業者三交不動産
太陽光パネル出力2.05632MW
パワーコンディショナー(PCS)定格出力1.5MW
年間予想発電量約252万kWh
(一般家庭約700世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス千代田システムテクノロジーズ
O&M(運用・保守)千代田システムテクノロジーズ
太陽光パネルソーラーフロンティア製
(出力170W/枚、1万2096枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力750kW機、2台)
売電開始2016年9月26日
売電先中部電力
●発電所の概要
発電所名南伊勢神津佐メガソーラー第2発電所
所在地三重県度会郡南伊勢町神津佐
敷地面積約13ha
発電事業者三交不動産
太陽光パネル出力14.7168MW
PCS定格出力11.25MW
年間予想発電量約1804万8000kWh
(一般家庭約5000世帯の消費電力に相当)
EPCサービス千代田化工建設
O&M千代田システムテクノロジーズ
太陽光パネルソーラーフロンティア製
(出力180W/枚、8万1760枚)
PCS華為技術(ファーウェイ)製
(出力62.5kW機、180台)
売電開始2020年3月31日
売電先中部電力