長崎で地元企業が試行錯誤、30MW空港メガソーラーの4年

ドローンは朝6時まで、出力抑制は九電による制御が有利?

2020/06/02 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 長崎空港は、世界初の海上空港として知られる。長崎県の中央部にある大村湾内に位置する。九州本土の大村側の海岸から約1km先にある箕島(みしま)に開発され、1975年に開業した。

 箕島の丘を切り崩し、その土砂で大村側の海を埋め立て、そこに滑走路や空港ビルなどの施設が建設された。

 この長崎空港の隣接地に、連系出力約24MW、太陽光パネル出力約30MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「SOL de 大村 箕島」がある(図1)。2016年8月に売電を開始し、約3年10カ月が経過している。

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図1●長崎空港の隣に立地
(出所:上はチョープロ、そのほかは日経BP)

 長崎県内で稼働済みの太陽光発電所として最大規模となっている。経済産業省が認定済みの未稼働案件を合わせても、県内でこれ以上の規模は、宇久島の連系出力400MW、太陽光パネル出力約480MWのみである(関連ニュース:宇久島の480MW、営農型は「1~2割」に、パワコンはTMEICなど検討)。

 また、稼働時には「飛行場に隣接する太陽光発電所ではアジア最大級」としていた。

 稼働後の発電量は月によって差はあるものの、年間を通してみると安定的といい、どの年も計画時の予想である約3700万kWhに対して、5~10%ほど上振れしている。

 液化石油(LP)ガスなどを手掛けるチョープロ(長崎県長与町)と、太陽光パネルメーカーのソーラーフロンティア(東京都港区)が共同で開発・運営している。発電事業者は、両社が折半出資して設立した特定目的会社(SPC)、長崎ソーラーエナジー(長与町)となる。

 チョープロとソーラーフロンティアは太陽光発電事業で密接に連携してきた。

 チョープロは、地元の長崎を中心に多くの太陽光発電所を開発・運営している、地域に根ざした太陽光発電事業者の1社である。県内初のメガクラスとなった太陽光発電所も同社の案件で、これまで17カ所・合計出力約53MWの発電所が稼働している(関連コラム:自衛隊の演習場と隣り合う、佐賀・嬉野のメガソーラー)。

 当初から、すべての発電所でソーラーフロンティア製の太陽光パネルを採用し続けてきた。チョープロのLPガスなどの仕入れ先だった昭和シェル石油(現・出光興産)が、ソーラーフロンティアの親会社という縁があった。

 チョープロがはじめて太陽光発電所の開発を手掛けた時、技術面はソーラーフロンティアが支えた。ソーラーフロンティアが発電所の基本設計や仕様を立案し、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用、EPCサービスの九電工がこの案を引き継いで施工した。

 こうした経緯から、チョープロはその後もソーラーフロンティア、TMEIC、九電工との連携を基本に太陽光発電所を次々と地元で開発していった(図2)。

図2●長崎空港隣の発電所におけるソーラーフロンティア製の太陽光パネルとTMEIC製のPCS
(出所:日経BP)
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当初は開発を見送るつもりだった

 長崎空港の隣接地のメガソーラーでは、チョープロだけで開発するには規模が大きいことから、ソーラーフロンティアに共同での事業化を打診して実現した。

 この土地は、長崎県が公開した「県内の地方自治体などが所有する太陽光発電に向く貸出可能な土地」のリストに含まれていた。空港の隣で航空関連による活用を期待して整備したものの、有効に活用されていなかった。

 チョープロは、この土地でのメガソーラーの開発を見送るつもりだった。同社が手がけるには障壁が高かったからである。地方の中堅企業にとってあまりにも規模の大きなプロジェクトとなる上、連系先となる特別高圧送電線は島内になかった。

 一方で、土地を所有する長崎県や長崎県土地開発公社は、地元企業による活用を望んでいた。最終的に、地元企業が主体となる太陽光発電事業による地域活性化の意義を重視し、チョープロが事業化に踏み切った。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は36円/kWh(税抜き)で、年間発電量は約3700万kWh、20年間の売電総額は約260億円を見込んでいる。これに対して、開発費は約100億円、賃料は年間約1億6000万円で、20年間の総額は約32億円と、賃料は比較的高めの設定となっている。

 チョープロが地元関連の交渉、ソーラーフロンティアが発電設備や資金調達などを担った。EPCサービスは、今回は千代田化工建設が担当した。千代化もEPCサービスの実績が豊富で、ソーラーフロンティア製の太陽光パネルを積極的に採用していた。

 開発費の約100億円のうち約7割を、プロジェクトファイナンスを組成して調達した。みずほ銀行が幹事行を務め、九州を中心とする複数の金融機関が融資に参加した。

 連系点までの送電は、海底ケーブルを敷設することで事業性と技術面の両方を満たした。開発費の約100億円のうち、海底ケーブルの敷設に約12億円を費やした。

 九州電力の大村変電所に接続するための海底ケーブルの長さは約11km(図3)。周囲の漁業や自衛隊のヘリコプターの離発着に影響しないルートで敷設することが条件となった。それを満たしつつ、施工が容易で、最短距離で設定することがポイントとなった。

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図3●海底ケーブルを約11km敷設
現地の画像(中、下)の水中の中央付近で、上下方向に細長く盛り上がるように見えるのが海底ケーブル(出所:日経BP)
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 関連先と折衝して敷設の合意を得て海底の調査を開始すると、想定したルートでは、送電の信頼性に欠かせないケーブルの保護に有効な、海底への埋設が難しいことがわかり、適切な手法で敷設できるルートの選定に時間を要した(2016年8月の掲載記事)。

滑走路付近は高さ制限、てかてか光らないパネルも奏功

 太陽光パネルには、航空機の操縦士や管制官の視認性を阻害しないことが求められた(図4)。パネル表面からの反射光が問題だった。ここでは、薄膜の製品であることが奏功した。

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図4●薄膜系であることが視認性の面で奏功した
(出所:日経BP)

 ソーラーフロンティア製のCIS化合物型など、薄膜のパネルは表面が黒っぽい。結晶シリコン型のように表面がてかてかと光っておらず、通常の製品で視認性に影響しなかった。この特性によって航空機の運航に支障がないと判断され、標準品を採用できた。

 太陽光パネルの例以外にも、開発や運営において、空港の隣という特殊な環境への対応で工夫している面がいくつかある。

滑走路から一定距離の場所では、重機も制限

 例えば、滑走路から一定の距離の場所に、航空機が離着陸する時間帯には一定以上の高さのものを持ち込めない。重量物を運ぶクレーン、杭基礎を打ち込む重機はこの規制に抵触する。こうした条件に配慮して施工する必要があった。区域ごとの基礎の違いに、この規制への対応が表れている。

 事業面では、すべて杭基礎とすることが望ましかった(図5)。しかし杭基礎は高さのある重機で打ち込む必要がある。これが規制に抵触する。対応は2つに分かれた。1つは、飛行機の離発着のない夜間に作業することだった。滑走路により近い場所はこれも難しく、コンクリートの置き基礎を採用した。

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図5●杭基礎の区域
(出所:日経BP)
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 連系用の昇圧変圧器(キュービクル)から、海底に沈めるまでの電線も地中に埋設できなかった。金属のラックに収納して地上に敷設した。

 こうした高さ制限など空港特有の制約は、運営の効率化に有効なドローン(無人小型飛行体)の活用にも影響する。

 ドローンによる空撮について交渉すると、空港の業務がはじまる朝6時までに終えておくことを求められる。例えば、宣伝用の動画も、こうした一般的な発電所とは異なる条件が課された中で撮影された。

動画●プロモーション映像における空撮部分

(出所:チョープロ)

出力抑制と遠隔制御

 電気保安管理業務は、チョープロが担っている。同社の第二種の資格を持つ電気主任技術者が専任で従事している。

 定期点検は、規模が大きいため1人では難しい。そこで、専任の電気主任技術者の管理の下、九州電気保安協会に委託し、同保安協会が補佐して点検している。

 定期点検は、1日で一気に終えている。数日をかけるよりも管理の効率が良いためとしている。

 日々の管理では、雑草に苦労している。雑草を刈り続けていくと、年を経るごとに強く濃くなっている印象があるという(図6)。しかし、除草剤を使うことはできない。漁業への配慮から、除草剤を使わないことを決めているためである。乗用型草刈機を2台持ち込み、数日間かけて敷地内をくまなく走って除草している。これを年に数回実施する。

図6●パネル設置区域外の様子から、雑草の強さがうかがえる
(出所:日経BP)
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 もう一つ、悩ましいのが出力抑制である。この発電所は、年間30日まで無補償での出力抑制が課される、いわゆる「30日ルール」の案件である。

 チョープロが開発した太陽光発電所は、基本的に遠隔制御を導入している。「30日ルール」の発電所は、出力抑制を実施する日の前日の午後に九州電力から電話と電子メールで連絡が入り、翌日の8時~16時の発電停止を求められる。チョープロは、その指示に従って遠隔制御で翌日の8時~16時の間、すべてのPCSの稼働を止める。この遠隔制御は、タイマー設定で実施している。

 ただし、長崎空港隣のメガソーラーについては、遠隔制御システムは導入しつつも、タイマー設定には対応していない。追加で数百万円単位の費用を要し、費用対効果に疑問があるためとしている。

 一方、「無制限・無補償ルール」の出力抑制が接続条件となっている太陽光発電所では、九州電力が直接、遠隔制御によって出力抑制している。

 こうした発電所では、発電事業者に連絡はなく、チョープロが運営している同ルールの発電所でも、遠隔監視によって出力抑制の実施を知ることになる。そして、現状では出力抑制の時間が短く、電力需要のピーク時とされる11時ころ~15時ころのうちの約3時間にとどまっている。

 「30日ルール」のメガソーラーでも、同じように九電が遠隔制御している場合には、同じように日に3時間程度の出力抑制に収まっていることが知られている。そこで、長崎空港隣接地のメガソーラーでも、九電による遠隔制御が可能なシステムに移行するかどうか検討している。

●発電所の概要
発電所名SOL de 大村 箕島
所在地長崎県大村市箕島(長崎空港隣接地)
敷地面積約34万m2
土地所有者長崎県(約6割)、長崎県土地開発公社(約4割)
太陽光パネル出力約29.68416MW
(杭基礎分:25.70832MW、コンクリート基礎分:3.97584MW)
連系出力24.055MW
年間予想発電量約3700万kWh
(一般家庭約7500世帯の消費電力に相当)
海底ケーブル約11km
(九州電力の大村変電所に接続)
発電事業者長崎ソーラーエナジー合同会社(長崎県西彼杵郡長与町)
(チョープロとソーラーフロンティアの折半出資による特定目的会社)
EPC(設計・調達・施工)サービス千代田化工建設
   土木 西松建設
   電気 きんでん、三宝電機
   海底ケーブル 住友電気工業
   特別高圧変電設備 三菱電機
太陽光パネルソーラーフロンティア製
(出力165W/枚、約18万枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格容量750kW・直流入力電圧1000V対応機・17台、665kW機・17台)
総事業費約100億円
融資(プロジェクトファイナンス)幹事行:みずほ銀行
その他の融資行:親和銀行、十八銀行、佐賀銀行、長崎銀行、長崎三菱信用組合、鹿児島銀行、宮崎銀行、みずほ信託銀行
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価(税抜き) 36円/kWh
売電開始時期2016年8月
売電先九州電力