1つの池に2つの水上メガソーラー、高松市の「小田池」

11カ所の水上案件を事業化した太陽HD、アジア拠点の屋根上にも着手

2020/06/16 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 香川県高松市にあるため池「小田池」で2019年12月、太陽光パネルの出力約2.845MW、連系出力1.99MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「小田池水上太陽光発電所」(図1)が商業運転を開始した。

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図1●カモなどの水鳥の憩いや子育ての場ともなっている
小田池水上太陽光発電所(出所:日経BP)
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 ため池を活用し、太陽光パネルを水面に浮かべた水上設置型のメガソーラーで、発電事業者は、太陽ホールディングス(太陽HD)の子会社である太陽グリーンエナジー(埼玉県嵐山町)出資による特定目的会社(SPC)となる。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は21円/kWh(税抜き)で、四国電力に売電している。年間発電量は約402万kWhを見込んでいる。

 太陽グリーンエナジーにとって、11カ所目の太陽光発電所の稼働となった。すべて水上太陽光発電所である。11カ所の合計年間予想発電量は、約20GWhに達する。

 太陽HDは、プリント基板用の絶縁材であるソルダーレジストの大手、太陽インキ製造を中核とする。ソルダーレジストは、プリント基板上で導電部以外の場所を覆って絶縁する材料で、太陽インキ製造はこの材料の市場シェアで世界トップの企業である。

 太陽インキ製造は、米アップル向けの生産を「100%再生可能エネルギー」で賄うことを公約し、アップルが2018年4月に発表した(関連ニュース)。

 太陽インキ製造の直接の顧客は、プリント基板メーカーなどとなる。プリント基板は電子機器に組み込まれるので、アップルなどの電子機器メーカーはその先の顧客になる。

 プリント基板のサプライチェーンでは、プリント基板大手のイビデンが2017年の時点で、アップル向け生産の「再エネ100%」の達成を公約した(関連インタビュー)。アップルは、自社製品のサプライチェーン全体の脱炭素化を目指しており、調達部品のさらに上流の「再エネ100%」を進めたのが太陽インキ製造の公約となった。

 アップルが先導したこうした動きは、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、今後のグローバルビジネスや社会生活が変わることで、さらに加速する可能性が出てきている。

 感染症が拡大していく中、大規模な火力発電所などでは、燃料の輸出入や多人数による運営に関わるリスクが顕在化してきた。これに対して、太陽光発電所は燃料が不要で、運営管理の従事者も少ない。新型コロナウイルス対策として、相対的に望ましい環境を実現できる側面がある。

 さらに、コロナ禍で重要性が高まってきたのが、アップルが先導するICT(情報通信技術)関連機器である。リモートワークや会議に欠かせない。

 その製造を支える電子部品・材料分野では、より柔軟な生産体制が重要になる。電力もその1つとなる。例えば、納入製品やサービスの品質、信頼性、価格などが拮抗している場合に、再エネ電源が事業の継続性を現実的に左右し、受注に響く可能性を肌で感じる状況になりつつあるようだ。

 こうした状況を背景に、取引先にも再エネ活用を求めていく方針は、他の分野においても今後、世界的に広がっていくことが予想されている。

 太陽インキ製造によるアップル向け製品生産の「再エネ100%」は、グループで運営している太陽光発電所の発電量が、製品製造に必要な電力需要を上回ることで実現している。

 その後も水上型太陽光発電所が相次いで稼働した結果、他社向けを含めたグループのすべての国内の事業活動全体について、太陽光発電の規模が消費電力の「130%以上」相当を賄える規模に拡大したと発表している。この基準となる消費電力は、2018年度末時点の数値である。

 現在の国内の太陽HDには、その数値の算出時にはなかった新たな事業や事業所が加わっている。例えば、医療・医薬事業で2019年に新たに買収して加わった事業所がある(図2)。これによる消費電力が増えているが、まだ加わってから間もなく、1年間の数値を把握できていないことから現状では反映させていない。

図2●2019年10月に加わった太陽ファルマテックの高槻工場
(出所:太陽ホールディングス)
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 「小田池」など、新たに稼働して「130%以上」相当としている分の発電量は、こうした新たに加わった事業や事業所における消費電力分を相殺できる余力となっている。

 また、この「130%以上」相当には、国外における事業は含んでいない。今後は、海外でも太陽光発電の導入を増やしていく(図3)。

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図3●アジアの拠点にも太陽光発電を広げていく
下の画像は韓国法人の本社工場の屋根上の太陽光パネル(出所:太陽ホールディングス)

 海外では、韓国の現地子会社の本社工場内において、出力約300kWの太陽光発電設備を稼働させている。屋根上に太陽光パネルを並べ、2018年10月に発電を開始した。同じように、台湾の桃園にある工場でも、屋根上を活用した太陽光発電を開始する予定で、発電設備の設置工事が進んでいる。

 このほか、中国の蘇州にある工場では、いわゆる「屋根貸し」によって太陽光パネルが設置されている。

3つの水上太陽光が浮かぶ池も

 「小田池」は、高松市香南町池内字出宮原にある(図4)。

図4●小田池水上太陽光発電所
(出所:太陽ホールディングス)
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 この水上メガソーラーは、太陽グリーンエナジーの他の多くの案件と同じように、設備認定をはじめとする許認可を取得済みの水上太陽光発電プロジェクトを、開発事業者から買収して事業化した。

 EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスは、ウエストグループに委託した。太陽光パネルは中国ジンコソーラーホールディング製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、フロートはキョーラク製を採用した(図5)。

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図5●キョーラク製のフロートを採用
(出所:日経BP)
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 この組み合わせは、同じ高松市内の「御厩池」で先に稼働していた水上型太陽光発電所と共通している。

 太陽グリーンエナジーが他社の開発した案件を買い取って事業化する場合、EPCサービスを担った企業が開発に着手し、水上利用の取りまとめから、設備認定や連系協議など開発の骨子が固まった状態で購入した場合がほとんどという。

 高松市の2カ所を担当したウエストグループのほか、積水ハウスが7カ所を担当しており、購入元の企業の傾向がうかがえる(関連コラム)。

 「小田池」の水上型太陽光には、大きな特徴がある。同じ池の水面を、2つの水上型太陽光発電所が活用している点である。

 太陽グリーンエナジーによる連系出力1.99MWの「小田池水上太陽光発電所」と、他社による連系出力1.99MWの「小田池ソーラー発電所」の太陽光パネルが、同じ小田池の水面に、大きく距離をあけて浮かんでいる(図6)。

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図6●二つの発電所で水面を分け合う
上の画像の右側、中の画像の下側が太陽グリーンエナジーの発電所の設備。下の画像は、もう一方の他社の発電所の設備で、フロートは形状からフランスのシエル・テール・インターナショナル製とみられる(出所:日経BP)
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 もう1つの「小田池ソーラー発電所」は、開示されている情報や現地に設置されている設備の外観から、異なる時期に異なる企業によって開発された案件であることが伺える。太陽グリーンエナジーの「小田池水上太陽光発電所」とは、EPCやO&Mサービス企業が異なり、フロートやPCSも異なるメーカーの製品が設置されている。

 広いため池ならではの活用法といえる。「小田池」の面積は約12万1676m2あり、このうち太陽グリーンエナジーの「小田池水上太陽光発電所」の太陽光パネルを浮かべた面積は約3万2200m2となっている。

 高松市内の池では、このように1つの池の水面を、2つの水上型太陽光が分け合うような形で開発された例がいくつかある。

 中には、1つの池の水面に、3つの水上型太陽光発電所の太陽光パネルが浮かんでいる例もある。

 太陽グリーンエナジーの「小田池水上太陽光発電所」では、ジンコソーラー製の多結晶シリコン型、出力335W/枚の太陽光パネルを8493枚浮かべている。接続箱も水上のフロート架台に設置している。

 PCSや連系設備は、池の堤体を水面側に延長するように工夫して設置されている(図7)。PCSはTMEIC製の定格出力1000kW機を2台導入した。

図7●堤体を工夫してPCSと連系設備を置いた
(出所:日経BP)
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●発電所の概要
発電所名小田池水上太陽光発電所
所在地香川県高松市香南町池内字出宮原1205-1(小田池)
発電事業者太陽グリーンエナジー(埼玉県嵐山町)の特定目的会社
池の面積約12万1676m2
太陽光パネルを浮かべた面積約3万2200m2
太陽光パネル出力約2.8451MW
連系出力1.99MW
年間予想発電量約402万kWh
EPC(設計・調達・施工)ウエストグループ
O&M(運用・保守)ウエストグループ
太陽光パネルジンコソーラーホールディング製
(多結晶シリコン型、出力335W/枚、8493枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力1000kW機、2台)
フロートキョーラク製
稼働開始時期2019年12月27日
固定価格買取制度(FIT)上の売電単価(税抜き)21円/kWh
売電先四国電力