雑草を「クルマで押し潰す」手法も、対策を模索する北海道浦幌町のメガソーラー

年ごとに対策を変え、今年は全面的に刈り込む

2020/06/30 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 北海道十勝郡浦幌町に、太陽光パネルの出力約1.95MW、パワーコンディショナー(PCS)の出力1.75MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「PVNext EBH 浦幌第一発電所」がある(図1)。

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図1●PVNext EBH浦幌第一発電所
(出所:エンバイオ・ホールディングス)

 2017年2月に売電を開始した。これまでの運用で分かってきたのは、まず積雪期の発電量が多いことである。十勝地方は比較的、降雪の少ない地域であること、さらに、積雪期に晴天が多く空気が澄んでいる日が多いために、ほかの季節に比べて太陽光パネルへの入射量がさらに多くなるためと推測している(前回のメガソーラー探訪)。

 一方で、予想していた以上に雑草が多く、その対策を模索し続けている。雑草の伸びる状況に合わせて、毎年異なる対策を実施してきた。これから迎える2020年夏は、4回目の除草シーズンとなる。今回は、主にこの雑草対策を紹介する。

 浦幌町のメガソーラーを運営しているのは、土壌汚染対策を手がけるエンバイオ・ホールディングス(以下、エンバイオHD)である。事業主体は特定目的会社(SPC)のアルタイル・ソーラーとなる。

 エンバイオHDは現在、国内において30カ所・合計出力約36.239MWの太陽光発電所を運営している(図2、関連コラム:茨城県守谷市の物流施設の屋根上)。

図2●各地で太陽光発電所を運営
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 このほか、中東でも開発をはじめている。ヨルダンにおいて、井戸の汲み上げに太陽光発電を活用する事業を立ち上げた(関連ニュース)。トルコでもバイオガス発電所の開発に着手している。

 国内で運営している太陽光発電所は、自社単独での開発のほか、提携先企業と共同開発した発電所、他の企業が開発して稼働した後に買い取った、いわゆるセカンダリー市場で入手した案件もある。

 浦幌町のメガソーラーは、ネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)と合弁でSPCを設立して事業化した。稼働後にネクストエナジーの保有分を買い取り、エンバイオHDの100%子会社となった。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、札幌に本拠を置く双葉工業社が担当した。

 太陽光パネルは中国UPSolar製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を導入した。

雑草が高さ1.5mのパネル低部を超える

 浦幌町のメガソーラーは、比較的平坦な土地に立地している(図3)。元の用途が砂利採取地だったことが大きい。

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図3●平地で当初は雑草が少なかった
(出所:エンバイオ・ホールディングス)

 北海道の太陽光発電所は、相対的に念入りな積雪対策を採用することが多い。太陽光パネルを架台に固定する位置を地上から高くし、パネルの設置角も大きくする。これによって、太陽光パネルから雪が滑り落ちやすくするとともに、落ちた雪が山になってもパネルに届きにくくする。雪山がパネルに接してしまうと、それ以上、雪が落ちなくなる。

 こうした積雪対策が、他の地域に比べて雑草への対応を楽にしている。太陽光パネルが高い位置に固定されているので、雑草もそれ以上に高く伸びない限り、発電ロスにはならない。とはいっても、点検作業や安全性に支障が出る問題は他の地域と変わらない。

 浦幌町のメガソーラーでは、太陽光パネル最低部と地面からの設置高は1.5m、設置角は40度となっている。

 雑草は高さが1.5mを超えない限り、太陽光パネルに影がかかることはない。そのためエンバイオHDも当初、雑草の問題には他の発電所ほど力点を置かなかった。

 大規模な太陽光発電所は、固定価格買取制度(FIT)がはじまるまで国内にはほとんどなく、雑草をはじめとする運営上の課題について、試行錯誤を続けてきた。発電事業者やEPC、O&Mサービス企業にとって、運営をはじめて初めて認識する課題が多かった。

 浦幌町のメガソーラーでも、稼働初年の2017年夏は、雑草はほとんど伸びなかった。これは、同年2月の売電開始から間がなかったからと思われる。

 施工時には、他の一般的な太陽光発電所と同じように、地表に手を入れて雑草を除去して整地し、一時的に雑草がなくなっていたためだった。

 その後は毎年、太陽光パネル低部より高く伸びた。そこで、影がかかりそうな部分を中心に刈ってきた。このメガソーラーでは年に1回刈れば十分という。

 雑草は冬になれば枯れる。浦幌町の発電所の場合、4月末ころまで地表は雪に覆われている。5月ころに雪が溶け、それから雑草が伸び始める。これを夏に1度刈ればよい。

 同社が運営している他の地域の太陽光発電所では、年に1回の除草では済まないことが多い。例えば、熊本県にある発電所では雑草の伸びが速く、年に3回は除草が必要となっている。

 長野県伊那市で運営している太陽光発電所でも、年に3回刈っている。ただし、これは異なる事情による。太陽光発電所の運営としては、ここまでの回数は必要がない。農地に囲まれている地域にあり、周辺への配慮から、周囲の農地が草刈りしたタイミングで、発電所内も刈ってある状態にして欲しいという地主の意向による(関連記事)。

2年目の夏、クルマで雑草を押し潰すと…

 2年目となる2018年の夏、雑草の状況は、敷地内の場所ごとに大きく変わった(図4)。

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図4●2年目には雑草の繁茂で濃淡
(出所:エンバイオ・ホールディングス)

 一部では、地表にほとんど雑草が生えず、土が露出している。このような場所は、そのままで良い。

 一方で、雑草がぼうぼうに茂り、野山のようになっている場所もある。太陽光パネル低部を超える高さまで伸びてくる。ここは刈る必要がある。

 同社が自社で雑草を刈る場合、刈払機を使っている。しかし、草が繁茂した状況で、しかも、アレイ(太陽光パネルを架台に固定している単位)の前後間隔が約5mと広いことから、敷地内の一部とはいえ作業時の身体的な負担が大きい。5mの離隔距離は、背が高く角度も大きい北海道など積雪地の太陽光発電所では一般的である。

 そこで、他の手法を試すことにした。その1つが乗用型草刈機の活用だった。作業効率が高く、人より背丈が高い雑草を刈りこめる機種もある。

 しかし、すぐに懸念が出てきた。敷地内はほぼ平坦ではあるものの、大きく窪んでいる場所もある。雑草が繁茂している場所には、この窪みを含む場所が多かった。

 乗用型草刈機で一定以上の凹凸のある窪みを走ると、転倒の恐れがある。雑草が繁茂している場所にある窪みは、このリスクが大きいと判断し、採用を断念した。

 そこで試したのが、自動車を使った手法だった(図5)。雑草が野山のように繁茂している場所を自動車で走る。

図5●自動車で押し倒し、押し潰そうと考えた
(出所:エンバイオ・ホールディングス)
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 最初の走行で、人の背丈近くまで伸びている雑草を押し倒す。押し倒した後には、その上を繰り返して走り込む。

 刈ることに比べると、対策としては少し緩いように見えるかもしれない。しかし、年1回の除草で十分な環境であること、点検やその他のO&Mの作業で定期的に敷地内をクルマで走り回る保守体制を採っていることから、うまくいく可能性があると考えた。

 実際に、野山で野生の動物が繰り返し通ることで、雑草の伸びを抑えてできる獣道(けものみち)のように「雑草を踏みつけて」太陽光発電所の雑草の伸びを適切に管理する手法がある(関連コラム:ロボットが「草を踏んで」抑制)。

 一般的な乗用車を使い、車体前方のボンネットにシートを覆って保護した。ボンネットで雑草を押し倒すので、雑草によって傷がつかないようにした。

 この方法は、効果的だった場所とうまくいかなかった場所に分かれた。最もうまくいかなかった場所は、やはり窪みが大きい場所だった。窪みが大きいと、水がたまっていることも多く、タイヤがぬかるみにはまって苦戦した(図6)。

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図6●ぬかるみに苦戦
(出所:エンバイオ・ホールディングス)

 この手法は断念せざるを得なかったが、対処的な手法を講じ、この年に必要だった除草を終えた。

3年前の夏、委託した外部企業が音を上げる

 3回目の夏を迎えた2019年は、外部の企業に委託することにした。エンバイオHDと取引のあった北海道の企業に委託した。

 雑草の状況は敷地内で濃淡があり、さらに予算に限りがある中での依頼のため、条件を明確にして依頼した。

 費用は「20万円×3日間」で、最優先する範囲を「太陽光パネル低部の前と下」と指定した。そのほかは、委託先の企業の判断に任せた(図7)。

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図7●外部に委託することにした
(出所:エンバイオ・ホールディングス)

 この除草では、エンバイオHDにとって、目的を達することができた。しかし、委託された企業は、作業の負担が重いと音を上げた。この企業は、刈払機で作業していた。

4年目の夏、コロナ禍で計画を変える

 4回目を迎える2020年夏、エンバイオHDは初心を徹底するような除草作業を計画していた。社内で作業し、しかも刈払機を使う予定だった。

 同社では、太陽光発電所の運営に関して、自社でも可能な作業については、まず自らで手足を動かして作業することにしている。これによって作業負担や肝となる要素を含めた実態を体感できる。その後、外注に切り替える場合にも、費用対効果や留意点を身体で知っているかどうかは、運営管理上、大きいことから重視している。

 そこで、新入社員の研修の機会も生かすことにした。同社に入社する3人の新入社員の研修に、運営している太陽光発電所の訪問が組み込まれる予定だった。

 太陽光発電所を運営している企業では、このように新入社員研修の一環に発電所の訪問を組み込む企業が多い。

 この訪問先を浦幌町の発電所とし、草刈りも体験してもらう予定だった。

 しかし、新型コロナウイルスの感染拡大対策が優先される状況となり、新入社員研修の内容も一変した。浦幌町のメガソーラーへの訪問と除草作業の体験は見送られた。今後の感染症の状況次第となるが、来年の2021年は実施する可能性がある。

 研修としてのメガソーラー訪問は叶わなかった。それと一石二鳥で計画していた除草計画も白紙に戻った。

 そこで、2020年夏の除草は、O&Mを担当しているネクストエナジーに委託することを決めた。7月に敷地内をくまなく刈るという依頼で、費用もそれなりに要する。

 エンバイオHDでは、この徹底的な除草によって、翌年の2021年は、大規模な除草は不要になる可能性もあると期待している。

●発電所の概要
発電所名PVNext EBH浦幌第一発電所
所在地北海道十勝郡浦幌町
発電事業者アルタイル・ソーラー合同会社
(エンバイオ・ホールディングスが100%所有するSPC)
敷地面積4万7509.61m2
太陽光パネル出力約1.95104MW
パワーコンディショナー(PCS)出力1.750MW
年間予想発電量約240万7000kWh
(一般家庭約550世帯の消費電力に相当)
EPC(設計・調達・施工)サービス双葉工業社(札幌市)
O&M(運用・保守)サービスネクストエナジー・アンド・リソース(長野県駒ヶ根市)
太陽光パネルUPSolar製
(多結晶シリコン型、出力260W/枚・7504枚)
PCS東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・3台、出力250kW機・1台)
着工2016年5月
売電開始2017年2月28日
売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先北海道電力