養鶏地帯に立地する垂水市のメガソーラー、「鶏に配慮も、恩恵も受ける」

調整池には鳥インフル対策、アクセス道は災害時に早期復旧

2020/09/15 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 鹿児島県南部、錦江湾の東にある大隅半島に「高峠」と呼ばれる山地がある。垂水市(たるみずし)に立地する。

 この峠の山腹に、太陽光パネルの出力約9.65MW、連系出力8.1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「垂水高峠太陽光発電所」がある(図1)。

図1●太陽光パネルの出力約9.65MW、連系出力8.1MWの垂水高峠太陽光発電所
(出所:BCPGジャパン)
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 発電所としては1カ所だが、7カ所の土地にわかれている。合計で約13万m2となっており、発電設備はそれぞれの土地に分散して配置されている。いずれも垂水市が所有している土地で、峠の地形を生かした標高550mにある「高峠つつじヶ丘公園」の近隣にある。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく売電を開始したのは2015年8月31日、FITに基づく売電単価は40円/kWhで、丸5年が経過している。

 このメガソーラーを開発・運営しているのは、タイ系のビーシーピージージャパン(BCPGジャパン:東京都港区)である。

 同社は、タイの石油大手Bangchak Petroleumグループで再生可能エネルギー開発を手掛けるBCPGの日本法人。同社は、元は米SunEdisonの日本法人で、国内で発電プロジェクトを開発していた。SunEdisonの経営破綻を機に2016年2月にBCPGが買収し、稼働中・開発中の案件を引き継いだ。

 同社にとって、初めて稼働した特別高圧送電線に連系するメガソーラーだった。

 EPC(設計・調達・施工)サービスは、JFEプラントエンジ(東京都台東区)が担当した。O&M(運用・保守)は、自社グループのビーシーピージーエンジニアリング(BCPGエンジニアリング:東京都港区)が担っている。

 太陽光パネルは中国のChint Solar(Astronergy)製を採用した。合計で3万7656枚と数量が多いこともあって、単一の製品ではなく、出力が異なる複数種の製品にわかれた。出力が低い順から、250W/枚が456枚、255W/枚が2万5512枚、260W/枚が1万1688枚となっている。

 パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。こちらは定格出力750kW・直流入力電圧1000V機「PVL-L0750E」を12台設置した。

 連系出力は8.1MWなので、12台の定格出力750kW機をそのままフル出力で運用すると、9MWとなって連系出力を超えてしまう。このため一部の出力を絞って運用することで、合計で8.1MWの出力に下げて運用している。

 具体的には、フル出力の750kWで運用しているのが5台、712.5kWに絞って運用しているのが4台、500kWに絞って運用しているのが3台となっている。

 TMEIC製のこの機種ではこうした運用が可能な上、電力会社との連系協議においても、同社のこれまでの実績に対する信頼感やサポート力によって、こうした運用が受け入れてもらいやすかったようだ。

 稼働して5年間の発電量は、おおむね好調に推移している。

 発電量の傾向は、同じ鹿児島県内にあるミドルソーラー(関連コラム:「刑務所」に隣接する湧水町のミドルソーラー、その利点は?)と同じように、太陽光パネルなど発電システムの劣化は感じていないという。天候の影響の方が大きく、発電量が年によって1割程度変わる。2017年が最も多かった。2020年はこれまでのところ例年より少ない傾向で、曇りが多いうえ九州電力による出力制御指令が増加している影響も大きいという。

調整池に防鳥ネット、通行車のタイヤを消毒した時期も

 垂水のメガソーラーの周辺には、大規模な鶏舎が点在している(図2)。この環境が、このサイトの大きな特徴の1つとなっている。

図2●どの区画の周囲にも、白い屋根の大規模な鶏舎が点在している
(出所:BCPGジャパン)
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 これらの鶏舎は、三菱商事を中心に日本農産工業、日清飼料(現・日清丸紅飼料)、日本ハムが出資して設立されたジャパンファーム(鹿児島県大崎町)の主力の養鶏施設である。

 ジャパンファームによると、同社のチキン事業は年間で4100万羽以上を生産・処理・加工し、日本ケンタッキー・フライド・チキンの認定工場の第1号にもなったという、国内を代表する養鶏ファームである。

 メガソーラーを構成する7カ所の土地は、すべて近くにジャパンファームの大規模な鶏舎がある。メガソーラーへの往来のために通る周辺の道路の多くは、ジャパンファームの鶏舎に毎日、エサを搬入したり加工後に出荷したりするためにも使われている。

 鶏舎への通行に支障を来さないように配慮する必要がある。中でも、自営線の敷設では、念入りに調整した上で施工したという。

 一方、利点もある。鹿児島県南部は、台風の影響を受けることが多く、激しい強風や豪雨に見舞われることがある。このメガソーラーでも、現地に向かう途中の道路が崩れて、現地に行けなくなったことがある。

 こうした場合、養鶏事業への影響の大きさから、いち早く復旧し、現地への経路が確保されており、メガソーラーはこの恩恵を受けているという。

 メガソーラーの施設も、鶏舎に配慮している(図3)。

図3●調整池の上の防鳥ネット
(出所:BCPGジャパン)
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 雨水が敷地外に急激に流出することを防ぐための調整池には、ネットが張られている。水鳥などが水面に近づくことを防いでいる。

 これは、鳥インフルエンザなど鶏の感染症の拡大防止対策である。池や川などの水辺に渡り鳥が飛来することで鳥インフルエンザの発生リスクが高まる。このため養鶏施設の周辺では、池や水路などに防鳥ネットを設置するケースが多い。

 鳥インフルエンザが流行していた頃には、メガソーラーに出入りする車両のタイヤを、敷地内に出入りする際に洗浄・消毒していた。ジャパンファームの要請を受け、対策に協力した。

雑草は少ない半面、水みちで配管が露出

 峠の山腹という場所にあり、周辺は緑に恵まれているものの、意外にもメガソーラーの敷地内には、雑草はそれほど多くないという(図4)。

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図4●雑草が比較的少ない
(出所:BCPGジャパン)
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 雑草が比較的少ないことは、除草の手間とコストが減る利点がある。しかし、垂水市のメガソーラーでは、その利点の一方、雑草が少ないゆえに悩ましい問題が出てきた。

 7カ所の土地の敷地は、いずれも峠の頂上から南西に向けて傾斜している。雨が降ると、太陽光パネルから雨水が落ちる場所が一定だったり、地面を雨水が流れる場所が定まってきたりすることで、地面の土が溝を掘るように削れ、いわゆる水みちができる。

 雑草が多いと、根の効果で、水みちができにくい。実際、雑草の少ない場所の中には、水みちができ始めているところもある。中には、地中に埋設していた配管が露出してしまった場所もでてきた(図5)。

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図5●水みちによって配管が露出
(出所:BCPGジャパン)
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 稼働後に、手を加えた設備もある。日射計の計測信号変換システムを収めたボックスの設置位置を変えている。

 このメガソーラーは、九州にある他の太陽光発電所と同様、太陽光パネルの設置高が低い。さらに、南西方向に下っていく傾斜地にあるので、太陽光パネルの高部でも地面からの高さは低部とあまり変わらない場所もある。

 これによって、架台の支柱の高さは限られ、そこに取り付けられていた日射計関連システムを収めたボックスの地上からの高さもそれほど高くない(図6)。

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図6●移設前の日射計のボックスと潜り込んで作業中の様子
(出所:BCPGジャパン)

 日射計は、一定の期間に補正しないと、精度が悪くなる機種が多い。この作業などのために、ボックスを開ける必要が出てくる。

 この際に、低い太陽光パネルの下に腰をかがめて潜り込んで、窮屈な姿勢でこうした作業を行う必要があった。

 作業性が悪いだけでなく、不正確な作業や設備の損傷につながる恐れがあったことから、より高い場所に固定し直す作業を進めているという。

●発電所の概要
発電所名垂水高峠太陽光発電所
所在地鹿児島県垂水市大字中俣字大野原
敷地面積約13万m2
発電事業者合同会社垂水高峠
(ビーシーピージージャパンの前身のSunEdisonの日本法人が設立した特定目的会社)
連系出力8.1MW
太陽光パネル出力9.65344MW
年間予想発電量2019年:約920万kWh
2018年:約930万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービスJFEプラントエンジ
O&M(運用・保守)ビーシーピージーエンジニアリング
太陽光パネルChint Solar(Astronergy)製
(出力250W/枚・456枚、255W/枚・2万5512枚、260W/枚・1万1688枚:合計3万7656枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力750kW機・12台:750kW・5台、712.5kW・4台、500kW・3台に出力を絞って運用)
売電開始日2015年8月31日
固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価40円/kWh(税抜き)
売電先九州電力