大分の特高太陽光、大ガスが取得、「1GW」に向け着々

国産太陽光パネルの性能劣化は「7年で1%未満」

2020/11/10 05:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

特高メガソーラーの先駆け

 大分臨海工業地帯には、複数のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が立地し、太陽光パネルの合計容量は150MWを超え、国内有数の太陽光発電所の集積地帯になっている。

 そのなかの1つ、出力26.5MWの「日産グリーンエナジーファームイン大分」は、2013年5月1日に商業運転を開始した。2012年7月にスタートした固定価格買取制度(FIT)により、全国各地に特別高圧送電線に連系した数十MWクラスのメガソーラーが、次々と建設されるようになったが、同発電所はその先駆けとなった(図1)。

図1●「日産グリーンエナジーファームイン大分」
(出所:日経BP)
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 日産自動車の所有する遊休地を活用したことから、発電所名は「日産グリーンエナジーファームイン大分」となった。EPC(設計・調達・施工)サービスでは、四電エンジニアリング(高松市)と日揮プラントソリューション(2019年10月に日揮に統合)がコンソーシアムを組んだ。資金調達では、みずほ銀行を幹事とし、大分銀行、豊和銀行、福岡銀行を加えたシンジケートを組んで、プロジェクトファイナンスを組成した。

 日本を代表する企業群で構成された、このメガソーラーは、技術面で「特高メガソーラー」の先陣を切ったばかりでなく、メガソーラー向けプロジェクトファイナンスの先駆けとしても、再生可能エネルギーの新たなビジネスモデルを切り開いたとも言える。事業会社がSPC(特別目的会社)に出資して事業主体とし、プロジェクトが生み出すキャッシュフローを担保にしたファイナンス手法は、その後、大規模な再エネ事業で広く採用されている。

オーナーは日揮から大阪ガスに

 実は、このメガソーラーのSPCは当初、「日揮みらいソーラー」だったが、2019年12月に、「Daigas大分みらいソーラー」に変わった。元々は、日揮が100%出資して事業化したものの、2014年5月に大阪ガスが49%出資して太陽光発電事業に参画した。さらに大阪ガスは、2019年12月に日揮の保有する全株を取得して、100%子会社にした。

 こうした出資企業の移り変わりは、国内の再生可能エネルギー事業の担い手が変わりつつある流れを示しており、その点でも、「日産グリーンエナジーファームイン大分」は、国内の再エネを巡るビックビジネスの最先端にあると言える(図2)。

図2●SPCへの出資者が日揮から大阪ガスに代わった
(出所:日経BP)
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 日揮グループにとってこの発電所は、ほぼ初めての特高メガソーラーにおけるEPC受注となった。そこで、リスクをとって発電事業に出資し、国内の再エネ事業で経験のある四電エンジニアリングと組むことでノウハウを吸収した。その後、日揮は、メガソーラーのEPCサービス事業を広く展開し、岩手県軽米町などでさらに大規模なプロジェクトを完成させている。

 一方、ここ数年、エネルギー業界全体に「脱炭素」の波が本格的に押し寄せ、電力大手から、石油、そしてガス大手企業が本気で再エネ事業に乗り出している。FITで市場が拡大した国内の再エネビジネスは、商社や外国資本などによる投資的な位置づけから、FIT後も睨み脱炭素型電源の大量確保を目指すエネルギー大手に主導権が移りつつある。

 「2030年までに再エネ1GW」

 大阪ガスは2018年3月に公表した中期経営計画の中で、それまで「2030年度に50万kW」としていた再エネ電源の開発・取得目標を、「100万kW(1GW)」に上方修正した。同社は、FIT開始以前から、風力発電を主体に再エネに取り組み、FIT開始後にはメガソーラーとバイオマス発電の開発を進めており、これまでに開発中案件も含めて国内で50万kW以上、海外で5万kW以上を手掛けている。

 同社は、国際的な金融会社マッコーリーグループと、日本国内における洋上風力発電の共同検討を目的とした協力協定を締結するなど、国内で具体的な洋上風力発電プロジェクトを検討し始めている。「1GW」の達成には、洋上風力がカギになると見ている。

 太陽光では大分サイトを含めて6サイトを所有し、合計で約33MWに達する。グループ会社のDaigasガスアンドパワーソリューション(DGPS:大阪市)が、こうした再生可能エネルギー電源の運営管理を担っている。

 「日産グリーンエナジーファームイン大分」については、引き続き日揮が現場サイドのO&Mサービスを担っているが、DGPSも大阪から遠隔で発電状況を監視し、不具合などのアラーム情報を受けており、日揮と連携した運営体制を築いている。

 太陽光ではFIT後を睨んだビジネスモデルに取り組んでいる。例えば、客先の屋根に太陽光パネルを設置して、自家消費を促す「TPO(第三者所有)・PPA(電力供給契約)」型の電力供給サービスに乗り出している。

 また、所有する「由良太陽光発電所」(出力1.65MW)では、ドイツのVPP(仮想発電所)事業者と共同で、高精度な発電量予測を目指した実証を行い、一定の成果を上げたという(図3)。

図3●メガソーラーでの実証の概要
(出所:大阪ガス)
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 これは、FIT後に導入されるフィードイン・プレミアム(FIP)を想定したものという。同制度では、発電事業者が自ら、売電先を見つけ、発電量を予測する必要があるが、実際には、「再エネ電源のアグリゲーター」がこうした業務を請け負うことになる。

 大阪ガスでは、発電量の予測ノウハウを蓄積することで、こうしたFIT後の再エネビジネスで主導権を確保し、付加価値の高いサービスを展開していくことを目指す(図4)。

図4●大阪ガスの目指す再エネビジネスのイメージ
(出所:大阪ガス)
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パネル50枚をラボで性能検査

 大阪ガスが取得した「日産グリーンエナジーファームイン大分」は、国内の特高メガソーラーの先駆けとなり、すでに稼働から7年半を経過したこともあり、その運用状況や経年変化などが気になるところだ。

 このメガソーラーは、国内初の太陽光を対象にしたプロジェクトファイナンスだったこともあり、設備面では、国産を基本に実績のあるメーカー製を採用し、高い品質を確保した。

 太陽光パネルはシャープ製の多結晶シリコン型とソーラーフロンティア製のCIS化合物型とし、特性の異なる2種類の太陽光パネルを使うことでリスクを減らした(図5)。

図5●シャープ製の太陽光パネル
(出所:日経BP)
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 パワーコンディショナー(PCS)は、海外でも実績のあった東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を導入した。また、架台には、日創プロニティ製、杭は、新日鉄住金エンジニアリング製のスクリュータイプで固定した。架台材料は、新日鉄住金製の高耐食性鋼材を採用した(図6)。

図6●東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製のパワーコンディショナー
(出所:日経BP)
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 実は、大阪ガスは、全株取得に先駆け、シャープ製パネル25枚、ソーラーフロンティア製25枚を取り外し、IV(電流・電圧)特性などを検査した。その結果、劣化率は、両パネルともメーカーの想定する値を下回り、発電量の目減りは1%未満に留まっていた。

沿岸立地も腐食は予想より少ない

 日々の運用としては、保安規定に基づく定期点検のほか、半年に1回は全パネルを目視点検している。これにより、カバーガラスの割れなど年間で10~20枚を交換している。パネル全枚数が11万4000枚に達することを考えると少ないといえる。

 稼働当初から、懸念材料だったのは、海側に設置した太陽光パネルや架台などが、潮風によって腐食しないか、そして、隣接地より、やや地盤が低くなっているため、雨水が溜まりやすい点だった。

 海側のパネルは、堤防から約800m離れているため、海水の飛沫が直接、かかることはほとんどないと思われたが、大型の台風が増えていることもあり、慎重を期して、稼働後に堤防内側に背の高い仕切りを築いて強風による水しぶきの侵入を抑制したという。こうした対策もあり、これまでのところ腐食の兆候は予想より少ないという(図7)。

図7●海に面した堤防に新たに壁を築いた
(出所:日経BP)
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 一方、治水に関しては、予想以上に隣接地からの流れ込みもあり、水が溜まることが多かったため、敷地北側の端にU字側溝を新設して排水しやすくした。加えて、隣接地側でも整地が進んで水が流れ込みにくくなったこともあり、敷地内での滞水は大幅に改善したという(図8)。

図8●敷地北側の端にU字側溝を新設した
(出所:日経BP)
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●施設の概要
施設名日産グリーンエナジーファームイン大分
住所大分県大分市青崎10番
事業者Daigas大分みらいソーラー株式会社(大阪ガス100%出資)
土地所有者日産自動車
売電開始日2013年5月1日
発電容量太陽光パネル出力・26.5MW、連系出力19MW
施工会社日揮プラントソリューション(2019年10月に日揮に統合)と四電エンジニアリングで構成するコンソーシアム
太陽光パネルシャープ製多結晶シリコン型(240W/枚・11.4万枚)とソーラーフロンティア製CIS化合物型(150W/枚・0.9万枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製 (500kW/台)
架台日創プロニティ(架台)、新日鉄住金エンジニアリング(杭)
運営・保守日揮