探訪

積雪地でも設置角10度、富山の石油関連施設横にみるENEOSの太陽光(page 2)

安全・保全を重視、EPCや発電設備は幅広く

2020/11/17 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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油槽所跡など、平坦で送電線、地元との関係で利点

 太陽光発電所については、自社グループの遊休地を主に活用して開発・運営している。油槽所の跡地などを多く活用している。

 油槽所は、ガソリンなどの石油製品を一時的に貯蔵する、中継基地の役割を担う施設で、そこからタンクローリーに積み込んでガソリンスタンドや工場などに運ばれる。

 FIT開始以前には、旧新日本石油において、太陽電池セル(発電素子)や太陽光パネルの研究開発、製造・販売を手掛けていた時期もあった。この事業は2010年に停止している。

 遊休地を活用した太陽光発電所の開発は当初、現在のような「2022年度までに合計出力1GW以上」といった全体的な目標を掲げて始まったわけではない。

 個別に事業化の検討が進み、その後、こうした目標が出てきたことで、遊休地で開発してきた発電所の位置づけが、より重みを増してくることになった。

 ENEOSは、とくに再エネに取り組んできた旧JXTGエネルギーなどが統合・合併して成立し、規模が大きくなる中で、施設の統廃合なども加わって、遊休地も増えてきた。

 遊休地を活用して太陽光発電所を開発する上で、元々、石油関連施設などが立地していた場所であることから、平坦な土地が多く、かつ、連系先となる電力会社の送電線が敷設されている。地元の地域との付き合いもあり、太陽光発電設備の導入に関する理解を得やすい。

 こうした太陽光発電所の開発に向く3つの条件が揃っているのも、グループ全体の遊休地の利点だった。

 石油関連施設の跡地などの場合、土壌汚染対策法に基づいた土地の調査や活用を求められることがほとんどとなっている(図5)。ENEOSの太陽光発電所の場合、約半分が該当している。

図5●山口県下松市の出力1.8MW。石油関連施設の跡がわかりやすい
(出所:ENEOS)
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 こうした案件の場合、例えば、杭基礎を打ち込む手法を採ることは難しい。そこで、コンクリートの置き基礎を採用することが多くなっている。

 防油堤と呼ばれる、万が一、備蓄施設が損傷してしまった場合にも、外部に石油製品を流出させないための設備を備えていることも多い。太陽光発電所の開発・運営では、この防油堤を排水対策に応用することもできるようだ。

 こうして開発した太陽光発電所の中には、沖縄県うるま市の出力約12.2MWも含まれる(図6)。この案件は、沖縄県で最大規模のメガソーラーになる。

図6●沖縄で最大規模の出力約12.2MW
(出所:ENEOS)
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 製油所の敷地内に開発したメガソーラーもある。

 宮城県多賀城市にある仙台製油所の敷地内の出力約1MWの案件で(関連コラム)、本業の石油製品との兼ね合いから、施工や運営での制約が多そうだが、石油関連の施設とは完全に分離された土地で、出入口や通路などもわかれていることから、それほど大きな制約はないという。

 本業の石油関連と同じように、安全や保全には、特に留意している。石油関連は、製品の性質上、火災などのリスクが高く、安全への意識が特に厳しい分野である。そうした経験が豊富な製油所の保安管理担当者が、太陽光発電所の開発・運営に関わる場合もある。

 例えば、立地する場所がほぼ海沿いであることから、塩害への対策や対応にも気を配っている。太陽光発電設備の筐体や架台などへのサビ止めの手法一つでも、石油関連施設のノウハウを盛り込むなど、EPC(設計・調達・施工)サービス企業からは過剰だと指摘されることもあるが、安全や保全にはこだわっていきたいという。

 O&M(運用・保守)については、ノウハウの有無に左右される部分が大きいことから、自社で深くかかわる方針を持つ。

 除草などの作業は、元の施設時代の委託先を活用できるなど、地元のネットワークを生かしている。

 太陽光発電所の開発は、その都度、個別に手掛けてきたことで、EPCサービスや太陽光パネル、パワーコンディショナー(PCS)などは、集中購買的な付き合いではなく、個別に選定してきたことも特徴になっているという。

 それぞれの案件開発ごとに、選定からはじめる手法で、ある程度、枠組みを決めて開発する手法に比べて、労力を要してきたが、今になってみると幅広く多くの企業との付き合いがあることで、設備や手法の良し悪しをより的確に知ることができる利点となっているという。

 今後、セカンダリー市場を活用して稼働済みの太陽光発電所を取得する場合にも、発電所の評価や運営の際に、この利点が生きるとみている。

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