積雪地でも設置角10度、富山の石油関連施設横にみるENEOSの太陽光

安全・保全を重視、EPCや発電設備は幅広く

2020/11/17 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 富山湾を目の前に石油関連施設が並ぶ一角に、太陽光パネル出力が約2.8MW、連系出力が1.99MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

図1●富山湾のすぐ近く、神崎川にも近い
(出所:ENEOS)
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 このメガソーラーは、日本海石油(富山市四方)の施設の敷地内に立地する。隣接地の石油関連設備は、日本海石油の施設である。

 同社はENEOSの100%子会社で、この「富山メガソーラー発電所」はENEOSが運営している。ENEOSに統合される前の旧JXTGエネルギーが開発し、2017年1月に売電を開始してから約3年10カ月間を経過した。

 ENEOSは、このような自社グループなどの遊休地を活用して、積極的に太陽光発電所などの再生可能エネルギー発電所を開発・運営している(図2)。

図2●ENEOSの国内の再エネ発電所
(出所:ENEOS)
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 今年10月には、富山県高岡市にある伏木油槽所の跡地に出力約0.7MWの太陽光発電所を着工した。これが2021年3月に売電を開始すると、ENEOSの稼働済み太陽光発電所は21カ所・合計出力約49MWに拡大する(関連ニュース:油槽所跡地で3カ所・合計2.6MW)。

 このほか、風力発電所が2カ所・約4MW、バイオマス発電所が1カ所・約68MWある。これらを合計した再生可能エネルギー発電所の合計出力は約121MWとなる。

 バイオマス発電所は、パーム椰子殻(PKS)を使った木質バイオマス専焼で、北海道室蘭市において2020年5月に売電を開始した(図3、関連ニュース:国内最大の木質専焼バイオマス)。

図3●室蘭で稼働したバイオマス発電所
(出所:ENEOS)
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 バイオマス発電では11月、新潟県聖籠町において世界最大級という出力300MWの発電事業を、固定価格買取制度(FIT)を活用せずに事業化することを検討していることも明らかにしている(関連ニュース)。

 風力発電では、2019年4月に台湾でのプロジェクトに資本参加。国内では秋田県八峰町・能代市沖に開発中の洋上風力プロジェクトにも参画している。

 また、サービスステーション(SS:給油を中心とするサービス拠点)などにおいて、太陽光発電と蓄電池システムを組み合わせた仮想発電所(VPP)の実証にも取り組んでいる(図4、関連ニュース:給油所の例、同ニュース:鹿児島・喜入の中継備蓄基地の例)。

図4●給油所におけるVPP実証
(出所:ENEOS)
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 今後も積極的に再エネ発電に取り組み、2022年度までに国内外で合計出力1GW(1000MW)以上に拡大するという目標を掲げている。

油槽所跡など、平坦で送電線、地元との関係で利点

 太陽光発電所については、自社グループの遊休地を主に活用して開発・運営している。油槽所の跡地などを多く活用している。

 油槽所は、ガソリンなどの石油製品を一時的に貯蔵する、中継基地の役割を担う施設で、そこからタンクローリーに積み込んでガソリンスタンドや工場などに運ばれる。

 FIT開始以前には、旧新日本石油において、太陽電池セル(発電素子)や太陽光パネルの研究開発、製造・販売を手掛けていた時期もあった。この事業は2010年に停止している。

 遊休地を活用した太陽光発電所の開発は当初、現在のような「2022年度までに合計出力1GW以上」といった全体的な目標を掲げて始まったわけではない。

 個別に事業化の検討が進み、その後、こうした目標が出てきたことで、遊休地で開発してきた発電所の位置づけが、より重みを増してくることになった。

 ENEOSは、とくに再エネに取り組んできた旧JXTGエネルギーなどが統合・合併して成立し、規模が大きくなる中で、施設の統廃合なども加わって、遊休地も増えてきた。

 遊休地を活用して太陽光発電所を開発する上で、元々、石油関連施設などが立地していた場所であることから、平坦な土地が多く、かつ、連系先となる電力会社の送電線が敷設されている。地元の地域との付き合いもあり、太陽光発電設備の導入に関する理解を得やすい。

 こうした太陽光発電所の開発に向く3つの条件が揃っているのも、グループ全体の遊休地の利点だった。

 石油関連施設の跡地などの場合、土壌汚染対策法に基づいた土地の調査や活用を求められることがほとんどとなっている(図5)。ENEOSの太陽光発電所の場合、約半分が該当している。

図5●山口県下松市の出力1.8MW。石油関連施設の跡がわかりやすい
(出所:ENEOS)
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 こうした案件の場合、例えば、杭基礎を打ち込む手法を採ることは難しい。そこで、コンクリートの置き基礎を採用することが多くなっている。

 防油堤と呼ばれる、万が一、備蓄施設が損傷してしまった場合にも、外部に石油製品を流出させないための設備を備えていることも多い。太陽光発電所の開発・運営では、この防油堤を排水対策に応用することもできるようだ。

 こうして開発した太陽光発電所の中には、沖縄県うるま市の出力約12.2MWも含まれる(図6)。この案件は、沖縄県で最大規模のメガソーラーになる。

図6●沖縄で最大規模の出力約12.2MW
(出所:ENEOS)
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 製油所の敷地内に開発したメガソーラーもある。

 宮城県多賀城市にある仙台製油所の敷地内の出力約1MWの案件で(関連コラム)、本業の石油製品との兼ね合いから、施工や運営での制約が多そうだが、石油関連の施設とは完全に分離された土地で、出入口や通路などもわかれていることから、それほど大きな制約はないという。

 本業の石油関連と同じように、安全や保全には、特に留意している。石油関連は、製品の性質上、火災などのリスクが高く、安全への意識が特に厳しい分野である。そうした経験が豊富な製油所の保安管理担当者が、太陽光発電所の開発・運営に関わる場合もある。

 例えば、立地する場所がほぼ海沿いであることから、塩害への対策や対応にも気を配っている。太陽光発電設備の筐体や架台などへのサビ止めの手法一つでも、石油関連施設のノウハウを盛り込むなど、EPC(設計・調達・施工)サービス企業からは過剰だと指摘されることもあるが、安全や保全にはこだわっていきたいという。

 O&M(運用・保守)については、ノウハウの有無に左右される部分が大きいことから、自社で深くかかわる方針を持つ。

 除草などの作業は、元の施設時代の委託先を活用できるなど、地元のネットワークを生かしている。

 太陽光発電所の開発は、その都度、個別に手掛けてきたことで、EPCサービスや太陽光パネル、パワーコンディショナー(PCS)などは、集中購買的な付き合いではなく、個別に選定してきたことも特徴になっているという。

 それぞれの案件開発ごとに、選定からはじめる手法で、ある程度、枠組みを決めて開発する手法に比べて、労力を要してきたが、今になってみると幅広く多くの企業との付き合いがあることで、設備や手法の良し悪しをより的確に知ることができる利点となっているという。

 今後、セカンダリー市場を活用して稼働済みの太陽光発電所を取得する場合にも、発電所の評価や運営の際に、この利点が生きるとみている。

設置角は低く、過積載率は高く

 富山市のメガソーラーは、積雪地にある(図7)。

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図7●積雪地だが、影響は比較的少ない
積雪時の画像は2017年1月17日に撮影(出所:ENEOS)
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 ただし、豪雪に見舞われることはそれほどないという。北陸の太陽光発電所の開発でよく言われる「三重苦」という、積雪による冬の発電量の少なさ、高い設置角による土地の活用効率の低さ、高い設置位置による基礎と架台のコスト増という不利なイメージは比較的、少ない場所としている。

 太陽光パネルの設置角は10度に抑えた。近隣には20度以上を選ぶ太陽光発電所が多い中、比較的低い設計になる。

 これは、海岸に近く積雪が続くことが比較的、少なく、降り積もったとしても海風が吹いて、すぐに吹き飛ばす効果も期待できるからという。

 ただし、設置高は太陽光パネル、PCSともに1m近くに上げている。

 ほぼ同じ時期に稼働した、福井県坂井市の福井油槽所の跡地を活用した、同じ規模の発電所でも、同様の設計となっている(図8)。

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図8●福井県坂井市の福井油槽所跡地のメガソーラー
太陽光パネルの設置角は10度、PCSの基礎も高い(出所:ENEOS)
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 両メガソーラーとも、連系出力の1.99MWに対して太陽光パネル出力は約2.80MWと、過積載率は約1.4倍とした。いずれもFITの売電単価(税抜き)は36円/kWhで、2017年1月1日に北陸電力への売電を開始している。

 同社が日本海側で最初に開発した太陽光発電所は、秋田県男鹿市の出力約2.4MWのメガソーラーで、設置角は30度としていた(図9)。ここでの経験を生かした。

図9●秋田県男鹿市のメガソーラー
(出所:ENEOS)
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 稼働後の発電量は、事業計画時の想定よりも多いという。積雪によって左右される月日はあっても、年単位で大きく発電量が落ちた年はないという。

 ただし、坂井市のメガソーラーについては、2017年~2018年にかけての冬季の大雪の影響を受けた。

 このシーズンは日本海側の各地で記録的な大雪に見舞われ、広い地域に被害が及んだ。

 この際、坂井市のメガソーラーでは、発電設備の損壊などはなかったものの、太陽光パネルに積もった雪によって10日間以上、発電量がゼロの日が続いた。

●発電所の概要
発電所名富山メガソーラー発電所
所在地富山県富山市四方荒屋(日本海石油の本社敷地内)
敷地面積約3万2000m2
太陽光パネル出力約2802.8kW
連系出力1990kW
年間予想発電量約2922MWh
(一般家庭約530世帯の消費電力に相当)
発電事業者ENEOS(稼働時は統合前の旧JXTGエネルギー)
土地所有者日本海石油
EPC(設計・調達・施工)非公開
O&M(運用・保守)非公開
太陽光パネル非公開
(出力265W/枚・1万780枚)
太陽光パネルの設置角10度
太陽光パネルの設置高さ1m
パワーコンディショナー(PCS)非公開
売電開始2017年1月1日
固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先北陸電力
●発電所の概要
発電所名坂井メガソーラー発電所
所在地福井県坂井市三国町新保(旧新日本石油の福井油槽所跡地)
敷地面積約3万2000m2
太陽光パネル出力約2802.8kW
連系出力1990kW
年間予想発電量約2922MWh
(一般家庭約530世帯の消費電力に相当)
発電事業者ENEOS(稼働時は統合前の旧JXTGエネルギー)
土地所有者ENEOSグループ
EPC非公開
O&M非公開
太陽光パネル非公開
(出力265W/枚・1万780枚)
太陽光パネルの設置角10度
太陽光パネルの設置高さ1m
パワーコンディショナー(PCS)非公開
売電開始2017年1月1日
FITに基づく売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先北陸電力