積雪地での「両面ガラス・両面発電」の効果は? 十勝の地場企業によるメガソーラー

太陽光パネルの交換で苦慮、除雪では新手法を積極的に導入

2020/11/30 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 国内有数の農作・牧畜地域である北海道・十勝地域にある清水町に、太陽光パネルの出力が約1.39MW、連系出力が1.0MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

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図1●「ティー・ワイ 十勝清水太陽光発電所」
図1●「ティー・ワイ 十勝清水太陽光発電所」
(出所:上はティー・ワイ、下は日経BP)
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 メガソーラーを開発・運営しているのは、ティー・ワイ(北海道更別村)となる。同社は、土木資材の生産・販売などから、酪農家向けの敷料製造、木質バイオマス発電所への原料供給、首都圏でのICT(情報通信技術)のシステム構築(SI)などにも業容を広げている。土木・建設の山内組(同)をなどからなるグループで、十勝を地盤に展開している。

 同社によるメガソーラー開発の特徴は、地域に根差している点である。土地は、所有している砂利採石場の跡地などを活用してきた。

 ティー・ワイはこれまで、グループ会社の所有分を含めて、高圧配電線に連系するメガソーラーを8カ所、開発・運営している(関連コラム1:台風で水没した帯広のメガソーラー、復旧までの苦難、同コラム2:更別村の地域密着型メガソーラー)。

 このほか、低圧配電線に連系する案件も開発・運営しているほか、他社のメガソーラー開発も担ってきた。

 他の企業が開発を進めていた案件を途中で取得し、事業化する例も出てきた。2017年3月に、北海道中川郡幕別町において稼働した、太陽光パネル出力が約1.29MW、連系出力が995kWの発電所である(図2)。発電事業者は山内組となっている。

図2●他社が開発を進めた案件を買い取って事業化
図2●他社が開発を進めた案件を買い取って事業化
(出所:ティー・ワイ)
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 幕別町の発電所は当初、北海道電力との連系協議の中で、接続の見通しが立ちにくい状況だった。十勝地域の多くのメガソーラー開発で、このような例は多い。

 ティー・ワイの他の高圧案件も同様で、同社はこうしたローカルな連系の制約を乗り越えて、連系先となる北海道電力の配電線が接続可能になる時期を待ち、8カ所のメガソーラーを開発してきた。

 地元で土木・建設企業を持つグループであることから、北海道電力から連系可能な時期の目安が示され次第、その時期に合わせて施工を進めるといった調整がしやすい。

 ティー・ワイの案件では、施工は山内組が担当することが多い。電気工事については、初期の案件では外注してきたが、現在は新たに買収してグループに加わった双栄電気工業(北海道中札内村)が担っている(図3)。これによって、グループ企業による一貫した開発・運営体制を整えている。

図3●電気工事まで自社グループで可能に
図3●電気工事まで自社グループで可能に
(出所:ティー・ワイ)
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 基礎や架台も近隣地域の企業から調達するなど、地元とのつながりを生かして開発してきた。ただし、最近では、顧客の発電所の低コスト化の要求に対して、海外企業製の杭基礎や架台を採用することも出てきている。

両面発電の実際の効果は?

 ティー・ワイの開発の特徴は、発電設備については、さまざまな製品を採用していることにある。太陽光パネルやパワーコンディショナー(PCS)については、さすがに地元の企業は手掛けていないので、大手メーカーの製品を採用する。

 メガソーラーの集中型のPCSについては、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を多く採用している。このほか分散型や低圧案件向けでは、国内外のさまざまなメーカーの機種を採用している。

 太陽光パネルについては、さまざまなメーカー、幅広いタイプの製品を採用している。いちはやく両面ガラスタイプ、両面発電タイプを採用するなど、先端的な製品の採用にも意欲的である。

 ティー・ワイは、他の発電事業者向けに、太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)サービスやO&M(運用・保守)サービスも手掛けている。これらのサービス事業で顧客の要望に対応したり、適切な提案を実現する目的もあり、さまざまな製品を採用している。

 「実際に自ら使ってみないとメンテナンスなどでの適切な対応が難しい」と感じているという。

 また、今後、セカンダリー市場で稼働済み発電所の購入に関わる機会が出てきた場合には、さまざまな発電設備を使っていることで、より適切な評価が可能になる利点も出てくるのではないかと予想している。

 清水町にある太陽光パネルの出力約1.39MW、連系出力1.0MWのメガソーラーは、いち早く両面ガラスの太陽光パネルを採用した案件だった。2014年8月に稼働してから6年が経っている。

 ドイツのソーラーワールド製で、当時、両面ガラスの太陽光パネルを採用したメガクラスの発電所は珍しく、世界初の稼働だったのではないかという。設計当時、両面ガラスの太陽光パネルを販売していたメーカーは、ソーラーワールドのみだった。

 また、両面発電の太陽光パネルも同じように、低圧の発電所でいち早く採用していた。

 カナディアン・ソーラーが早期に発売した製品で、隣には同じカナディアン・ソーラー製で従来型の片面発電の製品を設置した発電所があり、これら2種類のパネルの出力仕様は同じなので、運用状況を比較できる。

 両面発電の太陽光パネルは、裏面側の発電分を反映せず、表面側の出力だけを製品の仕様とする。ティー・ワイの低圧の発電所の場合、片面発電と同じ寸法で同じ出力の仕様になっている。

 この発電所を見ると、発電量は、両面発電タイプの方が多少の変動はあるが年間で7%ほど多いという。

 片面発電タイプと同じ出力の仕様で、発電量が多い利点があることから、変更認定となる条件(合計出力が3kW、または、3%以上の変更)に抵触せずに売電収入を増やしたい発電所にとっては、魅力があるのではないかとみている。

 ティー・ワイがより大きな利点を感じているのは、両面発電パネルの方が積雪時に上に積もった雪が滑り落ちやすいことだ。

 十勝は豪雪地域ではないものの、冬季にはある程度、雪が積もる日はある。

 この時に、両面発電タイプの太陽光パネルは、仮に表面が雪で覆われてしまって発電量がゼロだったとしても、地面に降り積もった雪に反射した太陽光がセル(発電素子)の裏面側にあたって発電する。

 この裏面の発電によって、太陽光パネルの温度は片面発電タイプよりも高くなり、雪が早く融け、より早く滑り落ちる効果があると推測している。

 このように、さまざまなメーカーのさまざまな種類の太陽光パネルを使って自社グループで発電を続け、さらに、顧客の発電所のメンテナンスも担当してきたなかで感じていることは、「年月が経つ間に、メーカーを問わずある程度の不具合が生じるのは、太陽光パネルという製品の性質上、避けられない」という点である。

 とくに、「クラスタ異常」の発生が増えてきていると感じている。

 「クラスタ異常」とは、不具合によってセルの出力が低下した結果、バイパスダイオードが働いて、3分の1ごとにわかれている複数セルの直列回路であるクラスタごと発電を停止している状態を指す。

 インターコネクタの断線、はんだ不良、バイパスダイオードのショートによって生じる場合が多いことが知られている。

太陽光パネルの交換で苦慮

 異常が生じた太陽光パネルは、交換することも多い。このパネルの交換で苦慮することがある。

 製品が年々新しくなり、設置時に採用した旧製品が手に入りにくいことによる。メーカーが保管している在庫は限られることが多いという。

 旧製品を入手できず、新しい製品に交換する場合、架台への固定方法が変わってしまう問題が生じている。

 セルやパネルの進歩によって、同じメーカーの後継モデルであっても、外形寸法だけでなく、アルミフレームに開けられた固定用の穴の寸法や位置も変わっていることが多い。

 これによって、架台や金具と合わなくなってしまう。

 交換前のパネルがアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の中央などに位置していた場合、外形寸法が大きくなったり、固定用の穴の位置が変わったりした場合、このような違いを吸収しながら、同じ位置に同じように固定するのは難しい。

 そこで、寸法などが大きくなったパネルは、アレイ全体の中で相対的に調整して固定しやすい場所として、アレイの端部に固定することになる。元々アレイ端部に固定されていたパネルは、交換するパネルがあった場所に移設する。

 このように、1枚の太陽光パネルの交換のために、玉突きのようにもう1枚の移設が必要になり、実際には2枚を交換する作業が必要になっている。

 こうした状況への対策として、ティー・ワイでは、ある時点から太陽光パネルの在庫数を増やしている。出力2MWの発電所の場合、100kW分程度を備蓄するようにしている。その保管に必要な倉庫の確保にも苦慮している。

除雪の方法を模索

 豪雪地域ではないものの、除雪が必要になる場合もある。自社グループの発電所よりも、近隣地域の他の太陽光発電所から除雪作業を受託することが多いようだ。

 同社の場合、路上などでの除雪と同じように、地面に積もった雪の山を吹き飛ばして除ける手法を採用している(図4)。

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図4●重機にアタッチメントを取り付けて除雪
図4●重機にアタッチメントを取り付けて除雪
(出所:ティー・ワイ)
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 雪の山ができて困るのは、アレイ前部の下である。太陽光パネル低部まで届いてしまうと、パネル上の雪とつながってしまい、滑り落ちなくなるだけでなく、パネルに過剰な応力が生じて損傷してしまう場合もある。

 そこで、アレイ前部にできた雪の山を、前の列のアレイ下に除去する。

 重機に専用のアタッチメント(作業別の専用部材)を取り付けてアレイ間を走りながら雪を退ける。土木・建設会社を持つ企業グループだけに、こうした作業への親和性が高い。

 こうした除雪作業は引き合いも多く、ティー・ワイでは、より作業効率の高い手法を求めて、新しい手法や機器の導入も積極的に試みている。

 重機に専用のアタッチメントを取り付けて作業する手法は、雑草の草刈りにも応用している(図5)。

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図5●草刈りも重機で
図5●草刈りも重機で
(出所:ティー・ワイ)
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 乗用型の草刈機も導入しているものの、同社の場合、一定以上の凹凸があったり、地面が砂利で覆われている太陽光発電所が多く、乗用型の使用に向く場所は限られているという。

 太陽光パネルの洗浄については、ほとんど必要性を感じていないという。

 十勝地域は、空気が澄んでいてきれいな傾向にあり、土埃などが太陽光パネルに溜まることが比較的少ないと考えられる。

 積雪に備えて太陽光パネルの設置角が30度などと大きいことも、汚れが溜まりにくい要因になっている。

 ティー・ワイでは、これだけの角度がついていることによって、朝露でさえパネル表面を流れ落ちるため、毎朝洗浄しているような効果を生んでいるのではないかとみている。


●発電所の概要
名称ティー・ワイ十勝清水太陽光発電所
所在地北海道上川郡清水町羽帯
発電事業者ティー・ワイ(北海道更別村)
土地所有者ティー・ワイ
敷地面積3万3250m2
太陽光パネル出力約1338.8kW
連系出力1000kW
設計・調達ティー・ワイ
施工山内組(北海道更別村)
O&M(運用・保守)ティー・ワイ
太陽光パネルソーラーワールド製
(両面ガラス品:出力275W・4416枚、片面ガラス品:出力260W・480枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力630kW機・2台)
基礎十勝豊西コンクリート製品(北海道帯広市)
架台北日本サッシ工業(北海道北見市)
売電開始時期2014年8月
FIT上の売電価格40円/kWh(税抜き)
売電先北海道電力
●発電所の概要
名称山内組幕別太陽光発電所
所在地北海道中川郡幕別町字千住
発電事業者山内組
土地所有者山内組
敷地面積1万7475m2
太陽光パネル出力約1288.5kW
連系出力995.0kW
設計・調達ティー・ワイ
施工山内組
O&Mティー・ワイ
太陽光パネルカナディアン・ソーラー製
(片面ガラス品:出力295W・4368枚)
PCSTMEIC製
(定格出力500kW機・2台)
基礎十勝豊西コンクリート製品
架台北日本サッシ工業
売電開始時期2017年3月
FIT上の売電価格36円/kWh(税抜き)
売電先北海道電力