クレーンやドローンの高さに注意
線下地は、安全面などの理由から、一般的な土地とは異なる利用の基準がある。基本的に無人で建物を建てる必要もない太陽光発電所は、線下地の活用として望ましい用途の1つといえる(図2)。
ESSは、中国電力から土地を借り、線下地に3カ所の太陽光発電所を開発した。太陽光発電所の用地となる前は、近隣で大規模なイベントが開催される際の臨時駐車場などとして活用されていた(図3)。
線下地ならではの制約の1つに、上空を通っている特高送電線から一定の範囲内に近づいてはいけないことがある。
施工時のクレーン車を使う作業や、運営時のドローン(無人小型飛行体)による飛行などに影響する。
こうした作業が必要になった時には、事前に中国電力の架線担当部署と調整した上で、特高送電線から定められた距離を保ちつつ作業する。
クレーン車は、PCSや昇圧変圧器といった重い機器を設置する際だけでなく、パレットに載せて納入された太陽光パネル、架台を構成する鋼材をまとめて設置場所の近くに運ぶ際に使われることもある。
こうしたクレーン車を使う作業では、上空の特高送電線に一定以上、近づかないようクレーンの上げ下げを工夫した(図4)。
稼働後のドローンによる空撮は、発電所全体の撮影のほか、太陽光パネルの状態を点検するための熱分布画像を撮影するために実施した。この際にも、特高送電線との距離を十分に保った範囲で飛行した。
特高送電線の点検などでは、送電線にゴンドラのような乗り物を取り付けて作業者が乗り、作業している様子を見かけることがある。このような場合、線下地の太陽光発電所に何らかの影響が及ぶのだろうか。
ESSによると、大きな影響はないようだ。こうした作業を行う際には、事前に一般送配電事業者(中国電力ネットワーク)から相談があり、日程などを調整することになる。数十年に一度といった作業のため、頻繁にあるものではないという。
また、開発時に、上空の特高送電線による電磁誘導の影響を懸念する声もあった。しかし、稼働後の4年間で、太陽光発電設備や遠隔監視用の通信設備などに電磁誘導によるとみられる大きな問題が生じたことはないという。
上空といっても、太陽光パネルの真上には、常に送電線がある。影の影響はどの程度あるのだろうか。
まったく影がかからないわけではないが、太陽光パネルとの距離がかなり離れていることもあって、実際には大きくは影響していないようだ。