特高送電線「線下地」のミドルソーラー、影や電磁誘導の影響は?

「防草シート+砕石」で、雑草の抑制に効果

2020/12/23 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 岡山県倉敷市の臨海工業地域、中国電力の火力発電所にほど近い場所に3つの太陽光発電所がある。

 3カ所とも特別高圧送電線の「線下地」を活用している点に特徴がある。線下地とは、送電線が空中を通っている真下の細長い土地で、遊休地になっていることも多い(図1)。

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図1●左から玉島第1、玉島第2、水島の太陽光発電所
(出所:SSG)

 2カ所は倉敷市玉島の乙島地区に立地する。太陽光パネルの出力が約1.82MW、連系出力が1.5MWの「玉島第1太陽光発電所」と、太陽光パネルの出力が約871.5kW、連系出力が750kWの「玉島第2太陽光発電所」である。

 もう1カ所は、玉島乙島から東に数km離れた同市児島に立地する、太陽光パネルの出力が約819.5kW、連系出力が750kWの「水島太陽光発電所」である。

 数百kW程度のミドルソーラーと呼ばれる規模が2カ所、1MWを超えるメガソーラー(大規模太陽光発電所)が1カ所で、鉄塔と鉄塔の間に挟まれた線下地1カ所に目一杯、太陽光パネルを並べるとこの規模のミドルソーラーになり、「玉島第1」の約1.8MWは複数の線下地にまたがることでこの規模を実現した。

 いずれも、発電事業者は中国電力グループのエネルギア・ソリューション・アンド・サービス(広島市、以下ESS)となる。ほぼ同時に開発して2016年8~11月に稼働し、4年以上が経過した。

 EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスは自社で担い、太陽光パネルは三菱電機製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 ESSの太陽光発電所は、このように自社で開発からEPC、O&Mまで手掛け、三菱電機製の太陽光パネル、TMEIC製のPCSを選ぶことで共通している。

クレーンやドローンの高さに注意

 線下地は、安全面などの理由から、一般的な土地とは異なる利用の基準がある。基本的に無人で建物を建てる必要もない太陽光発電所は、線下地の活用として望ましい用途の1つといえる(図2)。

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図2●線下地を活用
上から玉島第1、水島、以前の玉島第1と第2の土地の様子(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 ESSは、中国電力から土地を借り、線下地に3カ所の太陽光発電所を開発した。太陽光発電所の用地となる前は、近隣で大規模なイベントが開催される際の臨時駐車場などとして活用されていた(図3)。

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図3●以前の土地の様子
上から玉島第2、水島の太陽光発電所となった土地(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 線下地ならではの制約の1つに、上空を通っている特高送電線から一定の範囲内に近づいてはいけないことがある。

 施工時のクレーン車を使う作業や、運営時のドローン(無人小型飛行体)による飛行などに影響する。

 こうした作業が必要になった時には、事前に中国電力の架線担当部署と調整した上で、特高送電線から定められた距離を保ちつつ作業する。

 クレーン車は、PCSや昇圧変圧器といった重い機器を設置する際だけでなく、パレットに載せて納入された太陽光パネル、架台を構成する鋼材をまとめて設置場所の近くに運ぶ際に使われることもある。

 こうしたクレーン車を使う作業では、上空の特高送電線に一定以上、近づかないようクレーンの上げ下げを工夫した(図4)。

図4●クレーンをあまり上げずに作業。水島太陽光発電所の施工時の様子
(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 稼働後のドローンによる空撮は、発電所全体の撮影のほか、太陽光パネルの状態を点検するための熱分布画像を撮影するために実施した。この際にも、特高送電線との距離を十分に保った範囲で飛行した。

 特高送電線の点検などでは、送電線にゴンドラのような乗り物を取り付けて作業者が乗り、作業している様子を見かけることがある。このような場合、線下地の太陽光発電所に何らかの影響が及ぶのだろうか。

 ESSによると、大きな影響はないようだ。こうした作業を行う際には、事前に一般送配電事業者(中国電力ネットワーク)から相談があり、日程などを調整することになる。数十年に一度といった作業のため、頻繁にあるものではないという。

 また、開発時に、上空の特高送電線による電磁誘導の影響を懸念する声もあった。しかし、稼働後の4年間で、太陽光発電設備や遠隔監視用の通信設備などに電磁誘導によるとみられる大きな問題が生じたことはないという。

 上空といっても、太陽光パネルの真上には、常に送電線がある。影の影響はどの程度あるのだろうか。

 まったく影がかからないわけではないが、太陽光パネルとの距離がかなり離れていることもあって、実際には大きくは影響していないようだ。

浸水を想定した高さに

 もう1つの立地上の特徴として、高潮の影響を受ける地域という点がある。気圧が低い時に高潮が重なると、浸水することがある地域という。

 そこで、3カ所とも浸水を想定して設計した(図5)。太陽光パネルや接続箱、PCS、昇圧変圧器などを、一般的な中国地方の太陽光発電所に比べて高い位置に固定している。

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図5●浸水を想定した高さに
左から水島、玉島第2、玉島第1の太陽光発電所(出所:SSG)

 太陽光パネル低部から地面までの設置高は、水島太陽光発電所が約1m65cm、玉島第1と第2発電所は約1m55cmに設定した。この高さの違いは、水島発電所の土地の方が、想定されている浸水の高さが高いことによる。

 どちらも豪雪地に近い設置高となっている。

 太陽光パネルの設置角は5度と浅くした。アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)は横向きで8段という、大きな構成にした。いずれも、できるだけ多くの枚数のパネルを並べることを重視して選択した。

 同社が別の臨海工業地域に開発・運営しているメガソーラーでは、太陽光パネルの設置角は10度を選択した。今回の線下地では、土地の広さに限りがある中で、さらにパネルを寝かせて設置枚数を増やし、事業性を高めることを狙った。

雑草は少ないが、硬球が飛んでくることも

 稼働から4年間が経過している太陽光発電所にも関わらず、雑草が少ない。除草作業はあまりせずに済んでいるという。

 臨時駐車場だった頃の画像を見ると、地面の上に雑草が生えている(図6)。

図6●玉島第1発電所建設前の雑草の様子
(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 太陽光発電所の施工時に、防草シートを敷いた上に砕石を敷き詰めた雑草対策が効果を発揮しているようだ(図7)。

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図7●防草シートと砕石を敷き詰めた
(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 玉島第2太陽光発電所では、月に1回、敷地内を点検する際、野球の硬球を見つけたことがある。それまでなかったが、2019年に3回(3球)見つかった。

 玉島第2発電所の南隣は、倉敷市の「玉島の森運動公園」となっている。発電所側に、ちょうど野球場がある(図8)。

図8●南隣が野球場の玉島第2太陽光発電所
(出所:エネルギア・ソリューション・アンド・サービス)
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 高校野球などで使われる場所のため、2019年には、一塁側やバックネット側に大きなファウルを打ち上げる選手が活躍していたのではないかと推測している。

 敷地内で硬球を見つけた3回とも、幸いにも、硬球は太陽光パネルの表面に当たっていなかったようで、カバーガラスが割れていたり打痕が見つかったパネルはなかった。

【発電所の概要】
名称玉島第1太陽光発電所
所在地岡山県倉敷市玉島乙島字新湊
敷地面積約2万43m2
太陽光パネル出力約1821.1kW
連系出力1500.0kW
年間予想発電量約172万1000kWh
(一般家庭約478世帯分の消費電力量に相当)
発電事業者エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
EPC(設計・調達・施工)エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
O&M(運用・保守)エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
太陽光パネル三菱電機製
(出力271W/枚・6732枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・3台)
太陽光パネルの設置角5度
太陽光パネル低部の設置高約1m55cm
固定価格買取制度(FIT)
上の売電単価(税抜き)
36円/kWh
売電開始時期2016年11月17日
売電先中国電力
【発電所の概要】
名称玉島第2太陽光発電所
所在地岡山県倉敷市玉島乙島字新湊
敷地面積約9100m2
太陽光パネル出力約871.5kW
連系出力750.0kW
年間予想発電量 約85万3000kWh
(一般家庭約237世帯分の消費電力量に相当)
発電事業者エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
EPCエネルギア・ソリューション・アンド・サービス
O&Mエネルギア・ソリューション・アンド・サービス
太陽光パネル三菱電機製
(出力271W/枚・3212枚)
PCSTMEIC製
(出力750kW機・1台)
太陽光パネルの設置角5度
太陽光パネル低部の設置高約1m55cm
FIT上の売電単価(税抜き)36円/kWh
売電開始時期2016年11月1日
売電先中国電力
【発電所の概要】
名称水島太陽光発電所
所在地岡山県倉敷市児島宇野津字長島新田
敷地面積約8846m2
太陽光パネル出力約819.5kW
連系出力750.0kW
年間予想発電量約76万6000kWh
(一般家庭約213世帯分の消費電力量に相当)
発電事業者エネルギア・ソリューション・アンド・サービス
EPCエネルギア・ソリューション・アンド・サービス
O&Mエネルギア・ソリューション・アンド・サービス
太陽光パネル三菱電機製
(出力271W/枚・3024枚)
PCSTMEIC製
(出力750kW機・1台)
太陽光パネルの設置角5度
太陽光パネル低部の設置高約1m65cm
FIT上の売電単価(税抜き)36円/kWh
売電開始時期2016年8月1日
売電先中国電力