今冬の豪雪にも適切に対応、宮城県大郷町のメガソーラー

タイのバンプーがトリナ・ソーラーに委託して開発

2021/02/02 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 宮城県黒川郡大郷町の山あいに、太陽光パネルの出力約28.8MW、連系出力が18.9MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「大郷太陽光発電所」がある(図1)。

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図1●大郷太陽光発電所
(出所:バンプージャパン)
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 大郷町大松沢一ノ沢の山林だった土地を活用した。2018年4月に着工し、2019年12月に運転を開始した。稼働してから1年が経った。

 発電事業者は、タイの石炭関連企業であるBanpu(バンプー)グループが出資している特定目的会社(SPC)となる。

 バンプーは、本国のタイのほか、中国、シンガポールなどで太陽光発電所を開発・運営している。日本でも、2014年に太陽光発電所の開発をはじめ、現在は稼働済み案件が11カ所・合計出力約210MW、建設中が2カ所・約30MWとなっている。

 大郷太陽光発電所は、日本法人のバンプージャパン(東京都千代田区)が「開発委託」と呼ぶ手法で手掛けた案件の1つである。

 「開発委託」は、同社の稼働済みの11カ所のうちの3カ所、建設中の2カ所が該当し、多くを占めている(関連インタビュー)。

 この5カ所のうち、大郷太陽光発電所を含む4カ所が、中国の太陽光パネル大手、トリナ・ソーラーの実質的な100%子会社で、日本国内で太陽光発電プロジェクトを手がけているトリナ・ソーラー・ジャパン・エナジー(東京都港区)が開発の業務を担当している。

 大郷太陽光発電所以外では、稼働済みの山形県川西町の約25.4MW(2020年11月稼働)、福島県矢吹町の約9.83MW(2020年12月稼働)、建設中の宮城県気仙沼市の約20MW、福島県白河市の約10MW(いずれも2021年に稼働予定)の案件が、トリナ・ソーラー・ジャパン・エナジーへの開発委託となっている。

 大郷太陽光発電所では、トリナ・ソーラー・ジャパン・エナジーがプロジェクト開発からEPC(設計・調達・施工)サービスの監理、稼働後の20年間のO&M(運用・保守)を担っている。EPCサービスは、juwi(ユーイ)自然電力(東京都文京区)も担当した。

 敷地面積は約51万3600m2で、年間発電量は、一般家庭約6504世帯の消費電力に相当する、約3138万6000kWhを見込んでいる。

 太陽光パネルは、トリナ・ソーラー製を約8万4000枚並べた。パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の定格2300kWという大容量機を採用した(図2)。

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図2●トリナ・ソーラー製の太陽光パネル、TMEIC製のPCS
(出所:バンプージャパン)
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稼働前に、台風による豪雨

 大郷太陽光発電所は、稼働する直前の2019年秋に、台風に伴う豪雨によって近隣地域が被災した。町内に流れる吉田川の堤防が決壊した。

 メガソーラーが立地している場所は、山あいにあり、幸いにも被害を免れたものの、数百人の町人が避難を強いられた。

 この状況に対して、バンプージャパンは、食料を寄付して届け、寝ずに対応していた町長を慰問するなど、すぐにできる支援に取り組んだ。こうした、地域の一員として貢献するという意識は、被災時にとどまらず心がけているという。

 発電所内は、比較的、平坦に造成されている。発電設備の施工性とメンテナンス性を高める効果も狙っている。また、治水対策として大規模な調整池を4カ所設けた(図3)。

図3●大きな調整池
(出所:バンプージャパン)
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割れたパネルの処理で独自案

 稼働後には、思わぬトラブルが生じている。数百枚もの太陽光パネルのカバーガラスが割れたという。カラスによる石落としが原因と推測された。

 カバーガラスが割れた太陽光パネルでも、問題なく発電できている発電所の例は多い。発電量の維持だけを考えれば、交換せずにそのまま使っても、大きな影響は生じないと考える発電事業者もいる。

 同社は、O&Mにおいて、予防保全を重視している。カバーガラスの割れた太陽光パネルは、ガラスが割れたことを起点に、セル(発電素子)に何らかの異常が生じる可能性もある。雨が降れば、割れた場所から発電しているセルに雨水が沁み込んで漏電の原因になりかねない。

 そこで、まず割れた太陽光パネルを交換した。それと同時に、そのままでは再度、カラスが石を落として割られてしまうので、根本的な対策として、カラスを遠ざけるような対策を模索している。

 このうち、太陽光パネルの交換では、同じ寸法、同じ出力の製品が、翌年にはなくなってしまい、入手が難しくなるという問題に直面した。これは、固定価格買取制度(FIT)で売電している国内の多くの太陽光発電事業者が共通に苦慮している。

 FITのルールでは、認定後に太陽光パネルの出力を3kWもしは3%増加した場合、その変更認定となり、買取価格が変わってしまいかねない。

 太陽光パネルメーカーの努力で、年ごとの製品性能が進化していること自体は、太陽光業界とってプラスだが、FITの認定で指定した製品を入手できなくなるという点では、リスクとなっている。

 大郷太陽光発電所の場合、なんとか寸法と出力の仕様がほぼ同じ製品を見つけて入手でき、割れた全品を交換できた(図4)。

図4●割れた太陽光パネルを交換している様子
(出所:バンプージャパン)
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 もし、こうした製品を入手できなかった場合に、どのような手段を講じるかまで見据えた対応を想定したという。

 カバーガラスが割れた太陽光パネルの処理には、さらに独自の構想がある。

 同発電所は、トリナ・ソーラー製の太陽光パネルを採用している。同社は、被災などによって破損した自社製の太陽光パネルに関し、回収とリサイクルに関与することを表明している。

 バンプージャパンでは、こうしたメーカーの姿勢を高く評価しつつも、大郷太陽光発電所のような「カバーガラスが割れているのみ」という状況の場合、損傷しているガラスのみ交換できるような対策が理想と考え、パネルすべてを分解・裁断するようなリサイクルの手法にゆだねることを避けている。

 「割れてしまったガラスだけはがして取り換え、そのほかの部分は壊さずにそのまま使えるような手法が理想。再エネと並行して、サーキュラーエコノミー(循環型経済)も重視している」(バンプージャパンの志摩渉社長)。

 太陽光パネルの廃棄やリサイクルは模索の段階にある。こうした新たな視点を加えて、より良い処理の仕組みを確立できることがのぞましい。

今冬の大雪

 2020年12月からの冬の積雪期、これまでとは異なる豪雪に見舞われている地域がでてきている。大郷太陽光発電所も、その1つとなっている。

 ただし、本格的な降雪を前に、今冬は積雪量が多いと予想できた。そこで、事前から対策を講じた。重機を使った除雪作業を組み込んだ(図5)。

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図5●今冬は除雪を想定し、実行している
(出所:バンプージャパン)
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 アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)間を中心に、多く積雪しそうな日には、地面に積もった雪を重機で除雪している。これが功を奏し、比較的発電ロスを抑えられている。平坦に造成していることで、この作業を追加しやすい利点もあった。

●発電所の概要
発電所名大郷太陽光発電所
所在地宮城県黒川郡大郷町大松沢一ノ沢
敷地面積約51万3600m2
太陽光パネル出力約28.8MW
連系出力18.9MW
年間発電量約3138万6000kWh
(一般家庭約6504世帯の消費電力に相当)
発電事業者ウッドレイク合同会社
(バンプーグループが出資する特定目的会社)
開発トリナ・ソーラー・ジャパン・エナジー(東京都港区)
EPC(設計・調達・施工)juwi自然電力(東京都文京区)
O&M(運用・保守)トリナ・ソーラー・ジャパン・エナジーとjuwi自然電力オペレーション(東京都文京区)による共同事業体
太陽光パネルトリナ・ソーラー製
(出力約340W/枚・約8万4000枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力2300kW機・8台)
太陽光パネルの設置角15度
太陽光パネル低部の高さ約70cm
着工2018年4月27日
売電開始2019年12月13日
買取価格36円/kWh(税抜き)
売電先東北電力グループ