探訪

津の51MWに見る、オリックスの「デジタル・メガソーラー管理術」(page 3)

作業の工夫で年1億円の増収、さらに1~2億円増の改善余地

2021/04/13 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
印刷用ページ
 ドローン点検は、OREMが担当した。同社によるドローン点検は、単に太陽光パネルの熱分布の画像を空撮するだけにとどまらず、その後のデータの処理や管理に特徴がある。人間の健康診断でいうCTスキャンに相当するような「精密な診断」を実現している。

 画面上では、地図と同じような、真上から見た太陽光パネルが並んでいるような画像を表示する。太陽光パネル1枚ごとに地番のように番号を振って、熱分布の異常の有無や、その異常の種類の分類と、それによる発電ロスの状況、異常の状態の深刻度などを、パネルの配置図上にひと目でわかるように示すことができる(図4)。

クリックすると拡大した画像が開きます
クリックすると拡大した画像が開きます
図4●津の発電所において、雑草の影によって過熱していた太陽光パネルの例
図4●津の発電所において、雑草の影によって過熱していた太陽光パネルの例
このようにパネルごとに地番を振って管理できる (出所:オリックス、OREM)
クリックすると拡大した画像が開きます

 ドローン点検を年に1回などと定期的に繰り返していけば、その履歴も蓄積され、パネルごとの前年の履歴などもすぐに参照できる。これによって、発見できた異常に対する措置が適切だったのか、といった評価も容易になる。

 こうした精密な点検と修繕は、火力発電など既存の電源では当たり前の手法だが、太陽光発電では、この点に問題意識を持ち、かつ、実行力の伴う一部の発電事業者しか取り組んでいない。

 OREMでは、ベルギーのソフトウェア企業であるSITEMARK(サイトマーク)と提携し、同社のソフトウェアや技術をドローン点検に活用している。こうしたドローン点検結果の「デジタル化」と呼ぶ分析や管理を実現している(関連コラム:「15MWを10日で完了」が標準、オリックスO&M子会社のドローン点検)。

 発電事業者、O&M担当企業、その他さまざまな関係者などの間で、太陽光パネルの状態を同じツール上で共有できるのも利点となっている。「言語、風習、会社の違いなどを超えて、現状の状態を共有できるのがデジタルの良いところ」としている。

 関係者の間で、状況の認識の共有だけでなく、発見できた異常への対処法の検討、予防保全に向けたO&Mの作業などを検討しやすくなった。異常の状況によって推定される売電ロスの影響度まで表示されているため、対処策の費用対効果も検討しやすい。

 こうしてその都度、空撮画像を発電所の逸失利益を減らす手がかりとするとともに、翌年の空撮画像からは、前年のドローン点検で発見した異常箇所のうち、修繕した場所が、適切に改善できているかどうかも確認できる。

 オリックスにとっては、O&Mが適切に実施されているかどうかが「見える化」できるツールともいえるが、自社の開発・運営方針が適切かどうか、自己採点することにもなり、自らを改革していくようなツールともいえる。

 このような効果も有効で、自社で確立したやり方を漫然と繰り返すような惰性に陥らず、常に改善、改良の視点を忘れずに持続させることも、導入した大きな狙いの一つだった。「太陽光発電に限らず、この姿勢を継続できないと、長期的に良い事業にすることは難しい」という危機感からだという。

 全体を俯瞰できつつも太陽光パネルごとにも表示できるといった機能など、SITEMARKに助言し、同社が受け入れて改善した部分もあるという。

  • 記事ランキング