津の51MWに見る、オリックスの「デジタル・メガソーラー管理術」

作業の工夫で年1億円の増収、さらに1~2億円増の改善余地

2021/04/13 06:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 三重県津市の山あいに、出力約51MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「オリックス51M津メガソーラー発電所」がある(図1)。2016年5月に稼働してから、約5年が経過している。

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図1●ドローン点検を実施した「オリックス51M津メガソーラー発電所」
図1●ドローン点検を実施した「オリックス51M津メガソーラー発電所」
(出所:日経BP、下はオリックス)
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 津市白山町にあるゴルフ場の跡地を用地とし、元の傾斜や起伏を生かしたまま、約112万5000m2の土地に、20万4120枚の太陽光パネルを並べた(稼働直後の関連コラム1:「1ホールで1MW」の常識を超えた、三重最大の「18ホール・51MW」メガソーラー、同コラム2:「稼働1年以上前から作業」、津の51MWに見るメガソーラーの竣工検査)。

 太陽光パネルの出力は約51.03MW、連系出力は42MWとなっている。

 年間発電量は約5726万6000kWh(初年度)を見込み、固定価格買取制度(FIT)による売電単価は36円/kWh(税抜き)で、中部電力に売電している。

 発電事業者は、オリックスが出資している特定目的会社(SPC)の「ORソーラー・エイト」となる。

 太陽光パネルは東芝製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 O&M(運用・保守)サービスは、中部電力グループの電力設備工事会社であるトーエネックが担当している。同社は設計・施工も担当した。

 このメガソーラーにおいて2020年10月、ドローン(無人小型飛行体)を使った太陽光パネルの点検が実施された。

 ドローンに搭載した赤外線カメラで上空から撮影した熱分布の画像から、平常に比べて温度の高い過熱している太陽光パネルやセル(発電素子)を発見する。

 オリックスでは、開発した多くのメガソーラーが売電を開始し、運転期間が長くなるにつれ、運用のあり方や手法を変えてきた。

 売電ロスを最小化して投資効率を最大化するという目的は変わらない。そこは同じでも、稼働後1年と5年、10年、15年とでは、その時点で最適なO&Mは変わっていくと考えている。

 変えないのは、売電ロスや不具合の発生を未然に防ぐ予防保全の考え方で、これは常に重要としている。「発電さえすればよいのではなく、設備や運営に関し、一定の基準に沿ったメガソーラーを作り上げ、運用したい」と強調している。

 このような中、2018年には、メガソーラーのアセットマネジメント(AM)とO&Mを担う子会社、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント(OREM:東京都江東区)を設立し、AMの観点からみた最適なO&Mの手法を検討して順次、導入している。

 O&Mについては、標準的な仕様を定め、それに基づいて発電所の状態を把握・評価したり、不具合やその予兆などが見つかった時には、その状態に応じて適切に対処したりしている(関連コラム:予防保全を徹底、理想は「変動要因は気象のみ」、オリックスのO&M子会社)。

 津のゴルフコース跡のメガソーラーの場合、O&Mはトーエネックが担当している。そこで、オリックスでは、トーエネックと協議してO&M作業の内容や計画などを決めている。

 このサイトでは、OREMで確立した新たなO&M手法のうち、まず「デジタル化」を除く、人手による作業や実施の基準といった部分を導入していったという。

 トーエネックによる作業を評価しており、こうしたOREM流の作業の導入によって、メガソーラーのPR値(Performance Ratio:システム出力係数)が4~5%改善した(図2)。

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図2●作業の改善で年間の売電収入が約1億円増えた
図2●作業の改善で年間の売電収入が約1億円増えた
発電所内の様子(出所:日経BP)
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 それまでは年間発電量の初年度予想が約5700万kWh、売電単価36円なので、年間の売電額は約20億円で推移していた。このメガソーラーにおける4~5%のPR値の改善は、年間売電額が約1億円増えるほどの効果になる。

 その効果が得られた状態で、さらに、本当に発電所がベストな状態にあるのかどうか、確認するために実施したのが、今回のドローン点検だった(図3)。津のメガソーラーでは、初めてのドローン点検となった。

図3●2020年10月にドローンで空撮した
図3●2020年10月にドローンで空撮した
(出所:日経BP)
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 ドローン点検は、OREMが担当した。同社によるドローン点検は、単に太陽光パネルの熱分布の画像を空撮するだけにとどまらず、その後のデータの処理や管理に特徴がある。人間の健康診断でいうCTスキャンに相当するような「精密な診断」を実現している。

 画面上では、地図と同じような、真上から見た太陽光パネルが並んでいるような画像を表示する。太陽光パネル1枚ごとに地番のように番号を振って、熱分布の異常の有無や、その異常の種類の分類と、それによる発電ロスの状況、異常の状態の深刻度などを、パネルの配置図上にひと目でわかるように示すことができる(図4)。

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図4●津の発電所において、雑草の影によって過熱していた太陽光パネルの例
図4●津の発電所において、雑草の影によって過熱していた太陽光パネルの例
このようにパネルごとに地番を振って管理できる (出所:オリックス、OREM)
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 ドローン点検を年に1回などと定期的に繰り返していけば、その履歴も蓄積され、パネルごとの前年の履歴などもすぐに参照できる。これによって、発見できた異常に対する措置が適切だったのか、といった評価も容易になる。

 こうした精密な点検と修繕は、火力発電など既存の電源では当たり前の手法だが、太陽光発電では、この点に問題意識を持ち、かつ、実行力の伴う一部の発電事業者しか取り組んでいない。

 OREMでは、ベルギーのソフトウェア企業であるSITEMARK(サイトマーク)と提携し、同社のソフトウェアや技術をドローン点検に活用している。こうしたドローン点検結果の「デジタル化」と呼ぶ分析や管理を実現している(関連コラム:「15MWを10日で完了」が標準、オリックスO&M子会社のドローン点検)。

 発電事業者、O&M担当企業、その他さまざまな関係者などの間で、太陽光パネルの状態を同じツール上で共有できるのも利点となっている。「言語、風習、会社の違いなどを超えて、現状の状態を共有できるのがデジタルの良いところ」としている。

 関係者の間で、状況の認識の共有だけでなく、発見できた異常への対処法の検討、予防保全に向けたO&Mの作業などを検討しやすくなった。異常の状況によって推定される売電ロスの影響度まで表示されているため、対処策の費用対効果も検討しやすい。

 こうしてその都度、空撮画像を発電所の逸失利益を減らす手がかりとするとともに、翌年の空撮画像からは、前年のドローン点検で発見した異常箇所のうち、修繕した場所が、適切に改善できているかどうかも確認できる。

 オリックスにとっては、O&Mが適切に実施されているかどうかが「見える化」できるツールともいえるが、自社の開発・運営方針が適切かどうか、自己採点することにもなり、自らを改革していくようなツールともいえる。

 このような効果も有効で、自社で確立したやり方を漫然と繰り返すような惰性に陥らず、常に改善、改良の視点を忘れずに持続させることも、導入した大きな狙いの一つだった。「太陽光発電に限らず、この姿勢を継続できないと、長期的に良い事業にすることは難しい」という危機感からだという。

 全体を俯瞰できつつも太陽光パネルごとにも表示できるといった機能など、SITEMARKに助言し、同社が受け入れて改善した部分もあるという。

 ドローン点検の結果、津のメガソーラーでは、全体的に熱分布の異常が多く生じていたことがわかった。さらに、異常を生じている場所は、特定の場所に固まらずに点在していた(図5~6)。

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図5●ドローン点検の結果
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図5●ドローン点検の結果
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図5●ドローン点検の結果
過熱していた場所は全体に点在していた。下は過熱の種類や原因、深刻度など(出所:オリックス、OREM)
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図6●部分的に拡大してみた例
図6●部分的に拡大してみた例
(出所:オリックス、OREM)
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 雑草などの影や、太陽光パネルの汚れといった、除草や洗浄の作業によって解消されることを見込める過熱を除いても、例えば、「ストリング異常が約2600枚」など、電気的に何らかの作業を講じる必要がある種類の異常による過熱が多かった。

 こうした「影や汚れによる過熱」分を除いて結果を見る(図7)、というような操作も簡単にできる。

図7●草木の影、汚れなどの影響による過熱を除いて表示した例。こうした操作も簡単にできる
図7●草木の影、汚れなどの影響による過熱を除いて表示した例。こうした操作も簡単にできる
(出所:オリックス、OREM)
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 このドローン空撮の結果に対して、具体的な評価や対処法の検討は今後、進めていくものの、これまでの経験から、パッと見た印象でもPR値がさらに5~6%は上がる余地があると感じているという。

 もしその規模で改善が実現すると、年間の売電収入がさらに1~2億円増えることを見込める。このため、例えば、O&Mサービス企業に1000万~2000万円の臨時費用を追加して、過熱を解消するための具体的な作業を委託するといったことも、費用対効果を評価できることですぐに判断できる。

 こうした追加投資に対する判断も、オリックスグループでは当たり前の状況になってきたという。「デジタル化」によって標準化・定量化できたことが大きく、定量化できていない企業や発電所では、投資判断には至らないのではないかとみている。


●発電所の概要
発電所名オリックス51M津メガソーラー発電所
所在地三重県津市白山町三ヶ野3209ほか
敷地面積約112万5000m2
発電事業者ORソーラー・エイト合同会社
(オリックスによる特定目的会社)
太陽光パネル出力51.030MW
連系出力42MW
初年度年間発電量約5726万6000kWh
(一般家庭約1万5900世帯の消費電力に相当)
設計・施工トーエネック
太陽光パネル東芝製
(20万4120枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
O&M(運用・保守)トーエネック
運転開始日2016年5月10日
売電価格36円/kWh(税抜き)
売電先中部電力