千葉・山武の発電所にみる、インフラファンドに組み込まれたメガソーラー

予防保全やリスク回避を重視、「特定卸供給」にも積極的

2021/05/18 18:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 千葉県の東部、山武市(さんむし)に、隣接する2つのメガソーラー(大規模太陽光発電所)が稼働している。連系出力の合計が3.98MW、太陽光パネルの合計出力が約5.059MWとなる「LS千葉山武東・西発電所」である(図1)。

図1●LS千葉山武東・西発電所
図1●LS千葉山武東・西発電所
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 いずれも連系出力は1.99MWで、パネル出力は「山武東」が約2.584MW、「山武西」が約2.475MWとなっている。

 マンションなどの開発を手掛けるタカラレーベンのインフラ投資法人である、タカラレーベン・インフラ投資法人(東京都千代田区)に組み込まれ、タカラアセットマネジメント(東京都千代田区)が運用している。

 タカラレーベン・インフラ投資法人は2016年6月、東京証券取引所のインフラファンド市場に第1号の銘柄として上場した。

 インフラファンド市場は、再エネ発電所だけでなくさまざまな社会インフラを想定して立ち上げられ、先例となった不動産投資信託の上場市場であるJ-REIT(J-real estate investment trust:Jリート)と同様、資産の所有と運営を分ける仕組みが採用されている。そこで、インフラファンド市場に上場している投資法人は、太陽光発電所の施設だけを所有し、賃貸収入で成り立つ事業の仕組みとなっている。

 タカラレーベン・インフラ投資法人の場合、所有する太陽光発電所の運用はタカラアセットマネジメントが担っている。太陽光発電所は、発電事業者であるタカラレーベンに貸し、その賃料が収入となる(図2)。

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図2●所有する太陽光発電所を貸し、賃借料が収入となる
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図2●所有する太陽光発電所を貸し、賃借料が収入となる
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図2●所有する太陽光発電所を貸し、賃借料が収入となる
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人「第10期 資産運用報告」)

 賃料は、大部分が基本賃料(タカラレーベン・インフラ投資法人では「最低保証賃料」と称している)、残りが実績連動賃料という構成となっている。これによって、売電収入の上振れ分も事実上、取り込める。これは他のインフラ投資法人も同様だが、基本賃料と実績連動賃料の比率や、発電量予測値の超過確率との兼ね合いなどにインフラ投資法人ごとの違いがある。

 この賃料設定によって、万が一、何らかの災害で被災したり盗難に遭うといった理由で売電できない時期が生じた場合でも、大部分を占める基本賃料は入り続ける。

 実際に2020年春、タカラレーベン・インフラ投資法人が所有している静岡県御前崎市の太陽光発電所が盗難の被害に遭い、約4カ月間、売電が停止した(関連コラム)。その間、発電所の売電収入はゼロとなったものの、タカラアセットマネジメントが担当している発電所の資産運用としては、この間も基本賃料は入り続け、収入はゼロにならなかった。

 投資法人による投資対象としての太陽光発電所の利点について、タカラアセットマネジメントの髙橋衛社長は、「Jリートで取り扱う一般的なビルなどの不動産では、空室や賃料の上下動のリスクが小さくない。固定価格買取制度(FIT)で全量を定額で売電できる太陽光発電所には、このリスクがなく安定している利点が大きい。天候による発電量の変動はあるが、これも年間でみれば予想発電量に対して一定の変動幅に収まり、突発的に大きく上下動することがほとんどない。この中で、変動部分の賃料で上振れ分も取り込むことができるため、さらに安定したトップラインを維持でき、一般的な不動産にはない安定性の利点が魅力」としている。

年20~40MW以上のペースで拡大

 タカラレーベン・インフラ投資法人は、第1号の上場とあって、年2回の配当をすでに9回実施した。上場当初の太陽光発電所は10カ所・パネル出力が合計約17.8MW、資産規模が約78億円だった。上場後、増資による資金調達で、継続的に新たな太陽光発電所を取得し、現在は38カ所・パネル出力が合計約131MW、資産規模が約515億円まで拡大してきた(図3)。

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図3●規模は今後も一定のペースで拡大
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図3●規模は今後も一定のペースで拡大
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図3●規模は今後も一定のペースで拡大
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人「第10期 資産運用報告」)

 「資産の拡大ペースは、パネル出力ベースで少なくとも毎年20~40MW増えていくイメージで推移してきており、今後もこのペースで増えていく見込み」(タカラアセットマネジメントの髙橋衛社長)としている。

 インフラファンド市場に上場している7銘柄の中で、タカラレーベン・インフラ投資法人ならではの強みとして、マンション開発で実績のあるスポンサーによる、良質な太陽光発電所の開発能力を挙げている。

 スポンサーであるタカラレーベンは、今後も太陽光を積極的に開発・取得する方針で、その案件には、タカラレーベン・インフラ投資法人が優先的売買交渉権を持つ。

 タカラレーベン・インフラ投資法人が上場して以降、タカラレーベンが開発・取得した太陽光の中で、インフラ投資法人に組み込めなかった発電所はないという。投資法人に組み込むことを前提に、開発・取得していることが背景にある。

 当初は、タカラレーベンが開発・取得しようとしている案件に対して、投資の尺度から、インフラ投資法人側から意見することもあったものの、現在では個別の案件で特別に意見する必要がないほど、タカラレーベンとの意思疎通が進んでいるという。

 屋根上や水上、営農型といった、20年間の使用権などの確保が法的に難しいとされるタイプの太陽光は、インフラ投資法人への組み込みは難しいと言われる。

 タカラレーベンの場合も、開発や取得を検討したことはあるが、やはり20年間稼働できない可能性がある法的なリスクから、実現しなかったという。

 また、新電力への売電に積極的なことも、現状では、他のインフラ投資法人には見られない特徴となっている。タカラレーベン・インフラ投資法人が所有する2カ所の太陽光が、みんな電力への「特定卸供給」に活用されている。

災害リスクにどう向き合うか

 インフラ投資法人の投資対象としての太陽光発電所の難しさとして、ハザード(危害要因)のリスクがあるという。近年は、数十年に一度とされる強風や豪雨を伴う台風などが頻繁に上陸、通過している。

 その地域で見込まれる強風や豪雨に十分に耐える設計としていても、それをはるかに超えるレベルの強風や豪雨に見舞われた場合、発電設備が損壊したり、立地している土地が崩れたりする事態も起こり得る。

 インフラ投資法人でも、デューデリジェンス(投資対象の価値やリスクの調査)による評価の及ばない領域となる。損害保険で一義的には対応できるが、こうしたリスクへの向き合い方が問われるという。

 タカラレーベン・インフラ投資法人の保有案件で、こうした被災を経験した発電所がある。福島県矢祭町にある連系出力1.22MW、パネル出力約1.33MWの「LS福島矢祭発電所」で(図4)、2019年夏から秋の台風にともなう、数十年に一度というレベルの豪雨によって、斜面が崩れてしまった。

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図4●LS福島矢祭発電所
図4●LS福島矢祭発電所
下の画像が復旧後。斜面で薄緑色と緑色にみえる部分が補強して復旧した場所(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 当初の斜面も、この地域で想定される豪雨に十分に耐え得る設計だったが、想定外のレベルの豪雨には持ちこたえられなかった。

 この斜面は、以前と同じように復旧するのではなく、より強い構造に変えて復旧した。想定外の豪雨が各地で頻発していることから、この地域でもまた同じレベルの豪雨に見舞われる恐れがあると考え、復旧に反映させた。

 また、この年の台風では、千葉県で強風による被害が相次ぎ、東京電力パワーグリッドの特別高圧送電線の鉄塔が倒れるなど、広い地域で停電が続いた。

 タカラレーベン・インフラ投資法人が千葉県内で所有する太陽光では、フェンスが一部倒れるといった被害はあったものの、発電設備が大きく損壊するような被害はなかった。

 山武市のメガソーラーでも、広域停電の影響を受け、約1週間売電できなかった。

 山武市のメガソーラーは(図5)、EPC (設計・調達・施工)サービスは東芝プラントシステム、O&M(運用・保守)は、東洋ビルメンテナンスが担当している。太陽光パネルはソーラーフロンティア製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用している。

図5●LS千葉山武東・西発電所の敷地内の様子
図5●LS千葉山武東・西発電所の敷地内の様子
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 タカラレーベン・インフラ投資法人の所有案件では、山武市のメガソーラーと同じように、O&Mを東洋ビルメンテナンスや、関電工の子会社であるエナジーO&M(東京都港区)が担当している発電所が多い。

 これは、タカラレーベングループのO&Mの選定基準と関連し、O&Mの品質とともに、多くの発電所のO&Mを委託することによるコスト削減も目的という。

 O&Mでは、例えば、除草を重視している。上場しているインフラ投資法人の保有案件であり、近隣地域にも手入れの行き届いた発電所であることを示す必要があると考え、雑草が繁茂するような状況にならないよう、比較的、頻繁に除草している。

 PCSについても、予防保全を重視し、メーカーが推奨する長期の修繕計画に沿って運用している。こうした重要な設備については、Jリートの銘柄に組み込んだビルなどと同様の方針で臨んでいるという。

豪雪、農業用ため池、出力抑制

 2020~21年にかけての冬は、東北地方で豪雪の被害が相次いだ。タカラレーベン・インフラ投資法人では、青森県平内町に連系出力・パネル出力ともに1.82MWの「LS青森平内発電所」を所有している(図6)。

図6●LS青森平内発電所
図6●LS青森平内発電所
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 この発電所では、豪雪に見舞われることはなく、積雪は例年通りだった。太陽光パネル低部の設置高は1700mm、設置角は30度と積雪に備えた設計で、パネルに積雪しても、その後、半日程度で積もった雪は滑り落ちるという。

 ユニークな案件として、宮城県松島町にある連系出力12MW、パネル出力約14.25MWの「LS宮城松島発電所」がある(図7)。

図7●LS宮城松島発電所
図7●LS宮城松島発電所
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 地域の農業用ため池が敷地内にある。このため池は、引き続き農業用水として使う。さらに、メガソーラー内の調整池の役割も加えるために、池の規模を約1.8倍に拡大した上、より強固な防災機能を加えた。

 農業用水として使うため、これまでのため池時代と同じように、貯まった雨水はすぐに敷地外に流すのではなく、ある程度の期間、貯めておき、泥などを池の底に沈殿させて上澄みのきれいな水を敷地外に流していく。

 また、九州では出力抑制の回数と頻度が増している。タカラレーベン・インフラ投資法人では、鹿児島県霧島市にある連系出力1.99MW、パネル出力約2.01MWの「LS霧島国分発電所」と、長崎県諫早市にある連系出力1.5984MW、パネル出力約2.02MWの「LS長崎諫早発電所」の2カ所を九州で所有している(図8)。

図8●「LS霧島国分発電所」と「LS長崎諫早発電所」
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図8●「LS霧島国分発電所」と「LS長崎諫早発電所」
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図8●「LS霧島国分発電所」と「LS長崎諫早発電所」
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)

 現在は、2カ所とも、ほぼ連日のように出力抑制の対象になっているという。

 ただし、同じ地域で、他の「30日ルール」対象の太陽光発電所に比べると、出力が抑制されている時間は相対的に短い。九電が直接、制御するリアルタイム式の遠隔制御システムを導入しているためである。

 発電事業者が手動で制御する場合には、9~16時といったほぼ1日の出力抑制が課される一方、リアルタイム制御の設備を導入し、九電が直接、遠隔制御する場合には、時間帯の制御に変更される。

 タカラレーベン・インフラ投資法人の2カ所では、ほぼ11~13時、または11~14時といった時間帯のみ出力を抑制されている状況という。

 霧島国分の発電所では、火山灰が降り積もるリスクを想定し、太陽光パネルの洗浄費用を確保しているが、いまのところ洗浄するほどの降灰には一度も見舞われていない。

 秋の一時期に、風向きが通常とは逆方向に向くなど、特殊な状況で、多く降灰する恐れがあるという。こうしたリスクの実際の状況は、取得時には見えにくいが、念入りに対応を準備しておくとしている。

 火山灰がうっすらと積もったことはある。それでも、週に一度程度は雨が降り、その時にほぼ流れ落ちている。

 洗浄については、発電量をより増やせる可能性があり関心はあるものの、現状では太陽光パネルメーカーの保証が外れてしまうリスクがあることと、費用対効果が検証し切れていないことなどから実施していない。

●発電所の概要
発電所名LS千葉山武東・西発電所
所在地千葉県山武市椎崎
敷地面積合計約13万8762m2
発電事業者タカラレーベン
連系出力東:1990kW、西:1990kW
太陽光パネル出力東:2584.00kW、2475.20kW
年間予想発電量東:3132.28MWh、西:3007.94MWh
EPC(設計・調達・施工)サービス東芝プラントシステム
O&M(運用・保守)サービス東洋ビルメンテナンス
太陽光パネルソーラーフロンティア製
(出力170W/枚品・東:15,200枚、西:14,560枚)、
パワーコンディショナー
(PCS)
東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(東・西ともに定格出力1000kW機1台、990kW機・1台ずつ)
売電開始日2017年3月29日
固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先東京電力パワーグリッド