「山間メガソーラー」における先端的O&M、久米南町サイトの5年

斜面でもドローン活用、クラスター断線を効率的に特定

2021/05/26 05:00
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

ゴルフ場跡活用の先駆け

 固定価格買取制度(FIT)によって、国内に数十MW規模のメガソーラー(大規模太陽光発電所)が次々と建設されている。その背景には、1990年代初頭にバブル経済が崩壊したことなどで、国内にゴルフ場などリゾート開発の跡地が多くあったこともある。

 岡山県久米南町に稼働している「パシフィコ・エナジー久米南メガソーラー発電所」は、その先駆けといえる。ゴルフ場の開発跡地である約118haもの敷地に、約11万枚の太陽光パネルを並べた。太陽光パネルの出力は約32MW、連系出力は約26MWに達する。2014年6月に着工し、2016年3月に運転を開始した(図1)。

図1●パシフィコ・エナジー久米南メガソーラー発電所
(出所:日経BP)
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 事業開発から、稼働後のアセットマネジメントは、パシフィコ・エナジー(東京都港区)が担当している。事業主体のSPC(特別目的会社)に対し、三菱東京UFJ銀行と中国銀行によるプロジェクトファイナンスを組成し、110億円の融資を受けた。

 太陽光パネルは中国・インリー・グリーンエナジー製(300W/枚)、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(630kW機)を設置した(関連記事)。

「毎日、現場を見る」を実践

 「久米南メガソーラー発電所」が画期的だったのは、山間のゴルフ場開発跡地という、平地に比べ相対的に開発リスクの高い立地のメガソーラー事業に対し、プロジェクトファイナンスの組成に成功したことだ。

 その後、パシフィコ・エナジーは、久米南サイトで蓄積したノウハウを生かし、国内最大規模となるパネル出力257MWの「パシフィコ・エナジー作東メガソーラー発電所」など、山間のゴルフ場跡地を主体に巨大なメガソーラーを次々と開発、合計で600MWを超える案件を稼働させている(関連記事)。

 久米南サイトが「山間メガソーラー」の先駆けであることは、山間立地の太陽光をいかに運営していくか、という前例のない運営業務に対しても、パイオニアとして取り組むことになる(図2)。

図2●国内の山間メガソーラーの先駆けとなった
(出所:日経BP)
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 この難しい課題を担っているのが、旭電業(岡山市)だ。同社は、岡山県内を中心に電気工事の設計・施工を手掛け、FIT開始を機に、太陽光発電の施工や運営、O&M(運営・保守)にも積極的に乗り出している。パシフィコ・エナジーの開発したほかのメガソーラーと自社サイトなど合わせるとO&M事業の規模は500MWを超える(関連記事)。

 旭電業の江田健治執行役員・保安部長は、「FITスタート当初、太陽光発電所はメンテフリーともいわれたが、まったくそうではないし、遠隔監視さえしていればよい、というものでもない」と言う。「毎日、少しずつでも現場を見ることが重要で、サイトでの地道な作業をきっちり行うことが、安定した運用につながる」と話す。

ドローンでパネル検査を効率化

 旭電業では、O&Mを受注したサイトには、太陽光パネル10万枚で社員2人・外部2人を目安に人員を配置しており、パネル10万7520枚の久米南サイトでも基本的に4人の体制でO&Mを担っている。一方で、「最新技術を積極的に活用することで、O&Mの作業効率を高めていく方針で、その1つがドローン(無人小型飛行体)の活用」と言う。

 パシフィコ・エナジーと旭電業は、予防保全の観点から年に1回は、検査によって「クラスター断線」の生じている太陽光パネルを特定し、早期に交換することにしてきた。

 クラスター断線とは、はんだ不良などで、電極の抵抗が増してバイパスダイオードが作動し、太陽電池セル(発電素子)の3分の1を迂回して電流が流れている状態を指す。本来パネルの持っている発電能力の3分の2しか出力していないことになる。発電ロスとともにバックシートが過熱することもあり、安全上の観点からも早期の交換が望ましい。

 ただ、クラスター断線の起きたパネルを特定するのは手間がかかるのが課題だった。具体的には、太陽光パネル点検装置「ソラメンテ」を使う。ソラメンテには「ストリングチェッカー」と「パネルチェッカー」という2つの点検装置があり、まず、「ストリングチェッカー」で、接続箱からストリング(パネルの直流回路)に微弱な検出用信号を流し、開放電圧と抵抗値を測定する。これにより、まず不良パネルのあるストリングを特定できる。

 次に「パネルチェッカー」を使って、ストリング内の故障パネルを特定する。パネル表面のバスバー(線状の電極)に、棒の先に取り付けたセンサーをあてることで、電流の磁界を感知し、電流の有無を判断できる(図3)。

図3●ソラメンテによるパネル検査の様子
(出所:パシフィコ・エナジー)
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斜面でもドローン空撮は可能

 旭電業は、久米南サイトなどで、ドローンを使ってこの点検作業を効率化できないか、試行的に取り組んできた。ドローンに赤外線カメラを取り付け、アレイ(パネルの設置単位)を空撮すると熱分布画像が得られる。それを見ると、クラスター断線の起きているパネルは3分の1単位で色調が異なるので、それと特定できる。

 ただ、山間メガソーラーでドローンを活用する場合、斜面に設置したパネルと常に等間隔で飛行させる必要があり、平地のメガソーラーに比べて安定運用の難易度が上がる。そこで、旭電業では、ドローンを購入して、独自に運用することで、どの程度の精度でクラスター断線を見つけられるか、試してきた(図4)。

図4●斜面でもドローンによる空撮は可能
(出所:日経BP)
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 その結果、「思った以上にクラスター断線と思われるパネルが発見できたため、本格的にドローンを活用することにした」と、江田保安部長は言う。とはいえ、ドローン画像だけではパネルメーカーは、交換に応じないという。そこで、まずドローンでクラスター断線を見つけ、そのパネルに絞ってソラメンテのパネルチェッカーで検査して電流値を測定・記録し、その数値を基にメーカーに交換を求める、という手順にした。

 久米南サイトでは、これまで年間で数十枚のクラスター断線となったパネルが見つかっているという。数十枚というと多いようにも感じるが、パネル設置枚数は10万枚を超えるため、不良率は0.1%に満たない。クラスター断線のパネルは、カラスの石落としなどで損傷したほかの不具合パネルとともに3カ月に1回、まとめて交換している。

斜面の浸食対策に防水シート

 山間を造成したメガソーラーで運転開始後に悩まされることが多いトラブルが、雨水による斜面の「ガリー浸食」だ。ガリー浸食とは、降水が集まって流れることで斜面が削られ溝ができる現象で、放置しておくと降雨の度に深くなり、大きな溝になってしまう。

 「久米南メガソーラー発電所」は、ゴルフ場の開発跡地のうち、比較的平坦なフェアウエイを中心にパネルを設置し、コース内の林は残置森林として残した。とはいえ、パネルを多く敷くために同じホール内で、掘削土と盛り土を同量にしつつ、ホール内の勾配を15%以内に抑える造成工事を行って、緩やかな斜面を広げた。その結果、掘削して盛り土する量は、全体で約50万m3に及ぶ大規模な造成工事になった。その際、雨水の流れを考慮し、新たに暗渠排水施設も増設した。

 ただ、こうした新たな法面を作る造成では、完成後、緑化が進み地盤が固まるまでは、予想外の雨水の流れによって、自然の「水道(みずみち)」ができ、それがガリー浸食に進むことも多い。久米南サイトでも、こうしたガリー浸食の兆候が現れ始めた箇所があったため、防水シートを敷いて浸食を防いだり、水道の途中に石を並べて防水シートで覆って堰を作り、水の流れを排水施設に誘導するなどの対策を実施した(図5)(図6)。

図5●地表面の浸水を防ぐために防水シートを施工した
(出所:日経BP)
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図6●斜面に堰を施工して表面流水を排水施設に誘導
(出所:日経BP)
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防草シートは実証に留める

 旭電業では、O&Mサービスに除草対策も含めている。加えて、同社では、除草作業を外部に委託せずに社員自らが行っている。防草手法としては、除草剤を使わずに、機械除草を基本にしている。

 機械除草には、大きく3タイプがある。肩にかけたり背負ったりして作業者が歩行しながら刈っていく「刈払機」のほか、人が乗って運転しながら刈り取る「乗用式(搭乗式)」、そして、タイヤなどで推進力を持つ「自走式」だ。

 パネル下の草を刈る場合、一般的な刈払機を使うと、アレイを避けるため作業者が腰をかがめながら歩く必要があり、作業性や安全性が損なわれる。そこで、旭電業では自走式の草刈機を採用している。ハンドルを左右に傾けたり、刈り取り部を左右に広げたりすることで、効果的にパネル下の草を刈り取れる(図7)。

図7●自走式の除草機でアレイの下を除草。写真は「美作武蔵メガソーラー発電所」。同発電所は1本脚架台のため、機械除草の効率が高い
(出所:日経BP)
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 久米南サイトでも、主に自走式を使い、同タイプが適用しにくい場所では、刈払機を使うことで、作業者の作業性と効率性を高めている。1つのエリアにつき、春先と秋の年2回程度は、除草しているという。

 ただ、久米南サイトでは、自走式が使いにくい架台構造になっている。山間メガソーラーでは南北方向に1本の杭基礎を採用することも多い。斜面設置でも同じ設置角に揃えやすいからだ。しかし、久米南サイトでは、南北方向に2本の杭基礎を採用した。

 杭基礎が南北1本の場合、パネル下が東西に細長い空間になり、自走式草刈り機で一気に刈り取れるのに対し、南北2本脚の場合、一定の間隔で手前に杭基礎があるので、それが障害になって、機械除草の作業効率が落ちる。

防草シートの効果はあったが…

 そこで久米南サイトでは、2017年から一部のパネル下に防草シートを施工して、その効果を検証している。ダイオ化成(東京都中央区)製を採用した。

 防草シートの種類には、縦糸と横糸を編んだ「織布タイプ」と、網目のない「不織布タイプ」がある。織布タイプは、柔らかいため地面に馴染みやいが、網目から草が貫通したり、ほつれたりする欠点がある。一方、不織布タイプは、草の突き抜けに強いが、柔軟性に劣るため地面に馴染みにくく、透水性が低いことから水や土が溜まって、徐々にシートの上に草が生えたりすることがある。

 導入した防草シートはポリオレフィン系の「織布タイプ」で、高密度に編まれているのが特徴という。施工後、約4年経つがこれまでのところ、目立った破れなどはなく、想定した防草効果を発揮している。草の突き抜けなどもほとんど見られない(図8)。

図8●防草シートを施工したエリア
(出所:日経BP)
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 「防草シートを施工したエリアは、除草の手間は軽減されているものの、シート間際に生える草は機械除草が使えず、手刈りになるなど、費用対効果の点から、サイト全体への採用にまで至っていない」と江田保安部長は言う。

イノシシの侵入に苦慮

 このほか、山間メガソーラーに特有の課題が、発電所敷地内への野生動物の侵入という。岡山県内のメガソーラーでは、シカとイノシシの侵入が多いが、久米南サイトでは、特にイノシシが目立つという。イノシシはフェンスの下を掘って穴を空けて入ってくる。

 これまで、発電設備自体への損傷など、直接的な被害はないものの、周辺住民からの苦情になる可能性もあるという。というのは、ここ数年、農業などへのイノシシ被害が増えており、メガソーラーの中に巣を作って増えているのではないか、との見方も出てきたからだ。

 そこで、害獣対策として市販されている「オオカミの尿」を導入し、侵入経路と見られる場所にまいて臭いによる獣避けの効果を検証した。だが、特効薬ではないと分かり、発電所フェンスの外側(山側)にイノシシが掘り込めないようにワイヤーメッシュを敷く対策を検討している。

●施設の概要
発電所名パシフィコ・エナジー久米南メガソーラー発電所
所在地岡山県久米郡久米南町上弓削
面積約118ha
出力太陽光パネル出力32.256MW、連系出力26.46MW
開発・アセットマネジメントパシフィコ・エナジー
事業主体パシフィコ・エナジー久米南合同会社(米ジェマソン・グループ、米ゼネラル・エレクトリックグループによる出資)
EPC(設計・調達・施工)東洋エンジニアリング
土木工事青木あすなろ建設
電気工事旭電業
太陽光パネルインリー・グリーンエナジー製(300W/枚)・10万7520枚
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(630kW機)・42台
受変電設備TMEIC
接続箱ABB製
架台ヒルティ製
O&M
(運営・保守)
旭電業
着工2014年6月
商業運転開始2016年3月