カーポート型の先駆け、「パネル交換は1枚のみ」、甲府のメガソーラーの6年半

フンの汚れに懸念も、洗浄要らず

2021/06/15 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 山梨県甲府市、中央自動車道の甲府南インターチェンジの近くに、協和エクシオの甲信支店がある。笛吹川や小瀬スポーツ公園に近く、同公園にはサッカー・Jリーグのヴァンフォーレ甲府のホームスタジアムがある。

 甲信支店の敷地内には、連系出力1MW、太陽光パネルの出力約1064.1kWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「小瀬ソーラー発電所」がある(図1)。2014年12月に売電を開始してから、約6年半が経過した。

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図1●建物の屋根上だけでなく、駐車場にカーポートを建てて太陽光パネルを設置した
協和エクシオの甲信支店内のメガソーラー。一部、地上にも設置している(出所:日経BP)
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 メガソーラーを構成している4434枚の太陽光パネルのうち、約3000枚は建物の屋根上と、駐車場に設置された屋根の上に並んでいる。いわゆる「カーポート型」の先駆けとなった発電設備といえる。

 カーポートは、太陽光パネルを載せるために新設した。

 協和エクシオは、電気通信関連インフラを手がける大手である。同社は、本業の知見を生かせる太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)サービスに加えて(関連ニュース:「太陽光+蓄電池」で完全オフグリッド、郡山に施工)、発電事業にも取り組んでいる。

 国内で10カ所以上の太陽光発電所を運営し(関連コラム:千葉に深い傷跡を残した台風15号、翌日の東金市のメガソーラーの状況は?、同コラム:大雪には耐えるも、「二枚貝」でパネル数十枚が割れた、松江のメガソーラー)、甲信支店内の「小瀬ソーラー発電所」もその1つである。

 売電を開始してからの発電量は、月ごとなどで多少の増減はあるものの、年間でみると大きく増減することはなく、安定して推移しているという。どの年も前年に比べてほぼ±5%以内に収まっているという。

 例えば、昨年は、例年に比べて梅雨が長かった。このため、4~6月は、例年に比べて発電量が少なかった。しかしその後、盛り返すように発電量が増え、年間を通してみると、前年の2019年より発電量が多くなった。

 月別では、例年、最も発電量が多いのが5月、次いで9月となっている。その間の3カ月は、それよりわずかに落ちる程度という。

 結晶シリコン型の太陽光パネルは、気温が25℃を超えると、発電効率が下がる。甲府は最高気温の高い日が多く、全国で最高気温を記録するような日があり、天気予報やニュースで報じられることも多い。それでも、高温の時期に、それほど大きく発電効率が下がっているようには感じないという。

 稼働後に大きな変化もあった。隣接地に、新たに公共の施設が建つことになった。これによって、甲信支店内のメガソーラーの太陽光パネルの一部に、事業計画時には想定していなかった影がかかることになった。

 この影の影響については、公共施設側から協和エクシオに協議の打診があった。こうした場合、予想される売電ロス分が補償されることがほとんどとなっている。

 笛吹川やその支流に近いこともあり、当初、鳥のフンの汚れを懸念していた。しかし、実際には、太陽光パネルに鳥がフンを落としていくことはあるが、雨が降ればほとんど流れ落ち、懸念していたほど、汚れに悩まされていない(図2)。

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図2●太陽光パネルは総じてきれいだが、下側のアルミフレームのふちのみ汚れが残る
(出所:日経BP)
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 川を挟んだ向かい側には、同じように屋根上を活用したメガソーラーがある。こちらは、水鳥のフンに悩まされ続けており、同じ川の対岸にありながら、大きな違いがある(関連コラム:高温に積雪、鳥の糞害、幾多のトラブルを乗り越えた甲府の太陽光)。鳥の住処や活動の拠点との距離などの違いによるようだ。

 これまで2回、ドローン(無人小型飛行体)を使って太陽光パネルに異常がないか点検した。グループ会社にドローン点検を手掛ける企業が2社(エクシオインフラ、エクシオテック)あり、そのサービスを活用し、2018年と2020年に実施した。

 ドローンで空撮した熱分布の画像から、異常が見つかった太陽光パネルは1枚だけと、少なかった。このパネルはカーポートのもので、すぐに交換した。

 また、稼働から約5年が経ったころ、記録的な強風を伴うと予想された台風の通過前に、屋根に太陽光パネルを固定しているボルトの締め具合を点検した。緩んでいる状態が見つかったボルトは1本もなかった。

 建物屋根にある太陽光パネルは、屋根の上を歩けば目視点検のほか、パネル交換やボルト締めなども容易にできるが、カーポート上のパネルは、上に上らなければ作業できない。

 売電を開始してから、カーポートの上に上って作業したのは2回だけという。異常が見つかった太陽光パネルを交換した時と、台風前のボルトの点検時のみである。

 こうしたカーポート上での作業が必要な時には、甲信支店内に常備している高所作業車を使える。これは通信インフラ関連の同社ならではの利点といえる。

 太陽光パネルの洗浄を検討したことがあるが、費用対効果の利点を見いだせずに見送った。少し汚れることはあっても雨でほぼ流れ落ちることに加えて、カーポート上で洗浄の作業をするのは、通常の地上設置や屋根上に比べて難しいこともあった。

 カーポート上の太陽光パネルを洗浄する時に、安全を考慮して下に駐車しているクルマを移動させる必要がある。この面で、洗浄作業の候補日は、従業員の通勤がほぼない土日・祝日に限られる。

 カーポートといっても、建築基準法上の建物として作られ、一般的に想像するものよりは見るからに頑丈である(図3)。設計時には、過剰に強固なのではないかという議論もあったようだ。

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図3●強固な構造のカーポート
(出所:日経BP)
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 支柱は太く、2台分の駐車スペースごとに建っている。大きな車両が駐車するのに十分な幅があり、クルマの出入り時に不都合を感じることはほぼなく、程よい間隔になっているという。

 高所作業車が駐車している場所では、さらにカーポートの背丈を高くしている。

 柱が太いことで、見えやすい効果も大きいという。接続箱は、カーポートの支柱に固定されている。

 建物屋根に並べた太陽光パネルは、3種類の方法で設置されている(図4)。いずれも地上設置型と同じように、基礎と架台が設けられ、そこに太陽光パネルが固定されている。

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図4●建物の屋根上では3種類の方法で太陽光パネルを設置
(出所:日経BP)

 設置当時は、屋根への太陽光パネルの固定方法が確立されておらず、いずれも鋼製の架台を使い、架台の構成やパネルの固定方法を変えて検証する狙いがあった。3種類とも強固で、現在までトラブルなどはないという。

北杜では植樹を追加し地域に配慮

 協和エクシオが自社で開発・運営している太陽光発電所の大半は、山梨県内に立地している。

 これらの発電所も強固に設計・施工されていることが奏功し、自らが原因となる損壊事故などはないものの、隣接地にある別の事業者の太陽光発電所から、架台ごとアレイ(太陽光パネルが固定された単位)が飛んできて、協和エクシオの太陽光発電所内に落下し、太陽光パネルなどが損壊したことがあった。

 また、北杜市に立地する太陽光発電所では、後から外周に植樹し、敷地外から発電設備が見えにくくした(図5)。北杜市では新たに太陽光発電所に関する条例ができるなど、景観に対する懸念が強くなっている。同社のサイトは、こうした動きが出てくる以前に稼働していたものの、地域への配慮から対策を加えた。

図5●植樹を追加して太陽光パネルを見えないようにした
北杜市大泉町西井出石堂にある発電所の例(出所:協和エクシオ)
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 敷地内外に生える雑草の草刈りも、本来必要な年2回から4回に増やした。これも地域への配慮の1つという。

 雨水の急激な流出防止から、調整池を追加した発電所もある(図6)。こうした発電所に限らず、台風などの大雨の後は、必ず現地を見回り、土砂崩れなどが起きていないか、または起きる兆候がないか、確認するという。

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図6●調整池を追加した
北杜市明野町浅尾にある連系出力が1MW、太陽光パネル出力が約1.38MWのメガソーラーの例。下の2枚は豪雨を伴った台風が通過した翌日に撮影(出所:協和エクシオ)
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 現地には、必ず月に一度は向かい、敷地内を点検する。

 これらの地上設置型の太陽光発電所では、太陽光パネルの設置区域の雑草対策として防草シートを活用している(図7)。同社の山梨県内の発電所の場合、稼働から6~7年経っている発電所も多いが、防草シートによって雑草の成長はほぼ抑えられているという。

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図7●防草シートを活用
韮崎市穂坂町宮久保にある連系出力が1MW、太陽光パネル出力が約1.27MWのメガソーラーの例。深く掘削できないため重い基礎を採用(出所:協和エクシオ)
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●発電所の概要
発電所名小瀬ソーラー発電所
所在地山梨県甲府市落合町602番地2
(協和エクシオ 甲信支店)
太陽光パネル出力約1064.1kW
連系出力1000kW
年間予想発電量約120万kWh
発電事業者協和エクシオ
EPC(設計・調達・施工)サービス協和エクシオ
太陽光パネルシャープ製
(出力240W/枚・4434枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(出力500kW機・2台)
売電開始2014年12月
固定価格買取制度(FIT)上の売電価格40円/kWh(税抜き)
売電先東京電力グループ