「接続箱のスイッチまで備蓄」「積雪は比較的少ない」、飯田の里山のメガソーラーの7年

防草シートの効果は持続

2021/06/29 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 長野県飯田市の山あいに、連系出力・太陽光パネルの出力ともに約1MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「第一実業飯田太陽光発電所」がある(図1)。

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図1●出力約1MWの「第一実業飯田太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 発電所名の通り、産業機械などを中心とする総合機械商社の第一実業が開発・運営している。2014年3月に稼働を開始してから、7年以上が経過した。

 同社は、飯田市のサイトのほか、茨城県笠間市にある出力約1.5MWのメガソーラーを開発・運営している。このほか、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー発電システムの販売なども手掛けている。

 「飯田太陽光発電所」は、飯田市の川路地区にある里山の中腹に立地する。川路地区は、「川の路」の地名のとおり、天竜川に接した低地が多い。

 これまで度々、洪水で被災した地域でもある。最寄り駅であるJR飯田線の川路駅は、水害を防ぐために、開設当初の場所から移設するなど、対策が講じられてきた。

 メガソーラー用地に活用したのは、治水対策に使う土砂の採取地だった。飯田市が所有し、工業用地として整備された場所だが、道路を挟んで田畑が続いており、のどかな里山の一角という風情である(図2)。

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図2●周囲に田畑が続いていることからも、日射量に恵まれていることがわかる
(出所:日経BP)
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 この土地の上にある高台には、飯田市と中部電力による出力1MWの「メガソーラーいいだ」がある。このように飯田市は再エネの導入に早くから積極的だった上、「メガソーラーいいだ」の実績から周辺住民の理解を得やすく、第一実業が飯田市からこの土地を借りてメガソーラーを建設した。

 メガソーラーは、谷を挟んだ2つの区画からなる(図3)。合計1万4601m2の土地に3990枚の太陽光パネルを並べた。事業計画時の年間予想発電量は、一般家庭約300世帯分の消費電力に相当する約110万kWhを初年度に見込んでいた。

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図3●2つの区画の間には谷がある
上は2014年に撮影(出所:日経BP)
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 稼働から7年以上が経ち、順調に推移しているという。発電量は、月ごとにみると上下に振れることもあるが、年間で見ると均されてくる傾向にあり、年ごとにはそれほど大きな差はないとしている。

 この2~3年間は、雨の日が極端に多い月があり、月ごとの発電量の差が大きく振れる傾向が強まっているようだ。例えば、長雨が続いて9月の発電量が少なく、12月と同程度にとどまった年がある。

 また、飯田市は寒暖の差が激しく、夏には40℃近くまで上がることがある。結晶シリコン型の太陽光パネルは、高温時に変換効率が下がる性質があり、高温は不利になる。ただ、夏季は、その性質よりも雨や曇りが多いことが影響し、発電量が伸びないと分析している。最も発電量が多いのは、3~4月となっている。

 長野県というと、雪国というイメージがあるが、メガソーラーの立地地域は、それほど積もることはないという。積雪することはあっても、ほとんどの場合、午後には太陽光パネルには残っていない。溶けるかパネルの下に滑り落ちている(図4)。

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図4●2018年1月の積雪時の様子
(出所:第一実業)
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 稼働直前の2014年2月に、山梨県や長野県の広域で、過去最高といわれる豪雪に見舞われ、多くの太陽光発電所が損壊した。「飯田太陽光発電所」はこの時、施工中だった。この地域にしては多く降ったものの、被害はなかった(図5)。

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図5●施工中の2014年2月の積雪時の様子
(出所:第一実業)
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発電設備の備蓄を厚く確保

 第一実業の太陽光発電所の運営で特徴的なのは、損傷したり寿命によって交換することが想定される設備や部品・資材について、できるだけ多く備蓄している点にある。

 ビル関連の事業の経験に基づく運用といい、例えば、太陽光パネルや接続箱のスイッチを多く備蓄している。太陽光パネルの場合、年々、性能が向上することから、いざ交換が必要になった時に、同じ製品を確保するのが難しいという問題がある。

 異なる製品に変える場合、経済産業省への申請の手間だけでなく、同じ外形寸法の製品が手に入りにくくなる可能性もある。接続箱のスイッチも、太陽光パネルと同じように、頻繁に製品が切り替わり、寸法が大きくなった製品をどのように固定するかという問題も予想されるため、当初から備蓄しているという。

 太陽光パネルが割れることで交換する頻度は、比較的少ない。飯田サイトではゼロ枚の年から多くても年に2枚、笠間サイトはさらに少なく、これまでに1枚しか割れていないという。それでも飯田サイトでは、パネルの備蓄を途中からさらに追加した。

 パワーコンディショナー(PCS)についても(図6)、構成している数百点に及ぶ部品や資材について、メーカー経由で調達できるものであっても、部品・資材メーカーに連絡をとり、入手の可否や耐久性、耐用年数などを独自に調査している。生産中止などが想定されるために、このような運用を重視しているという。

図6●PCSはTMEIC製
(出所:日経BP)
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 PCSの大規模点検・修繕については、メーカーの推奨通りに実施している。飯田のメガソーラーは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製、笠間では明電舎を採用している。

 また、中部電力の管内でも、太陽光発電所に対して出力抑制の準備が求められている。この対応として2020年末に、PCSに遠隔制御機能を追加した。

 太陽光パネルは三菱電機製を設置している(図7)。飯田市にある三菱電機の工場で製造した太陽電池セル(発電素子)が使われている。第一実業は、太陽光発電所の建設に際し、立地地域の活性化に貢献するという方針を持っている(2014年7月掲載のメガソーラー探訪)。

図7●太陽光パネルは三菱電機製
(出所:日経BP)
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 これまでの発電状況が良好なほか、アルミフレームに水を流すための切り込みがあるのが利点となっている。土埃などがパネル表面にたまっても、雨水と一緒に流れ落ちる効果がある。

 飯田サイトでは、春などにパネル表面が黄色っぽく汚れる傾向がある。花粉によるものとみられ、これも雨の後にはほぼきれいに流れ落ちていくという。

防草シートは機能を持続

 飯田サイトでは、雑草対策として防草シートを採用している。アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)下段の地面に敷設した。その上には砕石などを敷かず、そのまま露出させている(図8)。

図8●防草シートが機能してアレイ前部は雑草が少ない
(出所:日経BP)
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 透水性が高く、比較的厚みのある製品を採用した。これまでのところ効果は持続しており、今後は、メーカーが示している10年間という寿命の目安に対して、同じような製品に交換するか、除草のみで対応するかを検討していく。

 防草シートを敷設していない場所は、雑草の伸び具合を見て刈っている。飯田サイトでは、年に2回実施している。

 また、事業用地は、元々平坦に整備され、排水溝や調整池まで備えていたため、施工時には排水溝を追加したのみで、十分な排水や土砂流出への対策を実現できる環境だった(図9)。

図9●調整池は元々整備されていた
(出所:日経BP)
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●発電所の概要
発電所の名称第一実業飯田太陽光発電所
発電事業者第一実業
土地所有者飯田市
所在地長野県飯田市川路2862-33
敷地面積1万4601m2
連系出力約1MW
太陽光パネル出力約1MW
年間予想発電量約110万kWh
(一般家庭約300世帯分の年間消費量)
EPC(設計・調達・施工)サービス非公開
O&M(運用・保守)サービス非公開
太陽光パネル三菱電機製
(単結晶シリコン型、出力250W/枚・3990枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格出力500kW機・2台)
固定価格買取制度(FIT)の売電単価(税抜き)40円/kWh
売電開始日2014年3月28日
売電先中部電力グループ