「高圧」「低圧」まとめて管理、南アルプス市の太陽光

設備利用率に勝る「高圧」、小型PCSは不具合で交換も

2021/08/11 18:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

日照量は国内トップクラス

 山梨県南アルプス市は、赤石山脈(南アルプス)の山麓に位置する。東には国内2位の高峰・北岳がそびえ、西には果樹栽培の盛んな扇状地が広がり、甲府盆地の一部をなす。山に囲まれて雨雲が届きにくく、年間を通じて晴れが多い。甲府盆地の日照量は国内でもトップクラスで、その立地が買われて国によるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の実証サイトが運営されたこともある。

 盆地を流れる釜無川(富士川)は、戦国時代に武田信玄が築いた信玄堤による治水で知られる。かつて堤防のあった近くの川沿いには現在、「信玄堤公園」があり、河川敷には、丸太を三角に組んで水の勢いを弱める「聖牛(ひじりうし)」が設置されている(図1)。

図1●釜無川沿いの信玄堤公園にある木製の堰「聖牛(ひじりうし)」
図1●釜無川沿いの信玄堤公園にある木製の堰「聖牛(ひじりうし)」
(出所:日経BP)
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 同公園から下流に約5km下った川沿い、釜無川の堤防と桜並木のある小道に挟まれた長方形のエリアに、太陽光パネルが整然と並んでいる。パネル横置き、4段(枚)組みのアレイ(パネルの設置単位)が堤防道路から見渡せる(図2)。

図2●堤防道路から見た太陽光発電所の全景
図2●堤防道路から見た太陽光発電所の全景
(出所:日経BP)
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 アレイ構成はほとんど同じだが、北側の川に近いアレイは、太陽光パネルの設置角が少し低く、フェンスで細かく区切られている。実は、これらのパネル群は、出力2.5MWで高圧配電線に連系するメガソーラー「南アルプス太陽光発電所」と、低圧配電線に連系する50kW未満の小規模太陽光発電所14区画からなる「南アルプスソーラーパーク」なのだ(図3)。

図3●堤防道路から見ると手前に「低圧」、奥に「高圧」サイトが見える
図3●堤防道路から見ると手前に「低圧」、奥に「高圧」サイトが見える
(出所:日経BP)
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「高圧」の未利用地に「低圧」

 同発電所とソーラーパークは、いずれもインテグリティ・パートナーズ(東京都千代田区)が開発・運営している。同社は、2007年5月に設立され、2011年のFITスタート以降、太陽光発電に特化し、メガソーラープロジェクトの開発・運営を手掛け、それらを投資資産としたファンドの管理・運営も担っている。

 これまでに全国25カ所、合計240MWの太陽光発電所(稼働・着工済み)を運営しており、今後数年で合計30カ所・300MWまで増やしていく目標を掲げている。

 同社の運営する南アルプス市のサイトが、高圧連系と低圧連系の太陽光が隣接することになったのは、次のような経緯がある。

 もともと、この土地は、ゴルフ場のショートコースがあったが、地主の意向で太陽光発電向けに賃貸することになり、インテグリティ・パートナーズが2.5MWのメガソーラーを開発することになった。完成した高圧サイトの中に調整池が点在するのは、ゴルフ場時代の名残りで、池を残して治水に利用したものだ(図4)。

図4●ゴルフ場当時の池を残した
図4●ゴルフ場当時の池を残した
(出所:日経BP)
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 高圧太陽光の計画が進み始めた段階で、その両端に残った未利用の土地も太陽光発電所に有効利用できないかと、地主から相談を受けた。経済性の点から、600kW程度の高圧太陽光よりも、低圧太陽光を複数、設置する方が有利との結論になり、残ったエリアを50kW未満の低圧太陽光向けに14分割することになった。

 こうした「低圧分割」は、2014年度以降、固定価格買取制度(FIT)の認定対象から外れたが、「南アルプスソーラーパーク」が認定を受けた2013年度までは認められており、全国的に多くの例があった。ただ、南アルプス市サイトのように、同じ事業者が、高圧太陽光の空きスペースに「低圧分割太陽光」を開発し、まとめて管理するケースは珍しい。

設置角は20度と10度

 高圧の「南アルプス太陽光発電所」は大和ハウス工業がEPC(設計・調達・施工)とO&M(運営・保守)サービスを担当していたことから、14の低圧太陽光からなる「南アルプスソーラーパーク」も同様に、大和ハウスがEPCとO&Mを担っており、アレイ構成などはほぼ同じ形になった。

 高圧サイトは、太陽光パネルの出力2520kW、連系出力1990kWで、パネルは韓国の現代重工業製(250W/枚)、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製の500kW機を採用した。高圧連系システムなので、2.5MW分、約1万枚の太陽光パネルの発電する電気は4台の大容量PCSで交流に変換して昇圧器を通じて高圧配電線に送電する(図5)(図6)。

図5●高圧サイトは韓国・現代重工製パネルを採用
図5●高圧サイトは韓国・現代重工製パネルを採用
(出所:日経BP)
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図6●高圧サイトは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製PCSを採用
図6●高圧サイトは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製PCSを採用
(出所:日経BP)
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 一方、低圧分割の「南アルプスソーラーパーク」は、14区画全体の太陽光パネルの合計出力は668kW、連系出力は572kWで、パネルは韓国のハンファQセルズ製(250W/枚)、PCSは台湾のデルタ電子製(4kW機)を採用した。全体のパネル枚数は2672枚、小型PCSは167台になるが、低圧連系システムのため、50kW未満ごとに交流に変換して、それぞれが低圧配電線に接続され、売電するという形になる(図7)。

図7●低圧サイトは、韓国・ハンファ製パネルとデルタ電子製PCSを採用
図7●低圧サイトは、韓国・ハンファ製パネルとデルタ電子製PCSを採用
(出所:日経BP)
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 高圧サイトと低圧サイトの架台とアレイを比べると、設計上の大きな違いは、太陽光パネルの設置角になる。高圧サイトは、野立て太陽光発電所で一般的な20度を採用したが、後から建設した低圧サイトは、限られたスペースに少しでも多くパネルを並べるため、設置角を10度に抑えてパネルの影を低くすることでアレイ間の離隔距離を詰めた。

設備利用率は20%超える

 結果的にインテグリティ・パートナーズの南アルプス市サイトは、高圧太陽光と低圧太陽光が同居するように並び、同じ事業者が運営することになった。両システムの運用状況を比較しやすいという点で、たいへんに興味深い。

 稼働から7年が経過し、高圧・低圧サイトとも順調で、発電量はいずれも想定値を超える年が続いている。例えば、2020年6月期の年間発電量は高圧サイト348万kWh、低圧サイト82万kWhで、それぞれの想定値である336万kWh、74.5万kWhを超えている。

 設備利用率を比較すると高圧サイトの方が高い。連系出力を基準にした設備利用率は高圧サイト20.0%、低圧サイト16.5%、パネル出力を基準にした設備利用率は高圧サイト15.8%、低圧サイト14.2%となり、いずれも高圧サイトの方が数ポイントも高かった。こうした傾向は、ここ3年間、変わっていない。

 高圧サイトにおける連系出力の設備利用率は、2018年20.9%、2019年21.1%とやはり20%台を超えていた。同程度の過積載比率のサイトでは一般的に14~15%と思われ、この地域がいかに日照に恵まれているか、あらためて印象付けられる。

 連系出力の設備利用率に関し、高圧サイトの方が大幅に高いのは、過積載比率の差(高圧サイト1.26倍、低圧サイト1.17倍)が影響していると思われる。パネルの出力になると設備利用率の差は小さくなるものの、それでも高圧サイトの方が1ポイント以上高くなっている。その要因は、太陽光パネルの設置角度(高圧サイト20度、低圧サイト10度)の違いのほか、PCSの集中・分散によるシステム効率の差のほか、太陽光パネル、PCSのメーカーが異なることが影響している可能性もある(図8

図8●高圧サイトは、低圧サイトよりも設備利用率が高い
図8●高圧サイトは、低圧サイトよりも設備利用率が高い
(出所:日経BP)
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小型PCSが3台故障し交換

 O&Mサービスを担当している大和ハウスは、法律の求める内容などを考慮し、高圧太陽光と低圧太陽光では保守・点検の内容も変えている。そもそも高圧サイトの場合、電気保安業務は電気主任技術者が主体にO&M事業者と連携して実施することになる。南アルプス太陽光発電所では、関東電気保安協会に委託している。

 頻度については、年次点検と6カ月点検は共通だが、月次点検については高圧サイトに限定している。南アルプス市の太陽光では、高圧サイトに関しては2カ月に1回、月次点検を実施し、高圧受電設備とPCSを点検する。高圧設備に対する月次点検は法廷では3カ月に1回だが、独自に点検頻度を増やしているという。

 また、日常業務に関しても、違いがある。平日に監視装置をリモートで確認している点は共通だが、異常が発生した場合、休日も含めて携帯メールにアラートを送信する仕組みを導入しているのは高圧サイトだけにしている。

 2020年11月9~10日には、低圧サイトの年次点検を実施した。内容は、低圧幹線の絶縁測定、PCSのほか、接続箱や集電箱、エコめがね盤、引込開閉盤などの点検、パネル全数の絶縁測定・目視点検など。ケーブルのたるみやシールも確認した。

 その結果、PCSの連系不良が3台見つかり、メーカーに依頼して修理したという。割れたパネルやクラスタ異常のパネルはなかったものの、内部抵抗値の異常を検出したパネル2枚を交換した。

 実は、低圧サイトのPCS交換については、年次点検の前にも、遠隔監視などによって故障を発見し、2020年7~8月に3台を交換しているという。

 低圧分割による太陽光は小型PCSによる分散型システムになる。「南アルプスソーラーパーク」では、14区画全体で167台の小型PCSが稼働している。インテグリティ・パートナーズでは、「多数の小型設備が分散して運用されるため、稼働後のO&Mでは予想以上に手間がかかることが分かってきた」と話す(図9)。

図9●低圧サイトは、小型PCSの不具合が目立つ
図9●低圧サイトは、小型PCSの不具合が目立つ
(出所:日経BP)
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雷で停止も2時間内に復旧

 一方、高圧サイトに関しては、2021年1月20日に関東電気保安協会を主体に年次点検を実施した。高圧と低圧の絶縁抵抗、接地抵抗の測定、継電器の試験、接続箱の開放電圧測定のほか、キュービクルを清掃し、変圧器や高圧受電盤を目視点検し、変圧器漏れ電流などを測定した。点検・検査の結果、機器の不具合など異常はなかった。

 高圧サイトに関しては、2020年8月12日に異常を知らせるメールが発報され、PCSが停止したことがあったという。午後4時ごろ、「系統異常」を知らせるアラートがあり、4台のPCSが止まった。原因は雷などの影響と推定された。保安協会が駆けつけて復旧作業を行い、午後5時43分に運転を再開し、売電ロスは最小限に抑えられた。

 低圧分割サイトに比べ、高圧サイトの運用が順調なのは、システム構成がシンプルなことに加え、南アルプス太陽光発電所の場合、O&M事業者と電気保安協会が連携して2カ月1回の頻度で月次点検を実施するなど、予防保全が徹底していることも大きそうだ。

●設備の概要
発電所名南アルプス太陽光発電所
住所山梨県南アルプス市鏡中條
運営インテグリティ・パートナーズ合同会社
設置面積4万3503m2
出力太陽光パネル出力・2520kW、連系出力1990kW(過積載比率1.26倍)
年間想定発電量336万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービス大和ハウス工業
O&M(運用・保守)大和ハウス工業
太陽光パネル現代重工業製(250W/枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製(500kW機)
パネル設置角20度
運転開始2014年6月
売電単価40円/kWh
売電先エバーグリーン・マーケティング
●設備の概要
発電所名南アルプスソーラーパーク(低圧発電所14区画)
住所山梨県南アルプス市鏡中條
運営インテグリティ・パートナーズ合同会社
設置面積1万225m2(14区画の合計)
出力太陽光パネル出力・668kW、連系出力572kW(14区画の合計)(過積載比率1.17倍)
年間想定発電量74.5万kWh(14区画の合計)
EPC(設計・調達・施工)サービス大和ハウス工業
O&M(運用・保守)大和ハウス工業
太陽光パネルハンファQセルズ製(250W/枚)
パワーコンディショナー(PCS)デルタ電子製(4kW機)
パネル設置角10度
運転開始2014年10月
売電単価36円/kWh
売電先東京電力パワーグリッド