わずか1年でヤギが倍増、将来はチーズ製造も、長崎・柿泊町のメガソーラー

1年で7頭から13頭に、農業ビジネスとの連携も模索

2021/08/31 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 長崎市柿泊町の山あいに、出力約1.9MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「SOL de 長崎 柿泊」がある。この発電所では13頭のヤギが日々、雑草を食べている(図1)。

図1●ヤギが群れる様子は牧場のよう
図1●ヤギが群れる様子は牧場のよう
(出所:チョープロ)
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 メガソーラーを開発・運営しているのは、地元で液化石油ガス(LPG)などを手掛けるチョープロ(長崎県長与町)である。

 同社は、地元の長崎を中心に多くの太陽光発電所を運営している。地域に根ざした太陽光発電事業者の典型といえる。県内初のメガクラスとなった太陽光発電所も同社の案件である。

 同社の太陽光発電所の開発方針には、近隣地域のみで開発することのほかに、EPC(設計・調達・施工)サービス、太陽光パネルとパワーコンディショナー(PCS)メーカーの枠組みを変えず、信頼を深めた関係の中で連携して開発し続けていることがある。

 EPCサービスは九電工が担い、太陽光パネルはソーラーフロンティア製、PCSは東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用し、この3社による連携を基本に開発してきた。柿泊のメガソーラーも、この枠組みで開発した。

 太陽光発電については、自社による新規案件の開発がひと区切りした。今後は、稼働済みで一定期間、安定稼働した実績がある案件を購入する、いわゆるセカンダリー市場を通じた取得を試みていく。

 同社の場合、地域新電力も運営している。固定価格買取制度(FIT)による売電期間が終了した後、地域の電源として太陽光発電所を積極的に取り込んで、再エネ比率ができるだけ高い電力を安く提供していきたいという方針がある。

 また、最近では、バイオガス発電やバイオマス熱供給にも注力している。バイオガス発電所「久留米バイオパワープラント」が、2020年に稼働した(図2)。

図2●牧場内の堆肥設備の隣に建つ
図2●牧場内の堆肥設備の隣に建つ
バイオガス発電所「久留米バイオパワープラント」 (出所:チョープロ)
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 福岡県久留米市にある牧場内に立地し、堆肥設備の隣に建つ。この牛の糞尿や食品の残渣などの嫌気発酵で取り出したメタンガスを燃料とする。残った発酵残渣は、地域の農家の肥料に使う。

 定格出力は370kWで、年間発電量は一般家庭約700世帯分の消費電力に相当する、275.5万kWhを見込んでいる。FITによる売電単価は39円/kWh(税抜き)となっている。

 このほか、木質バイオマスによる熱供給のプロジェクトも事業化を検討している。同じ長崎県内の企業との共同事業を構想し、2023年に稼働を予定している。既存の施設内における熱供給を、重油によるボイラーから木質バイオマスによるボイラーに変える。

 小型の設備となることから、熱電併給(コージェネレーション)システムにすると効率などの理由から採算が合いにくいため、熱供給のみに絞って検討している。熱電併給にしてFITで売電した場合、買取期間が終了した後の事業性も課題となる。

 熱供給のみの場合、FITの案件に課されている燃料の区分や制約がない。例えば、木質バイオマスの材料として建材なども利用できる。この燃料選択の広さが魅力となる。

 さらに、風力発電では、長崎県対馬市による事業性評価のプロジェクトに関わっている。対馬沖における浮体式の洋上風力発電の導入を模索するもので、対馬市が環境省の補助を活用して実施している。

ヤギは繁殖して倍増、小屋を追加

 柿泊町のメガソーラーは、長崎市総合運動公園の隣接地に位置する採石場の中にある(図3)。すでに砕石を終え、平坦になった場所に太陽光パネルを設置した。

図3●敷地は4万m<sup>2</sup>と広い
図3●敷地は4万m2と広い
(出所:チョープロ)
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 チョープロは、メガソーラーが稼働してから5年後となる2019年に、柿泊町のメガソーラーにヤギを導入した。敷地内の除草も重要な目的だが、他の事業との相乗効果の方に力点を置いている。

 草刈りだけで見ると、ヤギの飼育よりも、草刈り作業を外注した方がコストは安く済む可能性もあるという。

 当初は、雄と雌を1頭ずつ、合計2頭で飼い始めた。この雌から2頭の子ヤギが産まれた。その後、1頭の雌を追加し、この雌からも1頭の子ヤギが産まれた。さらに1頭を追加して、1年前の2020年夏の時点では、7頭に増えていた。

 その後、さらに子ヤギが産まれ、現在は13頭に増えている(図4)。1年間でほぼ倍増したことになる。繁殖力が強いとは聞いていたものの、これほどの増え方には驚いているという。

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図4●親子で群れるヤギも。子ヤギはとくに愛らしい
図4●親子で群れるヤギも。子ヤギはとくに愛らしい
(出所:チョープロ)
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 今後も、子ヤギが産まれて増え続けていくと予想している。

 メガソーラー内に、15頭近くの頭数のヤギが歩いている光景は、ちょっとした牧場のようだ。まとまって歩き回って遊んだり、雑草を食べたりしている様子は、ほのぼのとして癒される。

 ヤギの管理担当者がメガソーラー内に滞在している時に、ヤギを小屋から敷地内に放している。小屋でしっかり管理する方針は、動物を相手にする以上、安全面でより慎重に取り組みたいと考えたからだった。

 ただし、ヤギは夕方になると、自分で小屋に戻ってくる。

 この小屋も、ヤギが増えたことで追加した(図5)。2020年夏の時点では1棟だったが、頭数がほぼ倍増したので、隣にもう1棟を建てた。

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図5●左が追加した小屋
図5●左が追加した小屋
(出所:チョープロ)
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 日中、日差しを避けるように、太陽光パネルの下で過ごしていることもある。これは暑さをしのぐためかとも思われたが、冬の涼しい時期でも、同じように太陽光パネルの下で過ごしていることがあるので、気温はあまり関係ないかもしれないという。

 他の事業との相乗効果では、ショップやレストランを通じてガスを中心とした食や暮らし全般を提案する事業、また、最近手掛けはじめた農業との連携がはじまった。

 同社の農業事業は、露地栽培と本社ビルの屋上栽培、巣箱を使ったハチミツ作りなどでスタートしている。

 ヤギの管理担当者とは、この農業ビジネスの中で縁ができた。今後計画しているハウス栽培などで、ヤギの管理担当者がより直接的な役割を担う予定となっている。

 ニホンミツバチの養蜂では、すでにハチミツの販売を試験的に始めている。

 本社屋上の農園と近隣の農場に巣箱をおいてミツバチを飼育して採蜜している(図6)。すでに約10箱に増えており、今後、年内にも40箱、その後は50箱というペースで巣箱の数を増やしていく。

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図6●ニホンミツバチの巣箱
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図6●ニホンミツバチの巣箱
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図6●ニホンミツバチの巣箱
(出所:チョープロ)

 ハチの中でも、ニホンミツバチは飼育が難しく採蜜量も少ないため、そのミツは貴重で、贈答用にもなるほどである。1箱で約3kgのハチミツをとることができ、これを100gずつビンに詰めて販売する。

 いまのところ、ニホンミツバチのハチミツは、同社が「kuriya」というブランドで展開しているガス器具を中心とした食や暮らし全般を提案するショップで、月に一度、開催している無農薬野菜の販売会で売り始めた(図7)。

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図7●無農薬野菜の販売会の様子と、ビン詰めしたニホンミツバチのハチミツ
図7●無農薬野菜の販売会の様子と、ビン詰めしたニホンミツバチのハチミツ
(出所:チョープロ)
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 今後、栽培を予定しているそのほかの農作物も、この「kuriya」のショップやレストランで提供する。

 こうした商品の1つとして、チーズなどの乳製品を加える構想がある。将来的に、メガソーラーで雑草を食べているヤギの乳から作ることも期待している。

 これが実現すると、「6次産業化」と呼ばれる、農作物の生産から、食品加工、流通・販売まで手掛けるビジネスの形態に近づく。簡易的な搾乳機を購入しており、今後、搾乳を試みることも目指している。

度重なる出力抑制で、九電によるオンライン制御に変更

 発電量については、これまで月ごとに増減はあっても、年単位でみると、極端に大きな増減はない状況が続いてきた。

 2021年は、6~7月が例年以上に好調だった。雨天の日が例年よりも少なかったためである。

 しかし、8月に入ると一転し、長雨の日が続いている。このような感じで、1年を通じ見ると、概ね平準化された実績になっているという。

 また、3~5月は、九州電力送配電による出力制御(出力抑制)が日常的に課されていたという。出力抑制に関し、チョープロは新たなシステムの導入に踏み切った。

 チョープロの太陽光発電所は、2カ所を除いて、年間最大で30日まで無補償で出力が抑制される「30日ルール(旧ルール)」を条件に連系している案件になる。

 チョープロが開発した太陽光発電所は、基本的に遠隔による稼働停止を導入してきた。「30日ルール」の発電所は、出力抑制を実施する日の前日の午後に九州電力から電話と電子メールで連絡が入り、翌日の8時~16時の発電停止を求められる。チョープロは、その指示に従って翌日の8時~16時の間、すべてのPCSの稼働を止める。この稼働停止は遠隔からのタイマー設定で実施する。

 一方、「無制限・無補償」の出力抑制が接続条件となっている「指定ルール」の太陽光発電所では、九州電力送配電が直接、出力を抑制するオンライン制御が導入されている。

 こうした発電所では、事前に発電事業者への連絡はなく、チョープロが運営している指定ルールの発電所でも、遠隔監視によって出力抑制の実施を知ることになるという。そして、現状では出力抑制の時間が短く、電力需要のピーク時とされる11時ころ~15時ころのうちの約3時間にとどまっている。

 「旧ルール」のメガソーラーでも、対応したシステムを導入し九州電力送配電によるオンライン制御に移行した場合、同じように1回の出力抑制が3時間程度に留まることが多くなるため、出力抑制量が減るとされている。

 チョープロでは、所有する発電所のうち、「旧ルール」と「指定ルール」の発電所での実績を比べた。2020年の出力抑制の結果から、同じ状況が続く場合、九電によるオンライン制御に移行した方が、費用対効果が高いと判断した。

 このオンライン制御の移行が、ほぼ完了したという。EPCの九電工を通じて、PCSメーカーのTMEICに相談したところ、予想していた以上に移行作業が早く進んだとしている。

●発電所の概要
発電所名SOL de 長崎 柿泊
所在地長崎県長崎市柿泊町1887番地3ほか
設置面積4万1964m2
太陽光パネル出力約1950.3kW
連系出力1500kW
年間予想発電量約161万kWh
施工費約4.4億円
発電事業者チョープロ
EPC(設計・調達・施工)サービス九電工
O&M(運用・保守)チョープロ
太陽光パネルソーラーフロンティア製
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
着工時期2013年8月
売電開始時期2014年2月
固定価格買取制度(FIT)による売電単価40円/kWh(税抜き)
売電先九州電力