阿蘇のメガソーラーの6年、雨水対策を強化、降灰の影響は?

SunEdisonが開発・稼働、タイのBCPGが日本法人ごと買収

2021/09/28 17:33
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 阿蘇山は、標高が1592mで、広大なカルデラを擁する。その外輪山に近い高原の地域に、連系出力が1MW、太陽光パネルの出力が約1.278MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)がある(図1)。

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図1●熊本県阿蘇郡高森町にある。奥に阿蘇山が見える
図1●熊本県阿蘇郡高森町にある。奥に阿蘇山が見える
(出所:BCPGジャパン)
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 発電所の名称は「高森太陽光発電所(S-11 TAKAMORI発電所)」で、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は40円/kWh(税抜き)、売電を開始した2015年2月から丸6年半が経過している。

 この太陽光発電所を運営しているのは、タイ系のビーシーピージージャパン(BCPGジャパン:東京都港区)である。

 同社は元々、米SunEdisonの日本法人で、国内で発電プロジェクトを開発していた。SunEdisonの経営破綻を機に、タイの石油大手Bangchak Petroleumグループで再生可能エネルギー開発を手掛けるBCPGが、この日本法人を2016年2月に買収し、稼働中・開発中の案件を引き継いだ(パーワン・サイアムチャイ(Pavan Siamchai)社長のインタビュー)。

 高森太陽光発電所は、SunEdisonの日本法人時代に稼働した3カ所の太陽光発電所のうちの1つである。残りの2カ所は、鹿児島県湧水町にあるミドルソーラー(関連コラム:「刑務所」に隣接するミドルソーラー)、宮崎県小林市のメガソーラーである。

 発電事業者は、BCPGジャパンが所有している特定目的会社(SPC)となる。BCPGジャパンでは、SunEdisonの日本法人時代から、発電所の規模に関わらず案件ごとにSPCを設立して事業主体としている。

 SunEdisonの日本法人時代に稼働した案件のため、EPC(設計・調達・施工)とO&M(運用・保守)サービスをサンエジソン建設(現・ビーシーピージーエンジニアリング)が担当し、太陽光パネルもSunEdison製を採用するという点が、特徴の1つとなっている(図2)。

図2●SunEdison製の太陽光パネル
図2●SunEdison製の太陽光パネル
(出所:BCPGジャパン)
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 パワーコンディショナー(PCS)は、東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 稼働後の発電量は、月ごとに増減はあっても年単位でみると比較的、安定している。ただし、2018年までは140万kWh台で推移していたが、2019年と2020年は130万kWh台、133万kWh台と、基準となる水準が下がってきた。

 130万kWh台でも、事業計画時の年間発電量に比べると大幅に高い水準となっている。

 とはいえ、年間でこれまでとは10万kWh単位で下がったのには、天候のほかにも原因がある可能性もある。その1つに、九州電力送配電による出力制御(出力抑制)があるのではないかと考えている。

 この発電所では、例えば、2019年は4月~12月に11回、さらに2020年は4月~12月に13回、翌3月までにさらに8回が加わって、年度を通じて合計21回の出力抑制を受けた。

 初期の案件のため、年間で最大30日まで無補償で出力が抑制される「30日ルール(旧ルール)」を条件に連系している。

 「30日ルール」の太陽光発電所は、出力抑制の対象となる前日の午後、九州電力送配電側から連絡が入り、翌日の「8時~16時」の間、発電を停止するように求められる。発電事業者は、この指示に従って翌日の8時~16時の間、自ら設備を操作してすべてのPCSの稼働を止める。

 高森の太陽光発電所でも、出力抑制の対象となった当日は、「8時~16時」といった日中のほぼ1日、売電を止めていた。

 一方、「無制限・無補償」の出力抑制が連系の条件となっている太陽光発電所では、九州電力送配電側が直接、出力を抑制するオンライン制御が導入されている。

 オンライン制御の場合、事前に発電事業者への連絡がなく、遠隔監視によって出力抑制の実施を知ることになる。また、オンライン制御では、現在は出力抑制の時間が3時間程度と短いことが多い。

 「旧ルール」のメガソーラーでも、対応したシステムを導入して九州電力側によるオンライン制御に移行した場合、同じように1回の出力抑制が3時間程度に留まることが多くなるため、現状では出力抑制量が減るとされている。

 SunEdisonの日本法人時代に稼働した3カ所の太陽光発電所については、PCSを改修し、オンライン制御への移行が完了した。

 高森の発電所では9月中旬に運用が始まり、例えば、「10:00~14:35」「10:30~13:05」など、従来に比べて1日当たりの出力抑制の時間が大幅に短くなっている。

 阿蘇山に近い場所にあるというと、噴火による降灰が気になる。

 施工時には、多くの降灰があり、灰の中で施工の作業をするような時期もあった。

 発電所内には、太陽光パネルへの降灰を想定して、洗浄用の水をためるタンクを備えている。ただし、売電をはじめてから、洗浄したことはほとんどないようだ(図3~4)。

図3●降灰時の洗浄用に水をためるタンクが見える(右のフェンス際)
図3●降灰時の洗浄用に水をためるタンクが見える(右のフェンス際)
(出所:BCPGジャパン)
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図4●積雪時(上)、降灰と積雪が重なった時(中と下)
図4●積雪時(上)、降灰と積雪が重なった時(中と下)
(出所:BCPGジャパン)
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 わずかな降灰と、わずかな積雪が同時に生じたこともある。この程度なので、洗浄も除雪も実施していない。

 雑草対策として、除草剤は使っていない。年に3~4回、雑草を刈っている。

 排水については、稼働後に対策を強化した(図5)。

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図5●道路から流れてくる雨水への対策を強化
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図5●道路から流れてくる雨水への対策を強化
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図5●道路から流れてくる雨水への対策を強化
(出所:BCPGジャパン)

 発電所の入り口は道路に面している。道路の方が高い位置にあるので、道路側から雨水が発電所側に流れてくる。これによって、発電所側の土が削れて溝ができてしまう懸念があった。

 そこで、道路と発電所の間の舗装を強化したり、U字溝などを追加して排水機能を強化した。これによって、道路側から流れてきた水が、土を削ってしまうような状況は解消された。

 また、雨の日などに、地絡(漏電)を検出して、遠隔監視システムで通知されることが出てきた。この場合、地絡を生じた箇所や状況を現地で調べ、接続箱を通じて該当するストリングの送電を遮断している。

 雨の日や、朝露が多い日などに生じる傾向がある。

 現地で何度も状況を調べているが、漏電のプロセスを突き止めるまでには至っていない。原因は、太陽光パネルか、パネル間を接続しているコネクターか、あるいは、コネクターの接続の状況にあるのか、などが考えられるという。

 該当するストリングでは、コネクターを触ってみると、過熱していることがわかるくらいに熱を持っていることがある。こうしたコネクターでは、中に水が入っているかもしれないという。

 過熱しているコネクターや、雨の日に地絡を検出して発電を止めるストリングを重点的に、順次、コネクターを交換する作業を進めている。

 太陽光パネルはSunEdison製で、製造・販売が終わっている。

 もしパネル自体が損傷した場合には、交換する必要が出てくる。高森町のミドルソーラーと宮崎県小林市のメガソーラーが、このパネルを使っており、備蓄している同じパネルを使って交換している。

 備蓄している在庫パネルがなくなった時点で、交換が必要になったパネルは、経済産業省に届け出た上で、他社製の太陽光パネルに換えることになる。

福島県矢吹町では造成を開始

 一方、福島県矢吹町では、連系出力が20MW、太陽光パネル出力が約27.876MWのメガソーラーの造成がはじまった(図6)。

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図6●福島県西白河郡矢吹町にある
図6●福島県西白河郡矢吹町にある
(出所:BCPGジャパン)
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 このメガソーラーもSunEdisonの日本法人時代に開発がはじまったが、規模が大きいことに加えて、用地の権利や許認可が複雑なために、着工が延びていた。

 用地は、山林で登記されているが、牧草地として使われていた土地と、田畑跡の耕作放棄地を農地転用した土地からなる。バブル期にはゴルフ場の開発が計画されていたが、開発が途中で頓挫して遊休地となっていた。

 経済産業省が2018年10月に公表した「未稼働案件への措置」への対応は完了しており、当初の売電単価は維持された。ただし、運転開始期限が設定されたため、売電開始の遅れに伴い、売電期間は約18年に短くなる予定だ。

 EPCサービスは、中国のShanghai Electric Group(上海電気グループ)が担当する。太陽光パネルは中国のトリナ・ソーラー製、PCSは中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)製を採用した。

 敷地内には、大きな調整池が4カ所ある(図7)。北端に2カ所、南西に1カ所、南中央に1カ所ある。これは、福島県が示した基準に基づくもので、一般的な地域のメガソーラーに比べて、相当に念入りな対応という。

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図7●調整池は一般のメガソーラーよりも念入り
図7●調整池は一般のメガソーラーよりも念入り
(出所:BCPGジャパン)
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 埋蔵文化財がある場所は、現状を変更せず、また、地権者が不明な場所も使用せず、敷地外としている。

 南端の一角は、他の太陽光発電所の連系点となる鉄塔が建つ土地に面している。この連系点までの送電線は地中に埋設されている。この場所に近い南中央の調整池からの排水路は、傾斜などを工夫して他社のメガソーラーの地中埋設の送電線に悪影響が及ばないように配慮した。

 太陽光パネルの設置区域は元々、高低差が少ないため、大掛かりに造成することなく開発できる利点があった。雪の影響もほぼないという。

●発電所の概要
発電所名高森太陽光発電所
(S-11 TAKAMORI発電所)
所在地熊本県阿蘇郡高森町
事業用地面積1万8612m2
発電事業者高森太陽光発電所合同会社
(BCPGジャパンが100%出資している特定目的会社)
資金調達三菱電機クレジットが組成したプロジェクトファイナンスによる融資
連系出力1MW
太陽光パネル出力約1.278MW
年間発電量の実績2016年~2020年の平均で約135万100kWh
EPC(設計・調達・施工)サンエジソン建設
(現・ビーシーピージーエンジニアリング)
O&M(運用・保守)ビーシーピージーエンジニアリング
太陽光パネルSun Edison製
(出力335W/枚、3816枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
(定格容量500kW機、2台)
着工2014年10月1日
売電開始2015年2月16日
固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価40円/kWh(税抜き)
売電先九州電力グループ
●発電所の概要
発電所名福島矢吹メガソーラー発電所
所在地福島県西白河郡矢吹町上の前・清林山地区
事業用地の面積37万1220m2
発電事業者矢吹太陽光発電所合同会社
(BCPGジャパンが100%出資しているSPC)
連系出力20MW
太陽光パネル出力約27.876 MW
初年度の年間予想発電量約3万1650 MWh
(一般家庭約1万500世帯の消費電力に相当)
EPCサービスShanghai Electric Group(上海電気グループ)
太陽光パネルトリナ・ソーラー製
(出力410W/枚、6万7990枚)
PCS華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)製(320台)
着工2020年8月1日
竣工予定2021年12月31日
FITに基づく売電単価36円/kWh(税抜き)
売電先東北電力グループ