ため池で15カ所、取引先にも再エネ電気を供給する二川工業製作所

思わぬ雑草、ヌートリアに苦慮、落雷で損傷も

2021/12/01 01:20
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 兵庫県稲美町にある天満大池は、人工的に築かれた農業用ため池としては県内最古といわれる。隣には、子池となる河原山池がある。河原山池は、天満大池の調整池の役割を担っている。

 この河原山池の水面を活用した水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)が「河原山池水上太陽光発電所」で、太陽光パネルの出力は約1.428MW、連系出力が1.25MWとなる。

 2015年12月に発電を開始してから(関連コラム)、約6年が経過した現在、河原山池の水は抜かれている(図1)。堤体の大規模な工事のためである。

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図1●水が抜かれた状態の「河原山池水上太陽光発電所」
図1●水が抜かれた状態の「河原山池水上太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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 4年がかりの大規模な工事で、農地に水を供給する必要がない冬の間、水を抜いて堤体を工事する。春になると、再び水をためて天満大池の調整池としての機能を復旧する。これを4年間、繰り返していく。

 発電事業者は、建設機械や産業用ロボット・機械部品などを手がける二川工業製作所(兵庫県加古川市)である。米キャタピラーなどを主要顧客に抱えている。

 同社の太陽光発電事業は九州で始まり、その後、地元の兵庫県内においてため池の水面を活用する案件に移っていった。同社が兵庫で初めて稼働した水上案件が、河原山池の水上メガソーラーだった。

 河原山池の水上メガソーラーは美樹工業(兵庫県姫路市)がEPC(設計・調達・施工)サービスを担った。水面に太陽光パネルや接続箱を浮かべるためのフロートには、フランスのシエル・テール・インターナショナル製、太陽光パネルはシャープ製の水上専用の受注生産品、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 河原山池の水上メガソーラーは、当初から水を抜くことを想定した設計としていた。例えば、フロートを連結して構成した長方形状の「アイランド」を、段々にズレながら浮かべる構成とした(図2)。

図2●水のある時期の様子
図2●水のある時期の様子
(出所:二川工業製作所)
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 導入コストや施工の効率を考えると、理想的な配置ではない。段々にズラした目的は、発電効率の高い真南に太陽光パネルを向けつつ、池の管理を阻害しないようにすることにある。今回のような定期的な堤体の改修工事の際の重機による作業を考慮した。

 河原山池の池底は、比較的平坦な場所が多いように見える(図3)。フロートが着床した状態でも、大きな凹凸などはほぼ見えず、着床に伴ってフロートの連結部が外れたり、太陽光パネル同士を結ぶ電線が外れたりといったリスクは相対的に少なそうだ。

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図3●池底は比較的平坦にみえる
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図3●池底は比較的平坦にみえる
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図3●池底は比較的平坦にみえる
(出所:日経BP)

 着床による異常は、いまのところないという。比較的堅牢に設計したことも奏功しているのではないかという。電線の外れなどは、水を再びためてフロートが再浮上する際にも生じやすいので、再浮上後に確認したいとしている。

 池底によっては、事前に手を加えて望ましい状態に改良した例もある。施工時に水を抜いて、池底を整えた上、水草の根などを焼き切るといった措置が代表的という。

 着床したことによる利点もある。太陽光パネルや電線を点検しやすい点である。赤外線カメラを使ったパネルの点検や、ストリングごとの直流回路の点検の作業効率が高まる。

18円の水上案件も稼働

 二川工業製作所が開発・運営している太陽光発電所は現在、40カ所・合計出力約44.8MWとなっている(図4)。このうち兵庫県内の水上で15カ所・約26MWと大半を占めている。

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図4●兵庫のため池の案件が大半を占める
図4●兵庫のため池の案件が大半を占める
中は広谷池の特高連系の水上メガソーラー、下は鹿児島県の20kWの風力発電所(出所:二川工業製作所)
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 兵庫県のため池に設置している太陽光発電所は、主に買取価格が32円/kWh(税抜き、以下同じ)となっている。このほか、27円/kWh、24円/kWh、18円/kWhの案件も稼働している。

 今後、12円/kWh以下の買取価格を想定した案件を開発する可能性もある。この単価の場合、開発初期から自社で手掛けない限り実現は難しいのではないかと試算している。

 このほか、九州の地上にも10カ所・約11.5MWある。また、風力発電所も2カ所あり、島根県隠岐郡で1.2MW、鹿児島県肝属郡で20kWをそれぞれ運営している。

 兵庫県内の水上太陽光発電所の発電量は、いずれも好調に推移しているという。相対的に、兵庫県の水上太陽光発電所の方が、九州の地上設置型太陽光発電所よりも発電効率が高いような印象を持っている。

 播磨と呼ばれるこの地域は、日射の状況が太陽光発電に向くのではないかとみている。雲も少ないように感じる日が多い。

 これに、夏の高温期に、池の水面によって太陽光パネルが冷やされる効果も加わる。結晶シリコン型の太陽光パネルが高温期に発電効率が下がってしまう特性を緩和できている印象があるという。

 一方で、予想していなかった不具合も出てきた。池の周辺に住みついている小動物のヌートリアが、池を泳いでフロートにはい上がり、電線をかじって損傷させる被害が起きた(図5)。

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図5●ヌートリアにかじられた電線(上)
図5●ヌートリアにかじられた電線(上)
(出所:二川工業製作所)
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 ヌートリアは、外来の小型哺乳類で、北米に多く生息している。カピバラに似た、可愛らしい容姿をしているが、日本固有の生態系を脅かしたり、農作物を食べたりするだけでなく、巣穴を広げることで河川の堤防や池の堤体を決壊させた例まで報告されており、駆除計画を策定した地方自治体も多い。

 二川工業製作所の水上太陽光発電所では、兵庫県内で被害が目立ち、河原山池のほか、桜上池(福崎町)、駒が池(加西市)という3カ所で、フロート上で電線がヌートリアにかじられて損傷した。

 河原山池では、堤体の工事が始まると、被害は収まった。また、寒い時期は比較的、被害に遭うことが少ない傾向にある。

 新しい電線に交換するだけでなく、保護用のカバーを追加して復旧している。しかし、その上からかまれ続けて、再び損傷してしまうこともある。有効な対策を見い出せず、対応に苦慮している。

 また、落雷の被害にも遭った。焼野池の太陽光発電所では、太陽光パネルに直撃雷が落ちたとみられる。パネルやフロートなどに落雷による損傷の痕跡が残っていた(図6)。

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図6●焼野池における落雷による損壊の跡(上)
図6●焼野池における落雷による損壊の跡(上)
(出所:二川工業製作所)
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 水面に落雷し、太陽光パネルが損傷した発電所もある。いずれもすべてのパネルのうち4分の1から3分の1が損傷して交換した。

 また、水面に浮かぶ設備だからと言って、雑草が生えないわけではない。周囲から土と種が飛んでくるので、フロート上や電線の保護管などの上にうっすらと積もり、そのうちに雑草が生えてくることがある。

 現地の状況を見ると、電線の保護管を束ねている場所で、とくに雑草が生えやすいように見える(図7)。

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図7●雑草が生えやすい場所がある
図7●雑草が生えやすい場所がある
(出所:日経BP)
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 こうした雑草は2年に1回ずつなど、目立ってきた頃に除草している。

 太陽光パネルや接続箱、電線などの発電設備の点検は年に一度、実施している。また、ほとんどの池で水質の調査を定期的に実施している。最も多いのは、河原山池で年8回実施している。どの池でも、水質の異常が見つかったことはないという。

特定卸供給で国内8工場、調達先も100%再エネに

 建設機械の分野でも、サプライチェーン全体で再エネ発電電力をより多く活用しようという動きが出てきている。二川工業製作所は、自社で開発・運営している水上太陽光発電所を活用し、2020年12月には、国内の工場で使う電力を100%再エネに転換した。

 同社は、中小企業版のRE 100とも位置付けられている「再エネ100 宣言RE Action」に参加して、国内工場の100%再エネを実現した。

 二川工業製作所は、広谷池に設置した出力6.8MWの水上メガソーラーと、西池の2.2MWの案件からの発電電力を使い、国内8工場を100%再エネに転換している(図8)。

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図8●水上メガソーラーの発電電力で再エネ100%とする仕組み
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図8●水上メガソーラーの発電電力で再エネ100%とする仕組み
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図8●水上メガソーラーの発電電力で再エネ100%とする仕組み
中は広谷池の出力6.8MW、下は西池の2.2MW(出所:上は二川工業製作所、そのほかは日経BP)

 広谷池の案件は、同社では唯一の特高連系の水上メガソーラー、西池の案件は買取価格14円/kWh(税抜き)の最新の水上メガソーラーである。

 両水上メガソーラーとも固定価格買取制度(FIT)の認定案件なので、特定卸供給の仕組みを使い、関西電力送配電を介して新電力のアスエネ(東京都港区)に供給し、二川工業製作所はアスエネから発電電力を購入している。不足時には他の電源の電力から供給を受ける。これらに非化石証書を付けることで、制度上「実質再エネ」としている。

 加えて、アスエネは、ブロックチェーンの技術を応用した独自のトラッキングシステムで電源を特定している。

 二川工業製作所では、自社の水上太陽光発電電力を活用するこの仕組みを製造パートナー企業にも活用できるようにし、同社が関連するサプライチェーンでの再エネ100%にも寄与し始めている。

 2021年11月には、部品を調達している阪神メタリックス(神戸市長田区)が、同じアスエネの再エネ100%電気の利用を始めた。


●発電所の概要
発電所名河原山池水上太陽光発電所
所在地兵庫県稲美町(河原山池)
設置面積1万5943m2(水面面積の約23%)
発電事業者二川工業製作所(兵庫県加古川市)
水面賃貸者天満大池土地改良区
連系出力1.25MW
太陽光パネル出力約1.428MW
年間予想発電量約171万kWh
EPC(設計・調達・施工)サービス美樹工業(兵庫県姫路市)
太陽光パネルシャープ製(水上専用の受注生産品、出力250W/枚、5712枚)
パワーコンディショナー(PCS)東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製
フロートフランスのシエル・テール・インターナショナル製
着工2015年7月
売電開始2015年12月
買取価格(税抜き)32円/kWh