香川県高松市に近い、木田郡三木町にある「平木尾池」の水面に、9504枚の太陽光パネルが浮かんでいる(図1)。近くにある「女井間(めいま)池」の水面にも、9408枚のパネルが整然と並んでいる。
いずれも連系出力1.99MWの水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)で、太陽光パネルの出力は「平木尾池」の設備が約2.6MW、「女井間池」が約2.8MWとほぼ同じ規模となっている。
2カ所とも、三井住友建設が開発・運営している。「平木尾池」の水上メガソーラーは2017年11月に売電を開始して丸4年、「女井間池」の設備は2020年1月に売電を開始してもうすぐ2年が経つ。
香川県は、兵庫県などと並んで農業用ため池が多い。水不足に備えるため、古くから多くのため池を築き、主に農業に活用してきた。
平木尾池や女井間池も、こうした農業用ため池である。平木尾池の水上メガソーラーの開発中に、水利組合から女井間池でも水上を活用した太陽光発電所の開発を打診されて事業化した。
建設を本業とする三井住友建設の場合、一般的な建築物などに比べると、簡易にみえる太陽光発電所についても、安全、確実に長期間、事業を運営する方針と強調している。
太陽光パネルを水上に浮かべる部材であるフロートは、自社製を採用している(図2)。
安全性や信頼性には自信があるものの、コストは安くないという。両水上メガソーラーともに、太陽光パネルは三菱電機製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。こちらもコスト最優先でなく性能や信頼性をより重視して選定した。
このように安全性・長期信頼性に十分に配慮しつつも、建設会社の経験を生かしたプロジェクト全体の効率化によって、女井間池の水上メガソーラーでは、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価は18円/kWh(税抜き:以下同)でも十分な事業性を確保している(以前のメガソーラー探訪)。平木尾池の水上メガソーラーは32円/kWhである。
このほか、2020年にも香川県坂出市で出力約1.9MWの水上メガソーラーが稼働している(図3、関連ニュース1)。さらに、フロートの外販先も少しずつ広がっている(同ニュース2:いちご、笠岡市に水上メガソーラー)。
今後は、FITに頼らない事業モデルによる水上太陽光発電所が増えてくるとみている。同社の場合、コーポレートPPA(電力購入契約)に基づくオンサイト型・オフサイト型の水上太陽光発電所のEPC(設計・調達・施工)サービスやフロート販売の引き合いが増えつつあるという。
また、オンサイト型で自家消費の場合、工場の敷地内にある工場用の排水池の活用を模索する例もある。
沿岸やダムなど、これまで水上太陽光発電所の設置例が限られている場所についても、設置場所として可能性があると見ている。とくにダムは、本業の建設で強い分野の1つである。
ただし、これらの場所では、水深が過剰に深かったり、水位差が過剰に大きい場合があることが課題となる。フロートの係留に関して、水深や水位差はできるだけ一定以内に収まっている方が設計上、好ましいという。