探訪

現地に常駐、雑草対策に農家の知見生かす、阿波のメガソーラー

除草作業を通年の契約に変え、効率・効果的に

2022/05/25 00:46
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ
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 徳島県阿波市に、連系出力が1.75MW、太陽光パネルの出力が約1.99MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)「ハンファソーラーパワー阿波 東長峰第1発電所」をはじめとする7カ所の太陽光発電所がある(図1)。

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図1●近隣で7カ所の太陽光発電所を運営
図1●近隣で7カ所の太陽光発電所を運営
(出所:日経BP、下はBoonDrone)
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 いずれも地元の四国GA(徳島県阿波市)が土地の選定をはじめとする開発当初から、稼働後のO&M(運用・保守)サービスまで手掛けている。発電事業者は、太陽光パネルメーカー大手のハンファQセルズ系のハンファエナジージャパン(東京都港区)が出資している特定目的会社(SPC)となっている。

 開発をはじめた時期や固定価格買取制度(FIT)の認定を取得した時期、認定上の発電所名がまちまちとなっている。そこで、立地する場所や開発順などをわかりやすくした通称を、それぞれの太陽光発電所に付けている。

 例えば、最初に開発した「東長峰第1」は通称で、正式な名称は「阿波西ソーラーヒルズ発電所」である。次の「東長峰第2」の正式名は「ハンファソーラーパワー徳島東長峰第2発電所」と、第1とは大きく異なる。FIT上の売電単価(税抜き、以下同じ)も40円/kWhと36円/kWhで異なる。

 「東長峰第2」は、連系出力が1.0MW、太陽光パネル出力が約1.13MW、FITの売電単価が36円/kWh。「東長峰第3」は、連系出力とパネル出力ともに422.24kWで売電単価が36円/kWh。「東長峰第4」は、連系出力1.0MW、パネル出力約1.165MW、売電単価32円/kWhとなっている。

 「中長峰第1」は、連系出力750kW、太陽光パネル出力約1.14MWで、売電単価が36円/kWh。「中長峰第2」は、連系出力1.89MW、パネル出力2.64MW、売電単価は32円/kWh。「西長峰」は、連系出力1.89MW、パネル出力約2.10MW、売電単価36円/kWhとなっている。

 いずれも、太陽光パネルはハンファQセルズ製、パワーコンディショナー(PCS)は東芝三菱電機産業システム(TMEIC)製を採用した。

 ハンファエナジージャパンは、国内で20カ所・太陽光パネル出力が約230MWの太陽光発電所を稼働させている。開発当初から地域のネットワークと密接に関連していくことを重視しており、四国GAが手掛けていた阿波の7カ所は、同社の開発方針を代表する案件の1つとしている。

 地元との関連とは、土地の取得や開発初期から地元の関係者とともに関わり、資金もできるだけ地域の金融機関から調達し、EPC(設計・調達・施工)からO&Mを一貫して委託できる地元のパートナー企業と一緒に事業を進めていくという方向性である。

 阿波市の7カ所の太陽光発電所の大きな特徴は、「東長峰第1」の隣接地に四国GAの管理拠点を設けて複数人の電気主任技術者などが常駐し、発電所敷地内の総合的な管理から、近隣地域との交流まで、日々積み重ねていることにある。

 山や田畑に近いことから、雑草の除草なども近隣地域の知見を生かすなど、地域への溶け込みの度合いが深い。

 とくに実務の中心を担っている岡本浩一主任は、地元の出身で、現在も近隣に居住しており、地域の状況や四季折々の自然の状況に敏感な農家などの声を、太陽光発電所のO&Mにうまく汲み上げているキーマンとなっている(前回の掲載:3タイプの草刈機を使い分ける阿波市のメガソーラー)。

 ハンファエナジージャパンでも、四国GAとの取り組みでは、電気主任技術者でありながら、電気設備だけにとどまらず、近隣地域の自然環境や農業にまで関心を持って発電所の運営に生かしている岡本主任の存在が大きいとしている。何か問題が生じた際も、バランスよく幅広い意見を発することができ、狭い解決策を講じることが少ないと評価している。

 例えば、発電事業に最も大きく影響するところでは、事業計画における発電量の予測の前提となるデータを見直した。

 当初活用されていた地域気象観測システム(アメダス)のデータは、吉野川より南側の山あいの地域のものだった。しかし、吉野川の南側山間部における気候と、太陽光発電所がある吉野川の北側、瀬戸内に近い気候では、かなり異なる。そこで、当初採用していたアメダスの地域のデータ(穴吹)に、瀬戸内側に近い地域のデータ(徳島)も併用して、改めて算出した。より日射量が多い前提となる。

 これまでの実績では、この日射量をより多く想定した発電量の予測よりも、上振れしている。実際には、瀬戸内側に近い徳島のアメダスのデータだけを前提に試算した予想発電量と比べても、上振れしているという。

 このように地域の気候は、近くの観測点で似ている気候に思える場合でも、実際にその地域で過ごしていると、大きな気象状況の違いがあることも多いようだ。

 また、太陽光発電に向いた南向き斜面に太陽光パネルが並んでいることも、プラス要因になっている。後ろの列への影が少ないので、短い間隔に詰めて太陽光パネルを並べて面積当たりの効率を上げている。

 年ごとの発電量は、予想を上回っているものの、2020年~21年は悪天が多く、上振れの度合いは相対的に小さくなった。

 また、雪は例年、1日降るか降らないかで、積もったとしても数cmにとどまっている。このため発電には大きく影響しない。

 しかし、30cmほど積もったことがある(図2)。2016年1月のことだった。この時は3日間ほど気温が氷点下まで下がったため、太陽光パネルに積もった雪が凍り付いてしまい、発電も3日間止まった。

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図2●約30cmの雪が積もった時の様子
図2●約30cmの雪が積もった時の様子
(出所:四国GA)
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 発電設備は、機械的な要素が少ないこともあって、日々の手間は比較的少ないという。PCSの冷却用ファンや接続箱のヒューズを交換したが、大きな支障につながるような電気的なトラブルは起きていない。

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