「パワコンの基礎が傾き、法面は崩れ、布基礎が割れる」、熊本地震で被災したメガソーラー(前)

パワコンは電気的にも故障、売電再開までに約3カ月間を要す

2019/06/20 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 2016年4月に起きた熊本地震は、震度7をはじめとする強い揺れが続いたことで、熊本県を中心に、甚大な被害を及ぼした。この地震で大きく動いた断層の直上やその近隣と、それ以外の場所では、被害の状況に大きな違いがあった(関連コラム1:益城町にて、地震後のメガソーラーを巡る、同コラム2:益城町の住宅用太陽光の教訓、同コラム3:「地震で約半年遅らせました」、熊本最大のメガソーラー竣工)。

 太陽光発電設備に関しては、住宅の屋根上太陽光が建物と共に損壊した例は目立ったものの、地上設置型の事業用太陽光発電所については、大きな被害例が報じられず、「野立て太陽光は地震の影響を受けにくい」という印象を与えていた。

 しかし、断層の直上や近隣に立地している太陽光発電所の中には、地震の大きな揺れや断層の動きによって、大きな被害を受けた発電所があった。今回は、デンケン(大分県由布市)が開発や運営に関わっているメガソーラー(大規模太陽光発電所)における被災例を紹介する(図1)。

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図1●PCSなどを支える基礎が傾き、法面が崩れ、アレイも波打った
(出所:デンケン)

 デンケンが熊本県内で開発・運営しているメガソーラーの1つに、熊本市南区城南町藤山に立地する「ソーラーファーム城南藤山」がある。城南町に近い益城町は、熊本地震において、震度7を2回、計測するなど、最も強く揺れた地域だった。

 太陽光パネル出力は約1.126MW、連系出力は1MWである。熊本地震が起きた前年の2015年8月に売電を開始していた(図2)。

図2●ソーラーファーム城南藤山
(出所:デンケン)
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 地震の後、敷地内では、コンクリート基礎が大きく傾き、割れていた。法面をはじめ、地割れした地面に雨水が流れ込んで崩れ、土木の補修が必要になった場所もあった。

基礎が傾いたまま、水平に固定できるように補修

 大きな損壊の一つは、パワーコンディショナー(PCS)を支えているコンクリート基礎が傾いたことだった(図3)。PCSの隣に建つ作業用の小屋を支えるコンクリート基礎にも、同じような被害が見られた。

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図3●基礎が傾いたままでも地面に水平に固定できるように復旧
(出所:デンケン)

 この基礎は、一般的なメガソーラーと比べても、面積が広く、多くのコンクリートを固めて施工したもので、長期の信頼性や安全性に十分に配慮した設計といえそうだ。

 このような頑強、重厚に見えるコンクリート基礎が、PCSと昇圧変圧器(キュービクル)を支えたまま、傾いてしまうところに、熊本地震の揺れの強さを改めて印象付ける。

 デンケンによると、このPCSの大きなコンクリート基礎の傾き方などをみても、この基礎の直下付近で、大きな揺れを引き起こした地震の一つが発生したとみている。

 PCSを支えるコンクリート基礎は、西側が低くなり、東側が高くなるように傾いた。その高低差は10cm近くにもなる。南北方向にも、高さのズレが生じた。

 復旧には、コンクリート基礎の傾きを根本的に直すことが理想かもしれない。しかし、そのためには、事業的に見て過大なコストがかかる。一方で、基礎に最も求められている耐荷重などの機能には、大きな影響は及んでいなかった。

 そこで、コンクリート基礎を施工し直すことは避け、傾いた状態の基礎を生かしつつ修繕することになった。

 当たり前だが、基礎が傾いたことで、その上のPCSも同じ角度に傾いてしまった。それを是正するため、基礎が傾いたままでも、PCSは地面に垂直になるように、水平レベルの補正用の構造を追加した。

 基礎の傾きを補うような構造を、コンクリート基礎上に新たに築いた。PCSをジャッキアップして地面と水平な状態にしておき、この水平調整用に加えた構造の上に降ろして復旧した(図4)。

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図4●復旧後の様子
(出所:日経BP)

 PCSそのものにも、電気的なトラブルが生じており、本格的な修理が必要になった。こうした理由から、売電を再開するまでに、約3カ月間を要した。

布基礎が奏功、アレイの倒壊を免れる

 太陽光パネルの設置区域の中にも、地面が波打つ場所があった。こうした場所では、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)を支えているコンクリート基礎が、割れたり傾いたりした(図5)。

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図5●波打ったアレイと割れた布基礎
(出所:デンケン)

 城南藤山のメガソーラーでは、東西方向に長くコンクリートが伸びた形状の、いわゆる「布基礎」と呼ばれるタイプの基礎を採用している。

 布基礎は、東西方向の地盤沈下などに強いとされ、たとえ不等沈下した場合でも、コンクリートの長い基礎形状が生き、沈下した地面から浮かび上がるようなことがあっても、基礎は真っ直ぐの構造を維持できる可能性が高い。このため、架台やその上の太陽光パネルに、過剰な応力がかかることを防げる場合が多い。

 このメガソーラーでは、この効果が奏功し、布基礎の一部が割れたり傾いても、アレイの倒壊は免れた。

 この復旧では、一度アレイを持ち上げて、基礎と架台を接続するアンカーから架台を外し、再度、アンカーと架台の固定を調整し直すといった作業を経て、地震後の新たな地面の状態に合わせ、アレイを再び水平に近い状態に調整した(図6)。

図6●固定の工夫で波打ちを吸収
(出所:日経BP)
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法面の一部が崩れ、大規模な土木工事で復旧

 敷地の西側は、隣の農地に向けて下っている。この法面の一部が、地震によって崩れた。崩れた場所の法面は、コンクリートを多用して作り直した(図7)。

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図7●崩れた法面を復旧
(出所:デンケン)

 こうした大きな土木工事が必要な復旧箇所もあった。

 PCSの近くにあるコンクリートの擁壁にも、大きな割れが生じた(図8図9)。

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図8●割れた擁壁
(出所:デンケン)
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図9●擁壁も復旧
(出所:上はデンケン、下は日経BP)

 デンケンの場合、地震保険に加入しているのは、南海トラフ地震時に津波による被災が予想されている場所に建つ1カ所の発電所だけだった。

 地震保険は、通常の損害保険に比べて2倍近い保険金の支払いとなるためである。このため、今回の発電所の復旧は、自己資金で賄った。