海外製の分散型パワコンの盲点、「コネクタの損傷リスク」

エネテク 第27回

2019/07/04 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回、紹介するのは、最近多く採用されている、いわゆる「分散型」のパワーコンディショナー(PCS)に特有のトラブルである。分散型は、ここ数年、大規模な太陽光発電所においても、初期投資と売電ロスを減らせるという期待から採用が増えている。

 分散型のPCSでは、国内メーカー製と海外メーカー製で、点検時の安全性や損傷のリスクが大きく異なる。国内メーカー製の場合、点検を想定した設計となっていることから、点検時の安全性、損傷のリスクは少ない。

 外から筐体の扉を開けることができ、スイッチを使ってストリング(太陽光パネルを接続する単位)ごとに直流の発電電力の入力を遮断するという、電気的な安全を確保した状態で絶縁抵抗を測定できる。

 点検上で問題となるのは、一部の海外メーカー製である。欧州や東アジアのメーカーが製造・販売し、国内のメガソーラー(大規模太陽光発電所)における採用が増えている。

 こうした海外メーカー製の分散型の機種は、点検を想定した設計となっていないことがほとんどである。高圧の太陽光発電設備を、電気主任技術者が定期的に点検するという制度は、世界中で日本と韓国にしかないためで、点検時の安全性を考慮せずに設計されていることがほとんどだ。

 点検を想定していない設計とは、例えば、筐体の扉が封印され、開けられないことがある。封印を解いて開けてしまうと、保証の対象外となる。

 より大きな問題は、スイッチを備えておらず、ストリングごとに直流の発電電力の入力を遮断できないことにある。入力端子はコネクタに繋がれており、そのコネクタに、太陽光パネルからの発電電力が流れてくる電線を直接、差し込む仕様となっている。海外メーカー製の分散型PCSのほぼすべての機種が該当する。

 この状態で、定期点検時に直流回路の絶縁抵抗を測定するには、コネクタから電線を抜いて、絶縁抵抗を測定し、再び電線をコネクタに差し込んで復旧することになる。この作業に、安全性のリスクと損傷のリスクがある。

 こうしたリスクへの対応として、例えば、中部電気保安協会は、太陽光パネルからの発電電力が流れている日中に、太陽光パネル側の電線とコネクタを抜き差しする作業を禁じる内規を設けている。この内規のため、該当する状況にある分散型PCSを経由した直流の絶縁抵抗を日中に測定する作業は、受託していない(関連コラム:分散型パワコンの盲点「点検時の感電・損傷リスク」、保安協会が断る場合も)。

 今回、紹介するのは、もう一方の損傷リスクである。コネクタが電線の抜き差しにどの程度、耐えられるのかが問われる。

 海外メーカー製の分散型PCSは、点検を前提とした設計ではないので、スイッチを備えておらず、コネクタやその周辺についても、電線を繰り返し抜き差しする作業を想定していないと考えられる。点検後の復旧後、損傷して送電できなくなった例も、実際に生じている。

 エネテクが点検を受託した発電所でも、海外メーカー製の分散型PCSのコネクタの損傷を見つけたことがあるという。

 エネテクによると、O&Mの年間契約を受託している太陽光発電所で、年に一度のPCSの定期点検(精密点検)を実施したところ、海外メーカー製の50台の分散型PCSのうち3台に、直流側のコネクタ関連の異常を発見した。

 この発電所では、2つの異常を発見した。1つは、コネクタがぐらぐらと揺れて不安定になっている状態(動画)、もう1つは、コネクタ内の接合部が融着している状態だった。別の発電所では、交流側の出力部が焦げている状態を発見したこともある。

コネクタがぐらぐら揺れる様子
(出所:エネテク)

 今回の発電所で、コネクタがぐらぐらと動いて不安定になっているPCSについては、コネクタの接合部で治具を使って接合コネクタを取り外して、電線にコネクタが付いた状態で絶縁抵抗を測定した。

 接続コネクタから電線を抜くとかえって危険なので、コネクタで回路を切り離すイメージの措置を取った。コネクタのプラス、マイナスで接合している部分を、治具を使って切り離す。

 ただし、そのまま送電を復旧することは危険と判断し、そのPCSからの送電を遮断した。

 ぐらぐらとした状態では、適切に固定されず、時折除く隙間から、水分や虫などが筺体内に入り込みやすくなる。これによって、直流の入力部だけでなく、PCS内にも安全上のリスクが及ぶ恐れがある。

 ぐらぐらと揺れて不安定になっているコネクタは、筺体の内側から固定している六角ナットが割れていた(図1)。これによって、筐体にコネクタをしっかりと固定できなくなり、ぐらぐらと動く状態になっていた。

図1●ナットが割れていた
(出所:エネテク)
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 このナットが割れた状態は、筐体の扉を開くことで確認できたが、その扉は、封印があり、本来開けてはいけないものだった。だが、ナットの状態は、筐体の内側からしか見えない。前述したように、封印を解いてしまうと、メーカー保証の対象外となる。

 エネテクが、この扉を開けたのは、以前に開けた形跡が残っていたためだった。同社の推測では、施工時に誤って開けてしまったのではないかとみている。

 このように、海外メーカー製の分散型PCSには、国内メーカー製とは大きく異なるために、どのように電線を接続してよいのか、悩む施工会社も多いのではないかと見ている。

 これによって、力づくで電線をコネクタに挿し込んで、コネクタやナットを損傷してしまったり、メーカーが空けることを禁じている場所の扉を開けてしまったりといった状況が起きている可能性がある。

 もう一つの不具合である、接合部が融着している状態のコネクタについては、絶縁抵抗を測ることすらできなかった。このPCSも、送電を続けるのはかなり危険だと判断し、送電を遮断した。

 コネクタ内の接合部が融着している状態は、コネクタへの圧着不良や嵌合不良が原因とみられる。これにより、接合部を外せない状態になっていた。

 赤外線カメラで該当部の熱分布の画像を撮影すると、コネクタが過熱していることがわかる(図2)。日中は太陽光発電電力が流れ込むため、この過熱は止まらない。何らかの影響で、発火の原因となる恐れがあり、危険な状態としている。

図2●コネクタが過熱していた
(出所:エネテク)
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【エネテクによるトラブル・シューティング】