アリが電線を食いちぎり、メガソーラーが稼働停止!

エネテク 第28回

2019/07/18 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回、紹介するのは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)という、スケールの大きな設備が、「アリ」によって発電停止に至ったという、「大が小に屈する」逸話のような例である(図1)。

図1●アリがあけたと見られる配管の穴
(出所:エネテク)
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 関東地方にある出力1MWのメガソーラーにおいて、遠隔監視システムを通じて電気主任技術者に対して、パワーコンディショナー(PCS)が発電を停止したという警報が届いた。

 このメガソーラーの連系出力は1MWで、定格出力1MW機のPCSで制御している。このため、この1台にトラブルが生じると、すべての売電が止まる。

 警報を受けて、電気主任技術者はメガソーラーに駆けつけた。PCSの表示画面を確認したところ、太陽光パネルの発電電力がPCSに入力されるまでの直流回路が地絡(絶縁不良によって電流が大地に流れてしまう状態)していることが示されていた。

 しかし、このメガソーラーには、直流回路の不具合を突き止めるノウハウがなかった。電気主任技術者が担う担当業務は、PCSで直流から交流に変換されて以降の電気設備に関する保安管理業務が中心だからである。こうした太陽光発電所は多いと思われる。

 そこで、自力ではできない直流回路の不具合の検査を、エネテクに依頼した。調査を受託したエネテクは、現地の状況を調べた。電気的には、まず直流の約230回路の絶縁抵抗を測った。接続箱の入力端子を通じて測定する。この絶縁抵抗測定によって、2つの直流回路に地絡が生じていることを特定した(動画)。

動画●地絡している直流回路を発見(出所:エネテク)

 この次のプロセスで、思わぬ障壁があった。メガソーラー側に、直流回路の図面の用意がなかった。つまり、太陽光パネルがどのように接続され、接続箱に発電電力が入力されているのかが、わからない。

 そこで、エネテクでは、地絡を検出した直流回路が、どの太陽光パネルによって構成されているのかを調べた。この調査では、戸上電機製作所が製造・販売している故障パネル特定装置「セルラインチェッカ」を使った。

 「セルラインチェッカ」は本来、不具合の生じた太陽光パネルを含むストリング(パネルを接続した単位)を絞り込んだ後に、不具合のある太陽光パネルを特定するために使う機器である(関連コラム)。

 「セルラインチェッカ」のメインの使い方は、接続箱のブレーカーの入力側端子に送信器を取り付けて、検査用の信号をストリング内に送信する。本来の使い方は、その状態で、そのストリングを構成するパネルを、携帯型の受信器で触れながら歩いて、受信器の反応から不具合パネルや、パネル内の断線箇所などを特定する。

 これに対して、ストリングを構成している太陽光パネルの配置を特定する場合には、入力端子に送信器を取り付けたストリングに連なるパネルに受信器を近づけると、光と音によって受信器が反応する機能を応用する。違うストリングに連なるパネルの場合には、受信器が反応しない。

 本来、あってはいけない状態ではあるが、設計時の図面と異なるストリング構成となっていたり、今回の例のように、図面が残されていないといった理由で入手できない場合など、まずストリングを構成するパネルの配置を把握する必要がある時に、国内のメガソーラーでこの応用が広く使われている。

 エネテクでは、こうして直流回路の図面が得られなかったメガソーラーにおいて、地絡した2回路を構成している太陽光パネルを特定し、電線とパネルの状態を調べた。

 この結果、いわゆる「渡り配線」などと呼ばれる状態で配線された配管の周辺で地絡し、そこに大量のアリが集まっていることを発見した(動画)。

動画●渡り配線の配管に大量のアリ(出所:エネテク)

動画●穴があいていた配管付近(出所:エネテク)

 渡り配線は、またぎ配線とも呼ばれ、東西方向に隣り合うアレイ(パネルを架台に固定する単位)をまたいで直流回路を構成する場合に生じる。さまざまなトラブルを引き起こしやすい個所になっている。

 エネテクでは、地絡していた直流回路を構成していた渡り配線を調べた。

 すると、蟻が空けたと思われる穴を発見した。配管を切り開くと、直流の電線の樹脂の被覆はボロボロに破られ、芯線(銅線)がむき出しになって露出していた(図2)。

図2●芯線まで噛みちぎられていた
(出所:エネテク)
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 配管内は、アリの巣のような状態になっていた。この状況から、配管も配線の被覆も、アリが食い破ったとみられる。

 小さなアリだが、日々の小さな営みの積み重ねが、配管と配線を食いちぎり、PCSの稼働を停止させ、メガソーラー全体の売電を止めた。

 このメガソーラーは、エネテクによる調査と対処策の提案に従い、直流の配線を変え、復旧したという。

 アリが生息する環境は、国内のどこにでもある。今回の例のような状態は、特殊なことではなく、多くの発電所で起こりうるといえよう。

【エネテクによるトラブル・シューティング】