「雨が降ると漏電する」太陽光パネル、豪雨時の測定で異常値

エネテク 第29回

2019/07/31 05:00
加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

 今回のシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に設立された電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回、紹介するのは、太陽光発電所において、雨が降った時だけに生じるという、あまり知られていない太陽光パネルの地絡の例である。

 この現象は、エネテクがO&Mを受託している複数の太陽光発電所で生じている。雨の日に、パワーコンディショナー(PCS)単位の遠隔監視システムが地絡を検出し、稼働を停止する。PCSの稼働停止の翌日、エネテクの点検担当者が現地に向かい、安全を確認した上で、漏電遮断器(ブレーカー)をオン(入)に切り替える。PCSを再起動後、雨天でなければ、通常通りに発電が復旧する。その後、再び雨が降った日には、またPCSが停止する。

 ある低圧の事業用太陽光発電所では、この現象が短期間に10回以上も頻発した。この発電所では、雨天時にPCSが地絡を検出して稼働を停止すると、導入しているNTTスマイルエナジー(大阪市中央区)の遠隔監視システム「エコめがね」を通じて、PCSの稼働停止が通報される。

 この発電所は出力が約50kWで、定格出力10kWのPCSを5台設置している。雨天時に稼働を止めるPCSは、毎回同じではない。気まぐれのように、その度に違うPCSが停止する。大雨の際には、それだけでなく、PCSからの送電先である集電箱の漏電遮断機まで落ちることもある。

 エネテクでは、原因を調査した。まず、直流側の電線やコネクタの状態を確認すると、すべて正常だった。これによって、太陽光パネルに原因があると推測できた。この発電所では、結晶シリコン型の太陽光パネルを採用している。

 地絡による稼働停止は、雨天時に起きている。そこで、エネテクでは、雨が降った時だけに生じる太陽光パネルの異常があるのではないかと推測した。

 ただし、電気的な点検は通常、雨天時には実施しない。その理由は、おもに2つある。1つは、感電などのリスクが高まるため。もう1つは、遠隔監視ステムの仕様による。

 この低圧発電所が導入している「エコめがね」は、その日の12時~14時59分の約3時間の発電量の計測結果から、その時間帯に過剰に発電量が下がっていたり、停止していた場合(発電量が0、もしくは0相当)、その日の夜、23時ころに発電事業者やO&M事業者に対して警報を発する仕様となっている。

 このため、警報に気付いて遠隔監視システムの表示画面を通じて、実際に発電が停止していたり、過剰に発電量が下がっていたことを確認しても、現地に駆け付けて状況を把握できるのは、翌朝以降となる。

 しかし、翌朝には、天候が回復していて、雨が降っていないことが多い。こうした点からも、雨天時に点検することは難しい。

 エネテクによる点検も、最初は雨が降っていない時に実施した。この点検では、太陽光パネルの異常を発見できなかった。

 こうした状況の中、感電などのリスクを排しながら、安全かつ雨天時の状況を再現できる手法として、同社では、雨の降っていない時に、噴霧器をつかって水で濡らし、その状態で1枚ずつ太陽光パネルを点検した(図1)。

図1●噴霧器を使って小雨の状況を再現したときの様子
(出所:エネテク)
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 すると、水に濡れた状態で計測すると、絶縁抵抗値が極端に低くなる太陽光パネルがあることがわかった。通常ならば50~100MΩといった絶縁抵抗値を示すはずが、濡れた状態で計測すると、1MΩ程度に数値が下がっていた。

 エネテクでは、この絶縁抵抗値の極端な差が、雨天時にPCSが稼働を停止する原因になっているのではないかと推測した。

 しかも、噴霧器で濡らした状態は、小雨に相当する雨量にとどまる。もし大雨の状況を再現して、その状態の太陽光パネルの絶縁抵抗値を計測すれば、おそらく1MΩ以下の数値に下がるパネルが出てくることが予想できた。

 この状況を、太陽光パネルメーカーに確認すると、「雨天時に、パネルの絶縁抵抗値が下がるのは当然の現象」、「その際の絶縁抵抗値は、1MΩ以上あれば製品として問題ではなく、異常ではない」という回答だった。

 ここまでの状況を、第26回「太陽光パネルの絶縁不良か? 増えてきた「雨天時の原因不明の地絡」」で紹介した。

 その後、エネテクでは、この発電所において、雨が降ってPCSが停止してしまう時には、絶縁抵抗値が1MΩ以下に下がっている太陽光パネルがあることを、豪雨時に実際に点検して突き止めた(図2)。

図2●接続箱を通じて直流回路ごとの絶縁抵抗値をまず計測
(出所:エネテク)
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 2019年春のある雨天日の夜、この発電所から、これまでと同じように、また地絡によるPCSの停止が通報された。この日は、土砂降りの雨だった。

 天気予報で、この発電所の現地では、翌朝以降も前日と同じような土砂降りになることが予想できた。

 そこで、同社では、点検従事者の安全上のリスクを最小に抑える備えを講じつつ、土砂降りの中で、地絡している回路を構成している太陽光パネルについて、1枚ずつ絶縁抵抗値を計測することにした。

 翌朝、発電所に駆け付けると、予想通り、土砂降りの状況が続いていた。そして、PCSの稼働状況を確かめるために、まずPCSからの送電先となる集電箱の状況を調べてみると、集電箱に送電している5台のPCSのうち、3台の入力端子に接続されているブレーカーが、遮断(トリップ)していた。

 トリップしていたブレーカーはいずれも、地絡を示す表示ボタンが起動していた。このため、これまでと同じように、この3台のPCSに入力している直流回路において、雨が降ったことで漏電している太陽光パネルがあると考えられた。

 停止している3台のPCSには、接続箱を通じて太陽光発電電力が送電されている。そこで、該当するPCSに送電している接続箱の入力端子を通じて、ストリング(太陽光パネルを接続した回路)ごとに、絶縁抵抗値を計測した。これによって、絶縁抵抗値が極端に低いストリングを5本、特定した(動画1)。

動画1●地絡している直流回路を発見
(出所:エネテク)

 この3台に入力しているストリングのうち、それぞれ2回路、2回路、1回路で絶縁抵抗値が極端に低く、漏電していることを示していた。

 次に、絶縁抵抗値が極端に低いストリングを詳細に調べた。太陽光パネル同士を接続しているコネクタを切り離し、パネル1枚1枚すべて絶縁抵抗値を計測した。

 太陽光パネルごとに、絶縁抵抗値は大きな幅でバラついた。絶縁抵抗値が10MΩ以上のパネルもあれば、パネルメーカーが「不良」と認めるとしている1MΩを下回る値のパネルもあった。中には約0.4MΩという、パネルメーカーが主張している異常値を大きく下回るパネルもあった(図3)。

図3●0.4MΩ台の絶縁抵抗値を示すパネルも
(出所:エネテク)
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 この状態を確認した上、絶縁抵抗値が極端に低く、漏電していると思われる太陽光パネルを含む直流回路を、接続箱の開閉器(スイッチ)を使ってオフとし、この状態でPCSを再起動させてみた。すると、PCSは再起動できた。

 その後、漏電していると思われる太陽光パネルを含む直流回路を、接続箱の開閉器を使ってオンに切り替えてみた。すると、約5分後に、再び集電箱の漏電遮断器が作動し、該当する3台のPCSからの送電を止めた(動画2)。

動画2●漏電遮断器が動作した瞬間
(出所:エネテク)

 もし、交流側が漏電していた場合、集電箱の漏電遮断器は、即座に作動する。このことからも、直流側の漏電によるものであることは明確だった。

 漏電していると思われる太陽光パネルを含む直流回路からの送電を再開してから、約4分59秒間は、漏電遮断器は動作しなかった。

 この約5分間という時間は、直流でPCSまで送電される太陽光発電電力が、PCS内で交流に変換される「スイッチング」と呼ばれる動作のサイクルに一致する。スイッチング時に漏電が検知され、漏電遮断器が起動していることがわかった。

 この結果から、エネテクでは、雨天時だけに起きる太陽光パネルの漏電があることを、ほぼ突き止めることができたと考えた。しかし、この結果をメーカーに改めて示したものの、現状ではメーカー負担による交換は実現していないという。

 こうした雨天時のみ生じる太陽光パネルの漏電による地絡は、各地で生じている可能性もあるという。ただし、現在はほとんど知られていない上、雨の日に計測するという、通常の点検では避ける作業を伴うために、原因不明のまま見過ごされているとみられる。化合物型のパネルでも、似たような状況が生じている例がある。

 エネテクでは、雨の日に生じる漏電は、設置されてから年月を経るほど、発生する可能性が高まってくると予想している。

 このため、研究機関など、第3者の専門機関において、現象が生じる原因やプロセスなどが解明され、業界全体の知見として共有されるべきと考えている。

【エネテクによるトラブル・シューティング】