飯舘村のメガソーラーに直撃雷!? 接続箱2つで火災

2019/08/15 18:38
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

飯舘村も出資した復興メガソーラー

 8月9日、福島県飯舘村深谷に稼働中の1.5MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)で2回、火災が発生し、消防車が駆けつけて消し止めた。けが人はいなかった。接続箱2つと太陽光パネル数枚が焼損しており、村と南相馬署では、8日夕方の落雷が原因とみている。

 火災のあったメガソーラーは「深谷地区復興拠点エリア太陽光発電所」。飯舘村と東芝など民間企業による出資で設立した「いいたて深谷地区ソーラー合同会社(代表・菅野典雄村長)」が事業体になっている。国の復興支援補助金を活用して建設し、2016年5月に稼働した。売電収入は村の基金に組み入れられ、復興事業に使われている。

 東芝が設計・施工を担い、約2.7haの敷地に6930枚の太陽光パネルを設置した。パネル横置きで縦3段(枚)、横50~60列(枚)の長い構成のアレイ(パネルの設置単位)が、ほぼ長方形で平坦な敷地に45アレイ、整然と並んでいる。積雪に配慮し、架台最低部と地面までの設置高は約1.5m、設置角20度程度で、アレイの最高点は約2.5mになっている(図1)。

図1●県道沿いにある「深谷地区復興拠点エリア太陽光発電所」
(出所:日経BP)
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前夜に激しい雷雨で停電

 村によると、前日から火災発生までの経緯は以下になる

 火災前日の8日夕方4時半から5時ごろ、飯舘村一帯では激しい雷雨が20~30分間続き、商用系統が停電した。停電は10分程度で復帰した。役場庁舎にいた職員によると、雷が光った直後に音が鳴るパターンが断続的に続いたことから、かなり近い距離で落雷があった可能性があるという。火災のあったメガソーラーは、役場庁舎から数km程度の距離になる。

 商用系統が停電したことから、この時点で飯舘村村内にある太陽光発電設備は、系統から解列してパワーコンディショナー(PCS)が停止した。

 翌9日の早朝、深谷地区のメガソーラーの保安業務を担当している電気保安協会の電気主任技術者が、連系設備を点検しつつ、PCSを再稼働させた。この時、太陽光パネル側の設備での異常には気づかなかったという。

 その後、午前7時ごろ、メガソーラーから煙が出ているとの通報を受け、消防が現場に急行して消し止めた。煙が出ていたのは接続箱の1つで、内部はほぼ黒焦げ状態に焼損していた。そして、そのアレイの太陽光パネル数枚の裏側の配線が焼け切れており、バックシートが黒く焦げていた。この時点で、全PCSを停止させた(図2)。

図2●朝7時に火災の発生した接続箱
(出所:日経BP)
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 この火災事故を受け、村では、O&M(運営・保守)を担当している事業者に連絡して、現場の確認を依頼した。到着した技術者は、念のため、各アレイに1つもしくは2つ設置されている接続箱を順番に、扉を開けて内部を点検していった。

 その過程で、午後2時15分頃、早朝に火災のあった接続箱からアレイ1つ隔てたアレイに設置していた別の接続箱を開けた直後、内部から出火して燃え始めた。そこで、再び消防に連絡して、間もなく消し止めたという(図3)。

図3●午後2時過ぎに開扉して発火した接続箱
(出所:日経BP)
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 この2回目の火災の原因は、開扉前から接続箱内部で短絡や漏電により樹脂が高温になっていたものの、筐体の密閉性が高く酸素不足で発火に至らなかった状態のなか、開扉によって酸素が供給されたために、一気に発火したのではないかと推察された。

 太陽光発電システムは、PCSを停止させても、太陽光パネルに日が当たると発電し、ストリング(パネルの直列回路)や接続箱に不具合があれば、短絡や漏電が起きて発火の恐れがある。2回目の火災は、こうしたリスクが顕在化したものと考えられた。

パネルのケーブルをすべて外す

 そこで、村では、2回目の火災を受け、落雷によって不具合の起きている箇所が、かなり広範に及ぶ可能性が出てきたこと。加えて、ストリング回路がつながっていると、パネルが発電して通電してしまうことから、すべての接続箱のブレーカーを落とした上で、太陽光パネルとパネルをつなぐケーブルのコネクタを外して、接続部を被覆する処置をした(図4)。

図4●2度の火災後、すべてのパネル・ケーブルの接続部を外した
(出所:日経BP)
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 村では、今回の2つの接続箱からの火災と、太陽光パネルの焼損に関して、専門家による詳しい現場検証と分析を待たないと、その原因に関して断定的なことは言えないとしている。ただ、前夜の落雷による一部の設備への被雷が、火災に至る不具合の引き金になったことは、ほぼ間違いないと見ている。

 雷による電気機器への被害は、「直撃雷」と「誘導雷」がある。「直撃雷」は、その名の通り、建物や機器、送電ケーブルなどに、直接、雷が落ちることを指す。また、「誘導雷」は、設備の近くに雷が落ちた際の電磁界によって起きる。落雷による電気エネルギーが空間を伝搬し、送電線や通信線などに雷サージ(雷の影響により、瞬間的に発生する過電圧や過電流)が浸入し、電気機器に定格を大きく超える電圧がかかり、損傷する。

 野立ての太陽光発電所の場合、風力発電設備に比べ、それほど高くないため、相対的に「直撃雷」は少ない。だが、メガソーラーのように、敷地が広く、周辺に高い建物や樹木がない場合、パネルに直撃雷を受けることもある。

損傷したのは敷地のほぼ中央

 今回のケースは、太陽光パネルのケーブルが焼き切れていることから、パネルに直接、雷が落ちた可能性が高いと思われる。周辺に高い建物がなく、飯舘村のなかでも県道沿いの開けたエリアだった。

 ただ、焼損した2つの接続箱に関しては、直接、雷が落ちたのか、パネルに落ちた雷の電流が断線する前にストリング回路を通じて入り込んできたのかなど、電流の侵入経路は分からないという。設置した接続箱には、サージ防護デバイス(SPD)が装着されていたものの、SPDが雷サージを接地に流し切れずに焼け焦げていたという。

 損傷した2つの接続箱のあった場所は、45アレイのうち、南から26アレイ目と28アレイ目、東西50枚のパネル列のうち、西から15枚目程度の場所で、パネルレイアウトのなかでは中央やや西寄りだった(図5)。

図5●焼損した接続箱は、敷地全体の中央部付近になる
(出所:日経BP)
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 このうち、午後に開扉後に発火した接続箱については、そこに入力するストリングを構成する太陽光パネルには、目視したところ、目立った損傷は見られないという。

 これまでも直撃雷による被害では、離れた場所のパネルに焼損が見られるケースがあり、その損傷メカニズムを解明できないこともあった(関連記事:「直撃雷」でパネル33枚が破損したメガソーラー)。今回のケースで、今後、詳細な現場検証と分析が進めば、メガソーラーにおける直撃雷による損傷メカニズムの解明に貴重な情報が得られる可能性もある。