台風15号で水上メガソーラーが損壊し火災、強風で流されパネルが折り重なる

2019/09/13 17:03
金子憲治=日経BP総研 クリーンテックラボ

国内最大の水上メガソーラー

 台風15号が千葉県を通過した9月9日午後、千葉県市原市のため池「山倉ダム」の水面にある「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」で火災が発生した。台風の強風で、フロート架台が折り重なるように損壊し、その複数個所から発火し、炎と煙が立ち上った。

 同発電所は、水面に浮かべた太陽光パネルの出力は約13.7MWに達し、水上設置型の太陽光発電所では国内最大となる。2018年3月に運転を開始していた(図1)。

図1●完成直後の「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」
(出所:京セラ)
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 市原市消防局に火災発生の通報が入ったのは9日午後1時、現場には消防車7台、消防員21人が出動して消火に当たった。出火箇所に最も近い北側の岸から放水した。通常の消防車の放水距離(20~30m)では届かなったため、放水距離70~100mの能力のある大型放水砲搭載車(DHCU)を使って放水し、午後3時24分に消し止めたという。怪我人はいなかった。

 太陽光パネル火災への放水では、棒状の注水になった場合、消防員が感電する恐れがあるとされる。今回は、池の水をくみ上げて放水したが、消防員に感電はなかったという。放水距離が長く、放水先では水が霧状になったことも感電リスクを下げたと思われる(図2)。

図2●架台が折り重なっている部分から出火した
(出所:日経BP)
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午前中には稼働停止

 被災した水上メガソーラー(大規模太陽光発電所)は、東京センチュリーと京セラが共同出資する京セラTCLソーラー(東京都千代田区)が発電事業者となっている。山倉ダムは、千葉県企業庁の管理する工業用水専用のため池で、水面約18万m2を賃借し、5万904枚の太陽光パネルをフロート式架台に設置した。

 連系出力は11.5MWで、固定価格買取制度(FIT)を利用し、東京電力エナジーパートナーに売電している。設計・施工は京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が担当し、パネルは京セラ製の出力270W/枚の製品、パワーコンディショナー(PCS)は、ドイツのSMAソーラーテクノロジー製(500kW機)、フロート式架台はフランスのシエル・テール製を導入した。維持管理は、京セラソーラーコーポレーションが担当している。

 京セラ・広報担当者によると、9日未明に台風15号が千葉県を通過した後、日の出とともに「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」に異常の発生したことを遠隔監視システムなどで察知し、午前中には稼働を停止して、送電系統から解列させたという(図3)。

図3●午前中には稼働を停止し、系統から解列した。写真奥がPCS
(出所:日経BP)
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 同社では、現在、原因の調査・分析を急いでいるが、「一般的に太陽光発電所は、稼働を停止しても太陽光パネルに日光が当たると電流が発生するため、損傷による漏電などで発火する可能性がある。今回もそうしたケースかもしれない」(京セラ広報部)としている(図4)。

図4●稼働停止しても太陽光パネルは発電する
(出所:日経BP)
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「島」が3つに分断

 「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」は、もともと約5万枚の太陽光パネルをフロート架台に固定して連結させ、1つの大きな「島」を形成して、池の北側に浮かべていた。

 被災後の状況を見ると、この「島」が3つに分断され、そのうちの「最大の島」が北側の岸に向かって押し流され、一部が岸にぶつかって止まっている。流された部分は、「島」全体の3分の2程度にもなると思われる(図5)。

図5●1つの「島」が3つに分断され、青い丸の部分は残り、黄色丸の部分が北に押し流された
(出所:京セラ提供の画像に日経BPが説明を加えた)
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 同発電所では、パネルの「島」が風で移動しないように、フロート架台を400本以上の係留ワイヤーで、湖底に固定したアンカーに繋いでいた。アンカーの引き抜き強度を確保するため、試験施工を繰り返した上で、施工したという。最大風速41.5m/秒にも耐えられるよう係留ワイヤーの強度を確保したとしていた。

 今回の台風15号では、千葉市で最大瞬間風速50m/sを超える強風を記録していた。山倉ダムでも、池を囲む並木の一部が南側に倒れたり、太い枝が折れたりしていることから、最大瞬間風速は50m/sを超えていた可能性がある。こうした想定を超える強風に一部の係留ワイヤーとアンカーが耐えられずに損壊して風に押され始め、機能しているワイヤーにつながる島部と引っ張り合いになり、ついには島が分断され、糸の切れた凧のように流されたと見られる(図6)。

図6●一部は岸まで押し流された
(出所:日経BP)
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 山倉ダムの水深は最大で10mを超える。もともとワイヤーは、季節による水面高さの変動にも対応できるように余裕を持たせている。流された島でも一部のワイヤーが機能していた可能性もあり、その部分が湖底側に引っ張られ、そこを起点に架台が折り重なるように損壊した可能性もある(図7)。

図7●後ろの架台から押されて、前の架台に乗り上げて折り重なった可能性も
(出所:日経BP)
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 岸に近い島の北端ではフロート架台が下側に潜るように折り重なっているように見える。これは、機能しているケーブルに引っ張られたからとも考えられる(図8)。

図8●北端は水面下側に架台が巻き込まれている
(出所:日経BP)
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ちぎれた南端は「まくれ上がり」

 一方、分断された島の南端では、強風でフロート架台がまくれ上がり、ロールケーキを巻くように上側に折り重なっている(図9)。

図9●分断されて南端になった端は上にまくれ上がっており、パネルの裏側が見える
(出所:日経BP)
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 これまでも国内の水上メガソーラーでは、台風よる被害があった。例えば、昨年、大阪府大阪狭山市のため池に設置された1.99MWの水上メガソーラーでは、フロート架台が台風21号による強風でまくれ上り、733枚が反り返る形になった。

 これまでの水上太陽光発電所の被災では、こうした「島」の端が強風でまくれ上がるというケースがほとんどだった。そのため、その対策として島の外側のフロートに水を入れて重くするなどして、「まくれ上がり」を防ぐ措置などを採用してきた。

 今回の山倉ダムサイトの台風被災では、島端の「めくれ上がり」とともに、係留ワイヤーが機能しなくなり、大規模に「島」が押し流されるという事態になった。今後、係留ワイヤーや湖底アンカーの強度設計をさらに強くするなどの対策が必要になりそうだ(図10)(図11)。

図10●奥の島と分断された付近
(出所:日経BP)
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図11●分断された付近の被災前の様子。もともとは1つの島だった
(出所:日経BP)
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 ただ、ため池管理者の立場からは、湖底の構造を大規模に改変したくない面もあり、重りを沈めて係留ワイヤーをつなぐケースもある。勢力の強い台風が頻繁に上陸するなか、水上メガソーラーの安定運用には、施工面の工夫や技術革新が期待されそうだ(関連記事:千葉・水上メガソーラー事故、強風で損壊したメカニズム考察)。