千葉の水上メガソーラー火災事故、破損の起点は「アンカーの抜け」

2019/11/07 05:00
金子憲治、加藤 伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

太陽光パネルの77%が破損

 経済産業省は10月28日、新エネルギー発電設備事故対応・構造強度ワーキンググループ(WG)の会合を開き、台風15号で破損事故を起こした「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」に関し、発電事業者の京セラTCLソーラーから事故の経緯や状況、事故原因の調査状況など、これまでに分かった途中段階での報告を受けた。

 「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」は千葉県市原市のため池「山倉ダム」で2018年3月に運転を開始した。出力は約13.7MWに達し、水上設置型の太陽光発電所では国内最大規模。台風15号が千葉県を通過した9月9日午後、火災が発生した。台風の強風で、フロート架台が押し流されつつ損壊し、複数個所から発火し、炎と煙が立ち上った(関連記事:台風15号で水上メガソーラーが損壊し火災、強風で流されパネルが折り重なる)。

 京セラTCLソーラーによると、事故の経緯は以下だ。9月9日午前6時半頃、千葉県佐倉市の監視センターと電気主任技術者の携帯端末に「直流漏電」のアラームがあり、7時半頃に電気主任技術者が現場に急行し、破損を確認。7時50分~8時半の間に全パワーコンディショナー(PCS)を停止した。13時に火災を検知して消防に連絡、14時に消火活動を始めて、17時20分に鎮火した。人的被害はなかったが、太陽光パネル5万904枚のうち、77%程度が風に押し流されて破損し、一部が発火して焼損した(図1)(図2)。

図1●7割以上のパネルが北側の岸に流された
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます
図2●パネルが折り重なって短絡し、火災が発生した
(出所:日経BP)
クリックすると拡大した画像が開きます

係留線828本、アンカー420地点

 同メガソーラーは、樹脂製の1つのフロート本体(メインフロート)に固定金具で1枚の太陽光パネルを取り付け、本体より小さい「セカンドフロート」を間に置きながら、連結していた。メインフロートとセカンドフロートの接続は樹脂製のピンを使っていた(図3)。

図3●アイランド(太陽光パネルの島)の構成部材と係留方法
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

 こうして連結した太陽光パネルの島(アイランド)の全体形状は、北から南に東西の幅が大きくなっており、東西の最大幅は503.1m。また、南北の長さは、西サイドが南に向かって東サイドよりも長く伸びており、南北の最大長は487mとなっている(図4)。

図4●発電所の概要とアイランドの大きさ
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

 そして、こうした形のアイランドの外周を828本の係留線(ワイヤー)で湖底に固定したアンカーとつなぎ、風で流れないようにしていた。係留線は概ね2本で1つのアンカーにつないでいたので、アンカーは全部で420地点(北端112地点、東端133地点、南端68地点、西端107地点)になっている(図5)。

図5●水上フロート構成部材とアイランドの係留方法
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

「アンカーの引き抜け」が発端

 事故報告によると、損壊の状況は、まず、1つの大きなアイランドが3つに分断されていた。南に伸びた西サイドの長方形部分と東サイドの南端・数列が元の位置に残り、そのほかの北側部分が、破断して北の岸に向かって押し流されていた。

 こうしてアイランドが分断・漂流する過程で、断裂した南端がロール状に巻き上がったり、押し流された北側部分の中央(内陸)の一部が後ろのフロートから押されて折り重なることで大規模に隆起したりしていた。また、岸まで押し流された北端部は、アンカーによって湖底側に引っ張られて水面下に巻き込まれていた(図6)。

図6●事故の概要と被害の状況、黄色点線部よりアイランドが3つに分断
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

 事故後の湖底調査によると、南端の68地点のアンカーのうち、南端中央の7地点のアンカーが湖底から引き抜けていた。このことから、これら「抜け」によって南端中央部の係留線が機能しなくなり、その両側の南端の西側と東側への風荷重が増し、フロート架台を連結する接続ピンが破損・破断し、最終的にアイランドの北側エリア全体が南側から切り離され、北方向に漂流することになったと推察した(図7)。

図7●アイランドの破損起点の推測理由、破損の流れの推測
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

最終的に樹脂フロートが燃える

 ではなぜ、アンカーが引き抜けてアイランドの破損・分断にまで至ったのか。今回の報告による要因分析としては、(1)当日の風速が設計風速(41.53m/s)を超えていた可能性が高いこと、(2)アイランドが風、波によって揺動し偏荷重が発生したこと、(3)アイランドの大型化により、ピンや接続部に設計荷重を超える荷重が作用したこと、(4)アイランドの形状によって応力が集中したこと――などの可能性を挙げた。

 また、火災に関しては、実際に燃えた部分が水中に沈んでいるため、現在、引き上げながら原因を調査している最中としつつ、直流回路部分の短絡やアーク(火花)により、ケーブルなどに引火し、最終的に樹脂製のフロートに延焼したとの見方を示した。

 京セラTCLソーラーでは、2020年2月をめどに事故原因の最終的な報告書を作成。提出し、3月には再発防止対策を検討するとしている(図8)。

図8●事故原因の調査の工程表
(出所:京セラTCLソーラー)
クリックすると拡大した画像が開きます

 今回のWG会合とは別の場で、京セラ・ソーラーエネルギー事業本部の小谷野俊秀副本部長は、「千葉・山倉水上メガソーラー発電所」の復旧時期について、「半年から1年後を想定している」とし、「今後の調査によって判明した問題点が、開発当初の設計のままでは解消できないと判断すれば、設計を変更して復旧する」としている。

 小谷野副本部長は、「近隣地域に対して、2度と今回のような事故が起きないように復旧するという、安全に関する懸念の払拭が重要になる」としている(関連記事:千葉・水上メガソーラー事故、強風で損壊したメカニズム考察)。