今夏、台風による太陽光被害、山間サイトでパネル飛散も(前半)

伊豆半島で複数サイトが損壊、アレイが反転も

2019/11/21 05:00
金子憲治、加藤伸一=日経BP総研 クリーンテックラボ

事故報告では4台風で29サイトが被災

 今年の夏も、昨年に続き、勢力の強い台風が次々と日本列島を襲った。台風15号は、9月9日に千葉県に上陸し、強風により大規模な停電が起きた。続く台風17号は9月22日に九州北部に強風被害をもたらした。さらに10月12日に伊豆半島に上陸した台風19号は、東日本各地で記録的な大雨となり、大水害を引き起こした。

 いずれの台風も、比較的、太陽光発電所の多い地域に上陸・通過したこともあり、太陽光パネルの飛散や、川沿いに位置するサイトで洪水に巻き込まれた発電所もあった。

 トラブルのコラムでは、今回の前半で「強風」編、後半に「洪水」編として、2回に分けて今夏の太陽光発電所の被災例を取り上げる(関連記事:今夏、台風による太陽光被害、洪水で「架台の損壊」も(後半))。

 太陽光発電所は、連系出力50kW以上の高圧や特別高圧送電線に連系する大規模な発電所については、電気事業法に基づき、事故を国(産業保安監督部)に報告する義務がある。経済産業省は、台風よる事故報告の状況を公表している。それによると、台風8号で1件、13号で2件、15号で7件、17号で1件、そして、19号で18件だった(図1)(図2)。

図1●電気事業法に基づき国に提出された太陽光発電設備の自然災害による事故報告
(出所:経済産業省)
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図2●電気事業法に基づき国に提出された太陽光発電設備の自然災害による事故報告(出所:経済産業省)
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 特徴的なのは、8号、13号、15号、17号では、強風によるパネルの飛散や脱落、架台の転倒や損壊だったのに対し、台風19号では、洪水による浸水が多くなっていること。19号の事故報告18件の内訳を見ると、16件が洪水による浸水、1件が強風によるパネルの脱落、1件ががけ崩れによる土砂の流入だった。

元モトクロスのコースに設置

 事故報告によると、台風15号では、千葉県と静岡県で強風による太陽光発電所の損壊があった。静岡県では、伊豆半島の山中にあるメガソーラーが、強風によって被災した(図3)(図4)。

図3●台風15号で被災した静岡県河津町のメガソーラー
(出所:日経BP)
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図4●強風により敷地内にパネルが飛散した
(出所:日経BP)
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 このメガソーラーは、静岡県河津町にある。「天城越え」で知られる、静岡県伊豆市と賀茂郡河津町との境にある天城峠を越え、さらに伊豆半島を南下したところに立地している。

 周辺地域では、台風15号による強風による倒木で、道路の通行が妨げられ、鉄道でも伊豆急行が不通となるなどの被害が相次いだ。観測史上最高となる降雨も伴い、河津川の増水によって、橋が流される被害も生じた。

 被災したメガソーラーは、鉢の山(標高:約618m)の中腹にある。この中腹付近は、比較的平坦にひらかれている。鉢の山の山頂までを結ぶ、「伊豆元気わくわくの森・鉢の山森林セラピーロード」の起点となる駐車場も、ここにある。自動車でここまで乗り付け、低山をゆったり登るような楽しみの拠点となっているようだ。

 「伊豆元気わくわくの森・鉢の山森林セラピーロード」の看板には、メガソーラーがある場所は、「萱場」として記されている。オートバイ競技のモトクロス用のオフロードのコースとして使われていた時期もあったようだ。

 メガソーラーは、この「萱場」だった場所をそのまま使うように、駐車場がある場所から、山の南側に向けて広く太陽光パネルが並んでいる。被災したのは、山の南側に近い区域だった。

残置森林で風が弱まる?

 台風による強風が、山の南側から北東側に回るように吹き抜けたときに、太陽光パネルの裏面からかかる強風による荷重に、架台とパネルの接続部が耐えきれなくなり、架台から太陽光パネルが吹き飛んだと推察できる被害がほとんどだったとみられる。架台が曲がっている状態の場所も、数カ所見かけた(図5)(図6)。

図5●台風の強風で架台からパネルが外れて飛散した
(出所:日経BP)
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図6●部分的に架台の部材が曲がっている箇所もある
(出所:日経BP)
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 発電設備の配置やフェンスの状況から、高圧配電線に連系している3カ所の発電所が隣接しているとみられる。山の南側、さらに東側に近いほど、大きな被害が生じていた。

 強風によって、太陽光パネルが架台から外れ、吹き飛ぶような被害が生じたのは、残地森林の確保の仕方が大きく影響したように見える。

 山の南側にある、最も被害が大きかった発電所は、敷地の外のさらに南側の隣接地の木が、数十mにわたって、ほぼすべて伐採されている。東隣にある、山を登っていく斜面も同じように、十m以上にわたって木がほぼすべて伐採されている。そして、苗木が植えられている。

 この伐採は、南側と東側に近い場所にある太陽光パネルに、影を生じないようにする目的とみられる。影を生じる大きな木を伐採したり、その代わりに、苗木を植えて森林であることを維持する手法は、国内の山林で開発されているメガソーラーでは多く見られる手法である。

 しかし、強風が吹いた場合、ここには遮るものがないので、発電設備にその荷重がかかることになる。

飛散パネルは敷地内に保管

 架台から外れて吹き飛んだ太陽光パネルは、撮影時には、すべて敷地内にとどまっていた。フェンスわきに個別に置かれていたり、中には、まとめて積み重ねられている場所もあった(図7)(図8)。

図7●被災後、現場に着いた担当者が飛散したパネルを集めた
(出所:日経BP)
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図8●一般人がパネルに触れないようにすべて敷地内に積んでいる
(出所:日経BP)
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 フェンスは南部や東部で少し曲がっているものの、関係者以外が容易に入り込めるような、倒壊した状態にはなっていないので、敷地内に積み重ねておくことは、被災した太陽光パネルの管理として、比較的、良好といえるだろう。

 これまでの国内各地の被災発電所の例を見る限り、他者が容易に触れるような状態だったり、放置されたままで、管理しているとはいい難い状態のケースも多く、こうした例と比べると、発電事業者やO&M(運用・保守)担当者が早期に対応したことがわかる。

 現地には、メガソーラーを紹介する看板が立てられている。この看板によると、敷地面積は約13万m2、このうち太陽光発電設備の設置面積は約8万8000m2で、土地は河津町の所有地と、天川植林組合の所有地からなる。

 メガソーラーの合計出力は約6MW、太陽光パネルの設置枚数は2万6880枚、年間予想発電量は一般家庭約2000世帯分の消費電力に相当する、約720万kWhと記されている。

150枚が敷地内に飛散

 経産省が公表している固定価格買取制度(FIT)の認定情報からも、3カ所のメガソーラーで構成されている。同じ日に認定され、3カ所同時に開発されたことがわかる。1社が1カ所、もう1社が2カ所を所有している。いずれも太陽光パネル出力は約2.3MW、連系出力は1.990MWとなっている。

 このメガソーラーの被災は、経産省が10月16日に開催した「電気保安人材・技術ワーキンググループ(WG)」の第2回の会合でも取り上げられた。

 同WGでは、鉢の山のメガソーラーの被災として、設置されている8800枚以上の太陽光パネルのうち、推定で150枚以上が架台から外れ、敷地内に飛散したと公表された。この規模から、3カ所のうち最南部の1カ所のみの例とわかる。敷地外への飛散はなく、人的被害もなかったとしている(図9)。

図9●敷地外への飛散はなく、人的な被害はなかった
(出所:日経BP)
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現場の確認に2日を要す

 ただし、問題視されたことがある。倒木によって現地までや現地内の道路や通路の通行が妨げられ、電気保安管理業務を担当している電気主任技術者が、被災から2日間経つまで、現地の状況を確認できず、状況に対応できない状況だったことである。

 保安規定において、高圧の太陽光発電設備は、何らかの事故が起きた場合、2時間以内に電気主任技術者が現地に入り、対応することが定められている。

 これまでの受電設備とは異なり、高圧の太陽光発電設備は、山中など居住地から遠く経路も限られる場所にあることが多い。こうした電気設備の保安では、悪天候の後など、「2時間以内の駆け付け」が難しいケースも出てきそうだ。現地に向かう道路が、倒木や土砂崩れなどによって通行が妨げられていれば、辿り着くことは難しい(図10)。

図10●山間のサイトは、自然災害直後にすぐに現場に行けないことも多い
(出所:日経BP)
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 こうした性質を持つ太陽光発電設備の安全を確保する手法として、米国の一部の地域では、太陽光パネルごとに遠隔制御できる手法の採用が義務付けられている。飛散したパネルの収集などはできない状態でも、通信インフラが生きていれば、遠隔制御によってパネルごとに発電を止めることができるので、発電が続いてその間に火災などのより大きな被害につながることは防止できる可能性がある。こうした手法を日本でも積極的に採用する方向に議論が進んでいく可能性もある。

伊豆高原では架台も損壊

 しかし、これらの事故は、台風被害による太陽光発電の被害のうち、氷山の一角に過ぎない。国内の事業用太陽の件数で8割から9割を占める連系出力10~50kW未満の低圧太陽光には報告義務がなく、経産省も、被災状況を掴めないためだ。

 実際、同じ静岡県の伊豆半島では、伊東市の伊豆高原の山あい、北を道路に面した南向き斜面に設置した太陽光発電所が台風19号で大規模に損壊したが、国への事故報告のリストには入っていない。この発電所は、エリア全体の太陽光パネル設置容量は、数百kWになると思われるが、連系設備を見ると、複数の低圧案件が隣接している構成のため、法的に事故報告の義務はないと思われる。

 台風19号は、10月12日に静岡県に上陸したことから、南斜面に吹き付けた強風により、架台からパネルが外れたり、パネルを取り付けた架台ごと基礎から外れて裏返しなったりした。架台自体が反転して損壊したことが、多くのパネルや架台の部材が本体から外れて周囲に飛散することにつながったと見られる(図11)(図12)。

図11●架台自体が部分的にアレイごと反転している
(出所:日経BP)
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図12●太陽光パネルに加え、架台の部材も強風で飛散した
(出所:日経BP)
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 現場を見学した10月15日の時点では、飛散したパネルや架台部材は、すべて敷地内にあり、一部は積み上げられていたが、SNSによる被災直後の画像では、事業用地の北側に面した道路にも、パネルや架台部材が散乱している様子が写っている。

 この発電所は、ほぼ南向き斜面に階段状にアレイ(パネルの設置単位)を並べているが、損壊の激しいエリアは、道路に近い北側(山側)になっている。南側(谷側)には、そのさらに南手前に林があり、それが風の威力を弱めた可能性もある。

 また、パネル横置き4段(4枚)の比較的、大面積のアレイ構成にしたことも、凧のように上側に持ち上げられる要因になったとも考えられる(図13)(図14)。

図13●南側の林近くに位置するエリアでは、被害が少ないように見える
(出所:日経BP)
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図14●大面積アレイのために風荷重が大きくなった可能性も
(出所:日経BP)
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千葉では営農型サイトが被災

 また、事故報告で顕在していない低圧太陽光の被災例としては、台風15号で激しい強風にさらされた千葉県内のソーラーシェアリング(営農型太陽光)がある。千葉県は、全国的にもソーラーシェアリングが盛んな地域で、畑1反(約10アール)程度を使った連系出力50kW未満の低圧事業用案件のサイトが多い。

 同県内に設置した、ある営農型サイトでは、南端部分の梁用の棒材が支柱とのジョイントから外れ、パネルを取り付けた梁が下側に傾いた状態になった。同サイトでは、単管パイプを専用のジョイント金具で組み上げ、短冊形の細長いパネルを取り付けていた(図15)(図16)。

図15●太陽光パネルを取り付ける架台の梁材が外れて傾いた
(出所:日経BP)
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図16●強風のため、支柱とのジョイント部分が外れている
(出所:日経BP)
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 同サイトでは、複数の短冊形パネルが、強風によって回転して、設置角が北向きに垂直になってしまった箇所もあった(図17)。

図17●複数のパネルが回転して設置角が変わっている
(出所:日経BP)
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 また、このサイトから近い、別の低圧連系する営農型サイトでは、数十枚の短冊形パネルが、単管パイプの架台から外れて飛散した。外れたのは、南端の数列に集中しており、部分的に想定外の強風が吹いた可能性もある(図18)。

図18●強風で数十枚のパネルが架台から外れて飛散した
(出所:日経BP)
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 ソーラーシェアリング用の架台は、設置高が3~4mを超える一方、農作業に配慮して、筋交いで補強する設計にも限界があるなど、その強風への対策が課題になっている。

 ただ、今回、一部損壊した営農型の2サイトの周辺には、ほかにも多くのソーラーシェアリングの設備があり、中には1MWを超える営農型メガソーラーも設置されているが、台風15号の通過後も、ほとんどの営農サイトに損壊はなかった(図19)。

図19●ほとんどの営農型サイトでは損壊はなかった
(出所:日経BP)
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 こうしてみると、ソーラーシェリング設備といっても、適切にも設計・管理していれば、勢力の強い台風にも十分に耐えられることが証明されたとも言えそうだ。

水上では「パネルの島」が流される

 このほか、今夏の台風による太陽光への強風被害としては、水上太陽光発電所が大規模に被災したことも大きな特徴だった。

 台風15号と17号では、千葉県市原市と佐賀県白石町の水上メガソーラーが、強風で岸まで押し流されて損壊した。これまでも水上太陽光が台風で被災したケースはあったが、浮かんでいる島の端のパネルがめくれ上がる被害だった(図20)(図21)。

図20●千葉県市原市にある国内最大の水上メガソーラーは、「パネルの島」が分断され一部が岸まで流れた
(出所:日経BP)
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図21●佐賀県白石町のため池では、強風で水上メガソーラー全体が岸に押し流された
(出所:日経BP)
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 今回の2つの水上メガソーラーの損壊では、いずれも「パネルの島」の全体、または一部が切り離されて岸まで押し流されたことが大きな特徴で、これにより被害は「島」の周辺部分だけに留まらなかった。これらについては、すでに同コラムで詳細を記載した(関連記事)(関連記事)(関連記事)(関連記事)。