犯人は「今年の干支」、電線をかじって漏電、あわやメガソーラーが稼働停止に

エネテク 第41回

2020/01/30 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回は、今年の干支である「ネズミ」によって、メガソーラー(大規模太陽光発電所)の売電が止まりかねない状況になった例を紹介する。

 エネテクが点検を請け負っているメガソーラーの中に、雨天になると、度々漏電の警報が通知される発電所があった。北関東に立地している。

 何らかの不具合が起きている、あるいは、不具合が生じる前兆が起きている可能性があるため、原因を把握することにした。

 同社では、同じように雨天時のみ、地絡の警報を発する太陽光発電所において、「雨天時にのみ漏電する太陽光パネルの不具合」を突き止めた例もある(関連コラム:豪雨時に現地に乗り込んで確かめた例)。

 それまで、こうしたタイプの不具合は、ほとんど知られていなかった。今回も、同社の20歳代の若手の点検担当者が原因の究明に取り組み、詳しく調査した。

 同社の点検で、通常では見逃されがちな不具合や、あまり知られていない不具合の原因を突き止めることがあるのは、こうした点検担当者の熱意によるところが多いという。

 今回はまず、晴天時に、直流回路の絶縁抵抗を測定した。この測定では、絶縁抵抗の値が異常を示し、絶縁不良が疑われるような回路は、検出されなかった。

 この太陽光発電所では、雨天時に漏電の警報が通知される。この原因究明のための調査なので、本来は、雨天時に点検を実施する方が、起きている現象を突き止めやすい。

 しかし、どの点検事業者でも、通常は雨天時に太陽光発電設備を点検することを避ける。晴天時に比べて作業がしにくく、作業時の負担が大きくなること以上に、雨に濡れた状態の電気設備に触れることは、点検従事者が感電する危険性が高くなるためである。

 それでも、雨天時に漏電の警報が届くことが多い以上、何らかの不具合が生じている場所が必ずあると予想した。そこで、次に、発電設備をくまなく目視で点検した。

 すると、1台の接続箱の入力端子の近くで、電線を覆う樹脂の被覆に傷がついていることを見つけた(図1~2)。束にまとめられている電線のうちの1本に、小動物が噛んでできたような傷がついていた。

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図1●齧られた跡がある電線。メガクラスの規模の大きな発電所において、これを見つけるのは難易度が高いという
(出所:エネテク)
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図2●他の発電所における点検時に、接続箱内でネズミを発見したことも
(出所:エネテク)
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 念入りに見ていなければ見つけられないような、小さな噛み跡だった。接続箱の周辺の状況から、かじったのはネズミとみられるという。

 この噛み跡の傷の部分が、雨天時に漏電する原因になっているのではないかと考えた。そこで、検電器を使って点検すると、検電器は、その場所が通電していることを示すランプを点灯させた(図3)。

図3●噛み跡に検電器をあてると通電を示すランプが点灯、この場所で漏電
(出所:エネテク)
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 通常、樹脂の被覆の上から電線に検電器を当てても、絶縁されているので通電を示すランプは点灯しない。

 しかし、小動物の噛み跡でできたような傷の部分では、検電器が通電していることを示した。この場所で、漏電していることが濃厚になってきた。

 この電線を含む直流回路は、事前の絶縁抵抗測定において、正常な値(16.6MΩ)を示していた。それでも、検電器が通電を示した。

 漏電の警報が届くのは雨天時である。雨天時の実態により近い状態を再現するため、今度はこの噛み跡の場所を濡らした状態で、この電線を含む直流回路の絶縁抵抗を測定した。噛み跡の場所には、濡らしたタオルをかぶせた(図4)。

図4●噛み跡を濡らしながら絶縁抵抗を測ると、異常値を示した
(出所:エネテク)
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 すると、絶縁抵抗値は「0.368MΩ」と、大幅に下がり、この直流回路が正常な状態を示す基準値である「0.4MΩ以上」を下回り、異常を示した。

 この測定結果によって、漏電していることがわかり、応急措置を講じた。

 かじられた電線を切り離し、新たな電線とコネクターで接続したうえ、また噛まれても損傷することがないように、絶縁テープを巻いて物理的に補強した(図5)。

図5●この場所の電線を変えたうえ、テープでぐるぐる巻いて補強
(出所:エネテク)
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 この状態で、絶縁抵抗を再び測定すると、正常値に戻っていた。これにより、噛み跡の場所で漏電していたことを、改めて確認できた。

 もし、この漏電に気づかないまま発電を続けていたら、雨が降るたびに警報が届いて駆けつけることになるだけでなく、さらに噛み跡が加わるなどして、日常的に漏電が続く状態になったかもしれないとしている。

 火災などの原因になりかねないといった安全上の危険のほか、もちろん売電ロスにもつながる。

 電線の小さな噛み跡、という見逃しがちな傷が、メガソーラーの発電を止め、火災の原因になリかねない重大な不具合を生んでいた。

 エネテクによると、メガワット規模の太陽光発電所において、今回のようなわずかな外観の異常は、見つけるのが簡単ではないという。こまめに目視点検した担当者の姿勢によって発見できた面が大きいとしている。



【エネテクによるトラブル・シューティング】