最初に紹介する発電所では、エネテクが点検を受託し、現地に点検担当者が向かうと、雑草が生茂げり、辛うじて電線やケーブルラックの横枠が見えていた(図2)。
電線は、土の上にそのまま浮いているような状態になっているだけでなく、樹脂の被覆は雑草に触れている。
この状態では、電線は夜露や朝の結露に直接、さらされ続けることになる。雨が降れば、そのままびしょ濡れになる。
フタという遮蔽材がないことで、濡れやすいうえに、外気温の変化の影響もより大きく受ける。電線の被覆は樹脂のため、日射と水分はともに、劣化や損傷を加速させる原因となる。
さらに、雑草に直接、触れているどころか、雑草の中に埋もれているような状態なので、雑草による物理的な圧迫によって、損傷するリスクも懸念される。
雑草は、冬には枯れる。枯れた雑草は、火が燃え移りやすい。冬に山火事が多くなるのは、そのためである。こうした発電所において、枯れ草が触れている状態で、電線が損傷し、火花(アーク)や発火が生じると、容易に枯草に燃え移りかねない。火災のリスクが高い状態といえる。
また、小動物などによる電線の損傷リスクも高い。上下のフタを使って電線を敷設した場合でさえ、小動物がケーブルラックの中に入り込んで、電線を噛み切る事故が起きている(関連コラム:ネズミが頻繁に“出入り”)。
上下のフタがなく、地上で雑草の中に埋もれているような電線は、さらに小動物に噛み切られる可能性が高くなる。
このような状態では、除草作業の難しさも増す。乗用型草刈機は、回転刃による損傷のリスクがあるので、こうした場所では使えない。
刈払機でも、ケーブルラックや電線を避ける必要があるのは同じで、雑草の中のどこに位置しているのかわからない状態では、使える範囲が通常より狭くなる。無理をして使えば、電線を損傷したり、刈払機の駆動力によって刈払機が跳ね飛ばされて使用者が危険な状態に陥る「キックバック」のリスクが高い。
ここで安全で確実に除草するには、鎌をつかって、手刈りするほかなさそうである。
同じように、上下のフタがないラックを使って、地上に電線が敷設されている太陽光発電所は他にもあり、全国的に多く存在する可能性もある。