「フタをケチったラック」、電線の損傷や火災、除草時に事故も

エネテク 第44回

2020/03/11 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回は、電線をまとめて敷設する時に使われる「ケーブルラック」に関する例を紹介する(図1)。適切でない使い方をしているために、電線が損傷して発火や火災に至ったり、除草が難しくなったりして事故を誘発するリスクがある。

図1●フタを使わず電線が露出し、雑草に埋もれている
(出所:エネテク)
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 ケーブルラックは、まとまった本数の電線を、同じ方向に敷設する時に使われる。あくまで電線を敷設する作業の効率を高める目的で採用されるもので、関連法や技術基準などで使用することや使用方法が定められているものではない。

 一般的なケーブルラックは、細長い横枠に一定の間隔で細長い横板が取り付けられている。はしごのような構造で、まとまった本数の電線を収める。そして、上下に保護用のフタを取り付ける。これにより、上下左右を筐体で囲み、比較的安全な構造の中に大量の電線をまとめて収納でき、施工性も向上する。

 上下のフタは、施工性の向上には寄与しない。敷設された大量の電線を保護する目的の部材となる。ケーブルラックの材料として、防錆対策を施された鉄やアルミニウム合金が採用されていることが多い理由も、施工性の向上ではなく、敷設された電線をより確実に保護するためである。

 今回、紹介する太陽光発電所では、ケーブルラックのうち、細長い横枠に一定の間隔で細長い横板が取り付けられた、はしごのような構造だけしか使わず、電線をまとめて敷設していた。本来、上下にかぶせるはずのフタは、使われていない。

 電線の敷設の施工性を向上させる部材だけを使い、施工性の向上に寄与しない上下のフタを省いている。この状態から、初期コストの削減を優先する一方で、安全性や長期にわたる信頼性は、二の次になっていることがうかがえる。しかし、フタのコストを「ケチった」ことによるリスクは意外に大きい。

 最初に紹介する発電所では、エネテクが点検を受託し、現地に点検担当者が向かうと、雑草が生茂げり、辛うじて電線やケーブルラックの横枠が見えていた(図2)。

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図2●水分と日射、雑草による損傷や発火のリスクが小さくない
(出所:エネテク)
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 電線は、土の上にそのまま浮いているような状態になっているだけでなく、樹脂の被覆は雑草に触れている。

 この状態では、電線は夜露や朝の結露に直接、さらされ続けることになる。雨が降れば、そのままびしょ濡れになる。

 フタという遮蔽材がないことで、濡れやすいうえに、外気温の変化の影響もより大きく受ける。電線の被覆は樹脂のため、日射と水分はともに、劣化や損傷を加速させる原因となる。

 さらに、雑草に直接、触れているどころか、雑草の中に埋もれているような状態なので、雑草による物理的な圧迫によって、損傷するリスクも懸念される。

 雑草は、冬には枯れる。枯れた雑草は、火が燃え移りやすい。冬に山火事が多くなるのは、そのためである。こうした発電所において、枯れ草が触れている状態で、電線が損傷し、火花(アーク)や発火が生じると、容易に枯草に燃え移りかねない。火災のリスクが高い状態といえる。

 また、小動物などによる電線の損傷リスクも高い。上下のフタを使って電線を敷設した場合でさえ、小動物がケーブルラックの中に入り込んで、電線を噛み切る事故が起きている(関連コラム:ネズミが頻繁に“出入り”)。

 上下のフタがなく、地上で雑草の中に埋もれているような電線は、さらに小動物に噛み切られる可能性が高くなる。

 このような状態では、除草作業の難しさも増す。乗用型草刈機は、回転刃による損傷のリスクがあるので、こうした場所では使えない。

 刈払機でも、ケーブルラックや電線を避ける必要があるのは同じで、雑草の中のどこに位置しているのかわからない状態では、使える範囲が通常より狭くなる。無理をして使えば、電線を損傷したり、刈払機の駆動力によって刈払機が跳ね飛ばされて使用者が危険な状態に陥る「キックバック」のリスクが高い。

 ここで安全で確実に除草するには、鎌をつかって、手刈りするほかなさそうである。

 同じように、上下のフタがないラックを使って、地上に電線が敷設されている太陽光発電所は他にもあり、全国的に多く存在する可能性もある。

 エネテクが点検を担当した中では、砕石を敷き詰めたうえ、除草剤も使って雑草を減らしている太陽光発電所における例もあった(図3)。

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図3●別の太陽光発電所における例
(出所:エネテク)
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 冒頭に紹介した発電所に比べると、雑草に埋もれていることによるリスクは幾分か少ないものの、電線の損傷や発火の恐れが大きいことには変わらない。

 大規模な施設の屋根上を活用した太陽光発電所では、土や雑草がない分、こうしたケーブルラックの上下のフタを「ケチる」工法を採用に対する心理的な障壁がさらに下がり、より多く見られるという(図4)。

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図4●屋根上の太陽光発電所における例
(出所:エネテク)
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 屋根上の太陽光発電所の場合、電線の被覆がそのまま露出していると、日中は地上の発電所以上に直射日光を浴び続ける。

 一般的に、太陽光発電所で使われる電線は、耐用年数の目安として20年間以上が示されていることが多い。ただし、それは適切な場所に、適切に敷設されていることが条件で、今回紹介した太陽光発電所における例のように、露出した状態の場合は、劣化が早く損傷しやすくなり、目安の耐用年数より短い期間で交換する必要が出てきたり、何よりも火災などの重大な事故を引き起こしかねず、危険が大きいとしている。

 実際に、エネテクが点検の受託を検討するために、現地を訪れて調査した際に、電線が燃えた形跡を見つけた太陽光発電所もある(図5)。電線の被覆は焦げ、コネクターは溶けていた。発火したものの、ボヤ程度で済んだとみられるが、より大きな火災に至らなかったのは幸運だったと推測されるような状態だった。

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図10●電線は焦げ、コネクターは溶けていた
(出所:エネテク)
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【エネテクによるトラブル・シューティング】