想定以上の「クリンカ」発生
導入したドイツ・ブルクハルト社製のガス化装置とガスエンジン発電機は、こうしたタールの問題を克服したとされていた。しかも、製造した木質ペレットは、同社の推奨する性状や含水率などの基準を満たしていた(図7)。
にもかかわらず、わずか1週間で稼働不能になるほど、大量のタールが発生したのは、ガス化装置内に想定以上の「クリンカ」がこびり付いたからだ。クリンカとは、熱分解ガス化の際、固体として残る無機系物質(灰分)で、ガス化炉の底や壁などに付着し、徐々に大きな塊になってくる。そうなると、熱分解を妨げ、タールができやすくなる。
ブルクハルト社の推奨する運用では、4~6週間の連続運転の後、ガス化装置を止めて、内部のクリンカを取り除くことを求めていた。それがわずか1週間しか運転できなかった。
シン・エナジーでは、想定以上のクリンカが発生する原因を突き止めるため、同分野の研究者の協力も得て、日本各地で産するスギ材の成分やガス化によって残る灰の組成を分析した。その結果、灰組成に占める、ある特定の無機成分が、地域によって大きく異なることを見出した。串間市の発電所で利用しているスギ材では、40%以上なのに対し、ドイツ内のバイオマス発電所で使われるマツ系木材では10~20%、国内でも地域によっては20~30%に過ぎないことがわかった。
バイオマスガス化の場合、灰組成の違いによって、クリンカの成長度合いが異なることから、宮崎県にある「大生黒潮発電所」で、想定以上のクリンカが発生したのは、地域から産するスギ材の特性が原因の1つと推察された(図8)。