売電量が2桁も下ぶれ! 原因は影によるアレイ下段の出力低下

エネテク 第47回

2020/04/23 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く担当してきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回は、太陽光発電所の資産価値評価(デューデリジェンス)の一環として実施された点検で明らかになった不良について紹介する。

 稼働済みの太陽光発電所が増えてきたことで、一定の期間、稼働を続けてきた実績のある発電所を売買する、いわゆるセカンダリー市場が拡大しつつある。買い手にとっては、開発中の太陽光発電所を買う場合よりも、インフラとして実際に運用されていることから設備の実態を確かめやすいこと、1~2年間といった売電やO&M(運営・保守)の実績からさまざまな面で判断しやすい利点がある。

 セカンダリー市場で買い手が購入の可否を判断する際の参考の一つにするのが、デューデリジェンスである。稼働中の設備の評価の作業は、太陽光発電所に関する知見を多く持ち、点検に長けた企業に委託されることが多い。エネテクでも、こうした引き合いや受託が増えているという。

 同社がデューデリジェンスの一環としての点検を請け負う中で、見かけることが少なくない不良が、今回紹介する例である。

 設備そのものの状態は比較的良いのに、発電量は事業計画時の予想に比べて10%以上も少ないといった発電所で見られることがある。

 こうした太陽光発電所では、まずドローン(無人小型飛行体)を飛ばし、上空から赤外線カメラで空撮して太陽光パネルの熱分布の画像を得る。この画像から熱分布に異常がある部分を見つけ、その原因を突き止めていく(図1)。

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図1●アレイの最下段(左下方向)の温度分布が軒並み異常を示している
(出所:エネテク)
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 その結果、発電量がゼロになっているストリング(太陽光パネルを接続した単位)が見つかることがある。それも1本のストリングではなく、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)の下段のパネルで構成されたストリングが、軒並みこの状態になっている。

 熱分布の画像で、アレイの最下段、または、下から2段目までの太陽光パネルが軒並み高い熱分布となっている。最下段のパネルだけでストリングを構成していれば最下段のみ、最下段と下から2段目のパネルでストリングを構成していれば下から2段目まで、すべてのパネルの全面が同じように過熱している。

 過熱しているということは、その場所で抵抗となるような働きをする何らかの不良が起き、電流が流れていない、あるいは、流れていても少なくなり、それによって発熱している状況を意味する。

 原因は、影である。中でも大きな問題となるのは、前列のアレイによる影が原因となっている場合である。同じ発電所内では、同じ間隔でアレイが設置されている場合が多い。すると、アレイの下段のパネルで構成されるストリングの多くで、同じような影がかかって、発電量がロスになっているためである。

 影のかかり方で状況が変わるようで、時間を変えて調べると健全に発電している時もある。

 エネテクが詳細を調べた例の一つでは、アレイの最下段の太陽光パネル同士のみを直列接続してストリングを構成していた発電所において、最下段に横向きに固定された太陽光パネル内で下側のセル(発電素子)が1枚半分、影に覆われた状態でそのストリングの発電量がゼロとなっていた(図2)。

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図2●最下段の太陽光パネルのセル1個半分の影でストリングの発電量がゼロに
下の画像で、複数のアレイにおいて、同じように下からセル1個半分までは真っ黒、その上のセル4個半分は真っ白に熱分布が表示されている(出所:エネテク)
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 ストリングを構成している18枚のパネルのうち14枚でセルが1枚半分、影に覆われている。残りの4枚半のセルには、日射が当たっている。

 この影は前列のアレイによって生じている。ストリングの電流を測ると「0A」を示し、まったく発電していなかった。エネテクでは、影が抵抗のように働くことで電流が流れにくくなり、最終的にストリングの発電量がゼロになっていると分析している。

 太陽光発電所の開発において、初期の案件ではアレイ間の間隔を十分に広げていることが多い一方、その後は、敷地の面積当たりの発電量の最大化を目指す発想と太陽光パネルの価格低下が重なって、アレイの下段に前列の影がかかる日時が長くても、より多い枚数のパネルを並べることによってパワーコンディショナー(PCS)をできるだけフル出力近くで稼働させ、年間発電量をより増やそうとする発電所が増えてきている。

 こうした発想の発電所では、PCS単位での発電量の最大化を目的に、この例のように、影がかかる太陽光パネルのみでストリングを構成していることが多い。

 しかし、結晶シリコン型の太陽光パネルのセルとパネルの特性から、影のかかり方とストリングの構成によっては、今回の例のように、現実にはストリングの発電量がゼロになる時間帯があるなど、出力が大幅に低下していることがある。これによって、発電所の年間発電量が、事業計画時の予想よりも2桁も少ない時期が続くことにつながっては本末転倒といえる。

 事業計画時の予想に対して、実績がこれだけ大きく下振れしている詳細な原因分析は、この点検だけでは難しいとしているが、影の影響を過少にみて、予想発電量の試算が過大だったのではないかという。

 エネテクでは、太陽光パネル内で影がかかる範囲が限られていたり、影がかかるパネルだけをまとめてストリングを構成して全体への影響を最小化する対策を講じているからといって、発電量への影響が少ないと甘く見ないほうが良いと強調している。

 こうした不良が見つかった発電所の開発の経緯を問い合わせてみると、やはり面積当たりの効率を増やす目的で、影がかかることを承知の上でアレイ間隔を過剰に狭く詰めていることがほとんどとしている。

 中には、土地の状況から、計画した枚数の太陽光パネルを並べられないことがわかったにも関わらず、なんとか無理やり当初の計画にできるだけ枚数のパネルを設置するために過剰に間隔を狭めていた発電所もある。

 このほか、周囲の木や雑草、電柱などによる影が原因になっている場合もある(図3)。

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図3●木や雑草の影でも
下の画像の左下2段のストリング全体の過熱は雑草による影響(出所:エネテク)
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【エネテクによるトラブル・シューティング】