「インフラ投資法人」「特定卸供給」のメガソーラーで盗難、発電量ゼロの影響は?

みんな電力の再エネ100%電気で、リコーの御殿場事業所が活用

2020/06/18 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 静岡県御前崎市にある太陽光パネルの出力約1098kW、連系出力が990kWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)において3月、電線が切られて盗まれる被害があった(図1)。

図1●電線が切られて盗まれた
(出所:日経BP)
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 太陽光発電所における電線の盗難は、全国各地で起きており、報道されないものを含めれば、相当数に及んでいると見られる。

 その中で、今回のメガソーラーは、インフラ投資法人に組み込まれ、かつ、特定卸供給の対象となっている点で、これまで盗難の被害を受けた他の一般的な太陽光発電所に比べると関係当事者が多く、影響は大きい。この点から、注目を集めている。

 電線を盗まれる被害に遭ったのは、タカラレーベングループが開発・運営している「LS 静岡御前崎発電所」である(図2)。

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図2●LS 静岡御前崎発電所
(出所:上は日経BP、下はタカラレーベン・インフラ投資法人)

 タカラレーベンが開発した太陽光発電所の一つで、固定価格買取制度(FIT)に基づく売電単価(税抜き)は36円/kWhで、2015年3月30日に商業運転を開始し、中部電力に売電している。

 現在は、インフラ投資法人に組み込まれている。タカラレーベン・インフラ投資法人がメガソーラーの資産を所有し、その資産運用をタカラアセットマネジメントが担当している。オペレーター(運営者)であるタカラレーベンは、タカラアセットマネジメントから発電設備を借りて売電している、という仕組みとなっている。

 東京証券取引所のインフラファンド市場では、このように資産の所有と運営を分ける仕組みが求められている。

 タカラレーベン・インフラ投資法人、タカラアセットマネジメントの両者は、盗難に遭った事実や、復旧の見通しなどを、その都度、発表してきた。こうした情報公開は、投資家から広く資金を集める上場ファンドでは重要になる。

 まず3月5日に、電線が盗まれて売電が停止していることを発表した。被害を確認したのは、この2日前の3月3日としている。

 その後、5月12日には、復旧工事について発表した。7月上旬に工事が終わる予定としている。この工事の完了とは、再連系前の点検を含む。中部電力の対応次第で、この翌日にも売電を再開できることになる。

 復旧工事では、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けている。電線をはじめとする部材の納入に、通常時より長い時間を要しているという。

 現時点では、被害額や発電停止による収入の逸失額の試算などは公表していない。工事が終わって復旧に要した総費用、適用できた保険の総額などが確定し、投資家に対して影響が生じない範囲に収まるのか、影響が及ぶのかも含めて把握できた段階で、公表するとしている。

 盗難の再発防止策も検討しており、これも確定次第公表する。

 タカラアセットマネジメントによると、発電所内の主要な電線が軒並み盗まれたという。現地の状況からも、接続箱とパワーコンディショナー(PCS)を結んでいる電線が盗まれたことがわかる(図3)。

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図3●接続箱とPCSを結ぶ電線が切られていた
(出所:日経BP)
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 これによって、発電所の売電収入はゼロとなった。この売電収入がゼロの状況は、再連系する日まで続く。

 ただし、タカラアセットマネジメントが担当している発電所の資産運用としては、この間も収入はゼロにならない。

 他のインフラ投資法人と同じように、タカラレーベンでもインフラ投資法人の太陽光発電所からの収入は、売電による収入ではなく、発電所をオペレーター(今回の場合はタカラレーベン)に貸していることによる賃料を収入としているためである。

 大部分が基本賃料、残りが実績連動賃料という構成となっている。これによって、事実上、FITに基づく売電収入の上振れ分も取り込めるように設定している。

 このため、大部分を占める基本賃料(タカラアセットマネジメントでは「最低保証賃料」と称している)は入り続ける。

 タカラレーベン・インフラ投資法人では、御前崎のメガソーラーのような上場後に取得した発電所については、発電量の予測値の超過確率75パーセンタイル(P75)を基準に、大部分を最低保証賃料、残りを実績連動賃料の設定としている(図4)。

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図4●LS 静岡御前崎発電所の賃借料(上)と、2018年11月期の発電量(下)
実績連動分には、みんな電力への特定卸供給によるプレミアム分も加わる。下のグラフの左の青棒は予想発電量、右の赤棒が実際の発電量(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 P75とは、過去20年間の日射量の分布から想定して、75%の確率で達成可能と見込まれる発電量である。

 この基本賃料と実績連動賃料の構成比や基準とする予測値の超過確率は、インフラ投資法人ごとに違いがある。また、発電所の所有比率によっても変わる。

 例えば、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の場合、P50を基準に、7割を基本賃料、3割は実績連動に賃料を設定している(関連インタビュー)。

リコーの「RE100」を支える卸供給

 また、今回電線が盗まれた「LS 静岡御前崎発電所」の発電電力は、みんな電力への「特定卸供給」に活用されている(関連ニュース)。

 特定卸供給では、LS 静岡御前崎発電所にとっての売電先は、中部電力のままで変わっていない。みんな電力が中部電力と特定卸供給の契約を結び、この契約に基づいて、LS 静岡御前崎発電所の発電電力が、中部電力からみんな電力に供給されている(図5)。

図5●特定卸供給の概要
(出所:タカラレーベン・インフラ投資法人)
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 みんな電力は、「再エネ100%電力」メニューを契約している顧客に対して、こうした特定卸供給の太陽光発電電力を優先的に供給できる。

 このように、事前に小売電気事業者が発電事業者に卸供給の承諾を得たうえで、発電事業者や発電所を特定した再エネ発電電力を、送配電事業者(今回の場合は中部電力)の供給設備を介し、小売電気事業者に対して卸供給する仕組みである。

 みんな電力によると、特定卸供給で調達したLS 静岡御前崎発電所の太陽光発電電力は、主にリコーの静岡県御殿場市にある拠点に供給している。

 リコーは2019年8月、この御殿場の拠点で使う電力を100%再エネで賄う体制が整ったことを発表していた(関連ニュース)。みんな電力が調達しているLS 静岡御前崎発電所の太陽光発電電力の活用も、この実現に大きく寄与しているとみられる。

 リコーの場合、事業運営に必要な電力を100%再エネで賄うことを目指す国際イニシアチブ「RE100」に加盟し、100%再エネの実現を目指していることから、みんな電力による「再エネ100%電力」は魅力的な契約といえる。

 さらに、「トラッキング付き非化石証書」を組み合わせることで、RE100では本来認められないFITに基づく発電電力でありながら、RE100の定義でも認められる再エネ利用とすることができる。

 みんな電力は、リコーの御殿場の事業所に再エネ100%電力を供給する際、独自のトラッキングシステムを活用して30分ごとの電力構成を把握し、実際に再エネ100%電力であることをリコーに示している。

 このトラッキングシステムにおいて、LS 静岡御前崎発電所の太陽光発電電力を、優先的にリコーの御殿場の事業所に送る設定にしているという。

 今回の盗難によって、みんな電力は、LS 静岡御前崎発電所の太陽光発電電力を調達できない状況が続いている。どのように対応しているのだろうか。

 みんな電力によると、リコーの御殿場の事業所への再エネ100%電気の供給は、LS 静岡御前崎発電所の太陽光発電電力を優先的に供給するといった決まりはあるものの、事故などの影響によって発電や送電ができなくなった場合には、他の再エネ発電所の発電電力を回して代替できる取引になっている。

 このため、現在は他の再エネ発電所の発電電力の優先順を上げて供給を続けて対応している。みんな電力の場合、再エネ100%電気の需要に対して5倍以上の再エネ電力を調達しているという。今回のような不慮のトラブルに見舞われても、顧客の再エネ電源比率を低下させることなく対応できているようだ。