雨が降ると稼働を止めるパワコン、「過敏な仕様」に起因
雨が降るたびに頻繁にPCSが稼働を停止する。安全機能が働くことによる停止で、その原因として「地絡」が通知される
2020/9/3
このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。
今回は、発火してもおかしくなかった状況まで過熱していた接続箱に関するトラブルを取り上げる。製造時の不良に加えて、太陽光発電所における設置環境の悪さも重なって生じたとみられる。
エネテクが定期点検の年間契約を受注した太陽光発電所で見つかった。
同社では、年間契約の定期点検において、接続箱はまず赤外線カメラで撮影して熱分布の画像を取得する。この熱分布の画像から、過熱している場所があればひと目ですぐにわかる(図1)。
今回の太陽光発電所では、海外メーカー製の接続箱が採用されていた。赤外線カメラで撮影するために筐体の扉を開けると、この時点で、中から強烈な熱気を感じ、焦げによる異臭が漂っていた。過熱している可能性があった。
赤外線カメラで熱分布画像を撮影すると、やはり280℃などと過熱している場所が見つかった。
大きな電流が流れるバスバー(ブスバー)と呼ばれる部材や開閉器(ブレーカー)の周辺などで生じていた(図2)。
この状態でも、発電は続いていた。このため、熱分布で過熱を示した場所を中心に状況を確認した結果、ブレーカーから各回路に設けられたヒューズに接続されているバスバーのボルトやビスが緩んでいた。とくに、主開閉器は手締めした程度ではないかと思われるほどの緩みだった。
それによって電気抵抗が増加し、過熱していることが推測できた。
ブレーカー周辺の部材には、焦げて炭化している場所もあった。
その後の対応として、炭化していた場所を中心に清掃し、緩んでいた場所すべてを増し締めした。この結果、ほとんどの場所で過熱の度合いが低下した(図3)。
しかし、ブレーカーの周辺で過熱したままの回路もあった。こうしたブレーカーは交換した。これによって正常に復旧できた。
エネテクでは、ビスやボルトのゆるみは、メーカーによる製造時に原因があるのではないかとみている。この不良は、EPC(設計・調達・施工)サービスなどが、受入検査を適切に実施していれば見抜くことができたはずだという。
また、ブレーカーが高額で、かつ複数個のセット販売しかしていない機種のため、復旧に要するコストが高くなったという。
ただし、製造不良だけが原因ではないという。この太陽光発電所の立地条件によって、ゆるみの度合いが増していったと推測している。
普段から強い風が吹いている海に近い。さらに、幹線道路に面し、トラックなどの大型車が頻繁に走行していて、慢性的に振動が伝わる状況である。このため、架台に固定された接続箱は、日常的に振動している。この影響で、ゆるみの度合いが増したとみている。
エネテクでは今回、ビスやボルトを適切に締め直した。しかし、発電所の強風と振動の状況をみていると、また同じように緩んでくると危惧している。
現在の契約では年に1回、同じ点検を繰り返すが、このビスやボルトについては、1年に1回の点検と補修では間に合わず、1年後にはまた同じように過熱している恐れがあるという。
他の太陽光発電所において、接続箱の似たような状況による過熱から、売電を開始してすぐに接続箱が燃えた例もあるという。接続箱の選定の重要性や、環境に合わせたメンテナンスの重要性を改めて認識してほしいとしている。
「フタをケチったラック」、電線の損傷や火災、除草時に事故も
電線をまとめて敷設する時に使われる「ケーブルラック」を、適切でない使い方をしていた。電線が損傷して発火や火災に至ったり、
2020/3/11