台風で法面が崩れ、電柱があわや倒れる寸前に
台風の強風や豪雨によって東北でも被害が相次いだ。この発電所では、敷地外の法面が大きく崩れた
2020/10/15
このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を紹介している。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。
今回は、電線をまとめて保護するための配管に穴が開き、配管の中にダンゴムシが棲み付いて、巣が作られていた例を取り上げる。
電線は、太陽光パネルから接続箱までを結ぶ経路のものである。複数のストリング(太陽光パネルを接続した単位)の電線を束ねて、樹脂でできた保護用の配管に収め、接続箱まで敷設されている。
配管に穴が開いて、ダンゴムシが棲み付いていた場所は、配管が燃えて穴が開いた形跡があった(図1、動画)。
図1・動画●配管に穴が開き、その中でダンゴムシが巣を作って棲み付いていた
(出所:エネテク)
隣り合う配管の中には、燃えてなくなって空洞となっている場所もあった。電線も被覆が長い範囲で焦げて炭化していた。
電線が激しく炭化していた回路は(図2)、送電が停止していた。
送電に異常をきたしていただけでなく、安全上も大変に危険な状態だった。
ダンゴムシが棲み付いていた配管内に電線が通っていたストリングは、送電が続いていた。エネテクでは、安全を考慮して、発電事業者にこの回路の送電を止めるように助言した。発電事業者がこれを受け入れ、送電を止めた。
電線や配管が燃えたり焦げたりした際に、幸いにも雑草に燃え移った形跡はなかった。雑草は比較的、しっかり刈られており、その状態が奏功したようだ。
こうした安全面・防災面でも、適切な草刈りは重要なことを示す例といえる。
電線や配管が燃えたり焦げたりする原因は、発電設備のずさんな設計や施工による場合が多い。このような不具合は、これまでの連載でも度々取り上げてきた。
しかし、エネテクが調べた限り、この発電所に関しては、このような設計や施工時の不手際によるものではなさそうだという。
この発電所は、近くに農地がある。農地では、刈り取った草や収穫後の茎などを燃やして処分する「野焼き」が定期的に実施される。
風向きや風の勢いによって、野焼きで生じた灰などが、この発電所内まで飛んでくることがある。
この野焼きにともなう飛散物が、高温のまま配管に落ちて触れたことで、樹脂に燃え移って、配管が溶けて穴が開いたり空洞になったと推測している。電線の被覆まで広範囲で炭化していることから、燃えたままの状態の雑草のかたまりが飛んできた可能性もある。
農地における野焼きは、国内各地で長年、実施されている。後から近隣地に進出してきた太陽光発電所からお願いして、野焼きを止めてもらうといった対応は難しいと予想される。
農地の近くでは、このようなリスクも想定し、事前に野焼きの日時を確認して発電所に待機したり、そもそもそうした地域での立地を避けるなどの対応の必要性を示す例といえる。
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