ドローンで発見しやすい、コネクターの腐食や接続不良
ドローン点検の利点の1つは、コネクターが接続されていなかったり、コネクターの異常によって送電されていない状態を、容易に発見できる点にある
2020/12/24
今回のシリーズでは、エナジー・ソリューションズ(東京都千代田区)が、ドローン(無人小型飛行体)による空撮を応用した太陽光パネルの点検サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げる。同社は2010年に設立されたベンチャーで、IT関連のシステム開発やサービスを得意とする。ドローンによるパネル点検サービスでは、異常箇所の特定だけでなく、状況や原因、その異常の深刻度の分析、対応に向けた助言まで迅速に提供する点に強みがある。
エナジー・ソリューションズによるドローン点検サービスは、人間の健康診断でいうCTスキャンに該当するような精密な診断ではなく、緊急度の高いトラブルを素早く見つけ、対応の選択肢まで提案することに主眼を置いている。
比較的、高解像度の静止画などを使う手法は、作業にある程度の時間を要するため、トラブル箇所の素早い特定という目的には向かない。同社では、動画で熱分布画像を撮影して分析することで短時間での不具合箇所の特定・分析を可能にしている。ソフトウェアの工夫によって、分析時間を約2MWあたり約3分間などと短縮している。
こうしたスピーディーな対応が評価され、123カ所・合計出力1.5GWに対してサービス実績があり、繰り返し受託している発電所もあることから、回数としては165回に達するという。
第4回では、予期しない理由でパワーコンディショナー(PCS)への送電が止まっていた例を取り上げる。
この太陽光発電所では、商業運転を開始する前の使用前自主検査を実施した後に、ドローン点検を実施した。使用前自主検査は、竣工前検査などとも呼ばれる。
使用前自主検査では、異常が見つからなかったといっても、念のため別の手法でも状況を確認しておきたいという要望だった。
そこで、ドローンで空撮して点検した結果、カバーガラスの割れた太陽光パネルのほか、いわゆる分散型と呼ばれる小容量のPCSの入力端子に差し込まれているはずの電線が外れている箇所が3カ所で見つかった。
ガラスの割れとともに、いずれも使用前自主検査でしっかりと確認ずみで、異常がなかった場所だった。
その後のわずかな期間に、何らかの原因で外れたと考えられた。
分散型PCSから電線が外れていたストリング(太陽光パネルを接続する単位)は、全体の送電が止まる。
このため、発電電力のエネルギーが熱に変わり、全体が過熱する。ドローンによる熱分布画像を見ると、そうした状況がひと目でわかる(図1、動画)。
このストリング全体の熱分布の異常を見つけ、該当するストリングの分散型PCSへの入力端子を確認すると、3カ所とも電線が外れていた。
1カ所目は、電線がきれいな状態で外れていた。2カ所目は、電線を保護する樹脂の被覆が破れて銅線が露出していた。
3カ所目は、キバで噛んだような跡がついており、近くにはサルのフンが落ちていた。これによって、サルによる仕業と推測できた(図2)。
ただ、サルのいたずらにしては、1カ所目のコネクターが、損傷がまったくなく、きれいに外れていたことが不思議だった。
これは、端子への着脱に使うコネクター側の突起が、たまたまサルのツメがうまく合う寸法で、偶然、うまく突起が押されて容易に外れたのではないかみている。
サルが電線を外したのは、夜間と推測している。日中は太陽光発電電力が流れているため、その状態で入力端子から電線を外したら、サルでも感電してしまうためである。
ガラスの割れも、サルが地上から投石したことによるものではないかと予想している。