火災で停止した静岡県小山町のバイオマス発電、今夏に暫定再稼働へ

熱供給事業にも乗り出し、事業収支の改善を目指す

2021/01/28 19:00
金子憲治=日経BP総合研究所 クリーンテックラボ

壁と屋根の太陽光パネルが焼ける

 静岡県小山町が運営するバイオマス発電所「森の金太郎発電所」から火災が発生したのは2020年7月4日。町では火災事故以来、施設の稼働を停止し、廃止の可能性も含めて今後の在り方に関して有識者を含めた検討委員会で議論してきた。昨年12月17日、今夏をめどに暫定的に再稼働すると発表した(図1)。

図1●火災で停止した「森の金太郎発電所」
図1●火災で停止した「森の金太郎発電所」
壁際にあった飛灰を投入する容器から出火し、壁と屋根の太陽光パネルが燃えた(出所:日経BP)
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 発電所のある小山町は静岡県の最北東に位置する。町域には富士山頂を有し、金太郎生誕の地としても知られる。同町では、地域活性化と林業の発展を目指し、地域から出る未利用の間伐材で製造した木質ペレットを燃料としたバイオマス発電所「森の金太郎発電所」を建設し、2018年9月に稼働させた。熱分解によるガス化方式で、出力165kWという小規模ながら、発電効率は30%以上も可能なことが特徴だ。

 将来的に排熱を有効活用することを視野に入れつつも、まずは固定価格買取制度(FIT)を利用して系統接続し、買取単価40円/kWhの売電だけの事業モデルでスタートした。

 バイオマス発電設備はドイツのブルクハルト社製で、木質ペレットを蒸し焼きして可燃ガス(水素、一酸化炭素など)を生成する「ガス化ユニット」と、そのガスを燃料に発電と熱供給を行う「熱電併給ユニット」から構成される。建屋は木造2階建てで、屋根は全面を両面受光型の太陽光パネルを建材として活用し、出力は約50kWとなっている。

 火災が発生したのは、7月4日9時頃で同日11時51分頃に鎮火した。出火元は、飛灰を貯めておく容器と見られ、建屋外の軒下の壁際に設置されていた。ガス化ユニットで生成した可燃性ガスからフィルターで取り除かれた飛灰などが排出される仕組みだった。

 飛灰が排出される容器は、高さ2mほどの直方体で、フレコンのような柔軟な材質で作られていた。この容器から発火した後、その裏側になる建屋の壁に燃え移り、さらに太陽光パネルで構成されていた屋根の一部まで延焼した時点で鎮火した。建屋内部にあるガス化ユニットや熱電併給ユニットなどの設備に損傷はなかった(図2)。

図2●建屋内の発電設備本体に損傷はなかった
図2●建屋内の発電設備本体に損傷はなかった
(出所:日経BP)
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稼働1年目の稼働率は50%以下

 出火に至った原因については、現段階でも特定されていないが、強風や雨など何らかの要因で容器に穴が開き、そこから空気が吹き込み、中の飛灰が発火した可能性が指摘されている。とはいえ、同じ設計で建設された他の導入サイトでは、問題なく運用されていることから、構造的な問題があるとまでは言えないという(図3)。

図3●三洋貿易が見本市で展示したブルクハルト製の木質ペレット・ガス化熱電併給装置。手前の2つの白い容器が今回の出火元になったと推測されている
図3●三洋貿易が見本市で展示したブルクハルト製の木質ペレット・ガス化熱電併給装置。手前の2つの白い容器が今回の出火元になったと推測されている
(出所:日経BP)
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 「森の金太郎発電所」は2018年9月に稼働した後、必ずしも順調に運用されていたとは言えなかった。本格稼働に入った2019年度の平均稼働率は47.7%に留まり、事業収支は赤字が続いていた。

 ブルクハルト製のガス化装置は、世界で160基以上の運用実績があり、平均稼働率は90%近いなど、定評がある。だが、日本国内に導入した場合、ペレットに含まれる無機成分の違いから、ガス化炉内にクリンカが生成しやすく、それが原因で燃料効率が落ちてタールが発生する例が報告されている。そうなると頻繁に稼働を停止して炉内のクリンカを除去する作業が必要になり、連続運転ができないという状況になる(関連記事:串間市のバイオマス発電所、「発火事故」乗り越え安定稼働に)。

 また、熱分解ガス化では、木質ペレットの含水率が重要になるが、ブルクハルトの指定する含水率に適合していても、ペレットのふやけやすさを示す膨潤度によって、熱分解ガス化の安定度合いに大きな差があることなどのケースも報告されている(関連記事:高山のバイオマス発電、トラブルを乗り越え安定稼働に)。

 「森の金太郎発電所」も稼働して1年は、ガス化工程などの安定運用に苦しみ、木質ペレット製造事業者とともに、ペレット品質の改善などに取り組んできた。こうした試行錯誤の成果が表れ、2020年1月以降、稼働率は安定的に70%を超え、5月・6月は86%を超えるなど良好な運転が維持されていた。火災が起きたのは、そんな矢先だった。

2023年に熱供給事業目指す

 火災事故の後、小山町副町長や有識者などからなる検討委員会が開かれ、事故の再発防止を念頭にした安全性の確保とともに、事業の持続可能性の観点から、将来的に赤字から脱却できるのか、という点なども議論された。こうした論点で、展望が見出せなければ、「廃止」の可能性も含めて検討した。

 安全の確保に関しては、火元と思われる、飛灰を貯めておく容器が問題になった。原因は特定できないとはいえ、強風による容器の損傷が考えられることから、その周囲を十分に丈夫な囲いで覆い、長期間、強風や雨に晒されても、損傷して中に空気が吹き込まない構造に改良する方向になった。

 もう1つの論点であった事業収支の改善に関しては、発電設備の稼働率87%という目標を達成しつつ、排熱を活用した熱供給事業を2023年度に開始するという目標を設定することで、再稼働するとした。

 ただ、検討委員会は今後も存続させ、運転状況を継続的に監視しつつ、長期的な方向を再検討するという前提から、町では「暫定再稼働」という表現を使っている。

 具体的には、2021年6月までに設備の修繕を完了して試運転を開始し、8月には再稼働に入り、目標稼働率87%を目指す。さらに2023年度には熱供給事業を開始し、これにより事業収支の黒字を達成するとしている。FITの売電期間は2039年4月で、起債の償還は同年3月を予定している(図4)。

図4●小山町木質バイオマス発電事業に関する今後の方向性
図4●小山町木質バイオマス発電事業に関する今後の方向性
(出所:小山町)
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