水上太陽光で警報、原因は「ヌートリアがかじって短絡」

エネテク 第61回

2021/02/18 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている(関連コラム)。

 今回は、思わぬ理由で、太陽光パネル同士を結ぶ電線が損傷していた例を取り上げる。

 農業用ため池を活用した水上型の太陽光発電所で、パワーコンディショナー(PCS)が漏電を検出し、遠隔監視システムで警報が発せられた。

 この水上型太陽光発電所は、エネテクがEPC(設計・調達・施工)サービスを担当し、O&M(運用・保守)の作業も担っている。

 この水上型太陽光発電所は、米SolarEdge Technologies製の小型PCSと、太陽光パネルに取り付ける端子であるパワーオプティマイザーをセットで導入し、太陽光パネル2枚ごとに監視・制御できる仕組みを採用している。

 パワーオプティマイザーは、通常はPCSが担う最大電力点追従(MPPT)制御、DC/DC変換器の機能を持つ。

 発電効率の利点に関心が集まるが、より大きな価値は、安全面にある。太陽光パネル単位で制御できることから、発電設備に何らかの異常が生じたときに、遠隔でパネルごとに出力を止められる。PCSからの信号を正常に受信できない状態になった場合にも、その直流回路の送電が止まる。

 今回のトラブルでも、この機能が生きた。

 遠隔監視システムで異常を示す警報が発され、現地で該当する回路を調べてみると、電線を覆う樹脂の被覆が損傷し、銅線がむき出しになっている場所があった。複数の場所で、このような損傷が生じていた(図1)。

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図1●かじって被覆が剥かれた電線
(出所:エネテク)
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 噛み切られているような痕跡が残っており、小動物による損傷が疑われた。

 この池は、冬の低温期には、水面が凍ることがある。エネテクの点検担当者が現地に駆け付けた日も、水面が凍っていた。

 噛み切られているような痕跡を見て、池の周囲を見回してみると、凍った水面の上を、何かが動いている様子が目に入った(図2)。

図2●凍った水面を岸に向かって歩いている後ろ姿
(出所:エネテク)
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 観察してみると、1匹の茶色い小動物だった。点検担当者の気配を察して、水上の太陽光発電設備を離れ、凍った水面の上を歩いて、岸に向かっていた。

 この小動物は、そのまま岸に戻った。

 その後も観察を続けていると、岸に戻った1匹に加えて、もう1匹、少し小柄な個体も並ぶようにして、点検担当者の方を見ていた(図3)。

図3●岸から親子2匹で点検担当者の様子を見ていた
(出所:エネテク)
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 その姿から、小動物がヌートリアであることがわかった。池の周辺に住みついている親子のようだった。

 ヌートリアは、外来の小型哺乳類で、北米に多く生息している。外見はカピバラに似ていて可愛らしいが、その姿から想像されないような繁殖力や行動で知られる。

 日本固有の生態系を脅かしたり、農作物を食べたりするだけでなく、巣穴を広げることで河川の堤防や池の堤体を決壊させた例まで報告されている。駆除計画を策定した地方自治体も多い。

 ヌートリアが電線をかじって損傷させ、直流回路が地絡してしまう被害は、水上型太陽光発電所に特有のトラブルとしてここ数年、増えている。

 エネテクでは、当面の措置として、電線を束ねて敷設する時に使う配管を活用することにした。できるだけ電線の根本の近くまで配管に収めるようにし、電線がそのまま露出している場所を減らした。

 ただし、今後、電線以外の設備にも損傷の被害が広がるようになってしまうと、新たな対策が必要になるかもしれないと、頭を悩ませている。



【エネテクによるトラブル・シューティング】