豪雪で、アレイごと地面に押し潰された、東北の低圧太陽光
エネテク 第68回
このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。
2020~21年にかけての冬は、東北地方で豪雪に見舞われる地域が多かった。ある程度の積雪には備えている設計の太陽光発電設備であっても、想定を大きく超えるような積雪量の降雪が度重なることで損壊した例が目立った。また、北海道や北陸のいわゆる豪雪地域に立地する太陽光発電所に比べると、積雪への備えが十分ではない場合もあり、こうした発電所の中には壊滅的な被害を受けた例もある(関連コラム:その1、その2)。
このような中、エネテクは4月、東北地方にある複数の太陽光発電所における、雪害による太陽光パネルの損壊状況の調査を担当した。いずれも豪雪によってアレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)が架台ごと大きく損壊した発電所で、低圧配電線に連系している発電所だった(関連コラム:その3、その4)。
エネテクに調査を依頼したのは、日本太陽光発電検査技術協会(京都市中京区)である。名称の通り、太陽光発電設備の点検技術の確立や向上、技術者の育成などを目的とする団体で、関連企業が多く入会している。
同協会の代表理事を、東北に本拠を置くアイシック(仙台市泉区)の斉藤昭雄代表取締役が務めていることから、東北の豪雪被害の状況に通じており、協会の理事でもあるエネテクに調査を依頼した。
今回、紹介する低圧太陽光発電所は、アレイ全面が架台ごと地面に押し潰された(図1)。
この姿は、雪害で損傷した一般的な太陽光発電所の例とは、大きく異なる。雪害による損傷で多く見られるのは、アレイに降り積もった雪が地面に滑り落ちていく過程で生じる場合で、アレイ下部ほど大きな荷重がかかり、地面側に引っ張られるように架台の斜材先端が曲がる被害が典型である。
ところが、今回の低圧太陽光は、そのような過程を経ずに、アレイの全面が、架台ごと真下の地面まで直線的に潰れたような壊れ方をしていた。架台が前方に傾いた形跡もない。
しかも、この低圧太陽光を構成する他のアレイ・架台は、同じように積雪したにも関わらず、損壊を免れた(図2)。1つのアレイだけが、潰れるように損壊したのだ。
珍しい例といえる。
他のアレイ・架台と、大きな違いはあるのだろうか。はっきり異なる点が1つあった。地面に押し潰されたアレイにだけ、架台にパワーコンディショナー(PCS)が取り付けられていた(図3)。他の架台には、PCSは固定されていなかった。
このPCSの固定の有無が、大きく左右したとみられる。
エネテクでは、今回の東北での雪害被害の調査に、新たに採用したドローン(無人小型飛行体)を持ち込んだ。
赤外線カメラ、可視画像のカメラの両方を搭載し、カメラを積み替えることなく、1回の飛行で熱分布画像と可視画像の両方を空撮できる(図4)。動画を撮影しながら静止画を撮影することも可能という。
しかも、それぞれ高解像度の画像を空撮できる。発電素子(セル)単体の状態まで、ほぼわかるような画像だという。
機体は比較的大型で、風に強い利点もある。相対的に大きな蓄電池を搭載できるので、飛行時間も一般的なドローンの20分に対して、40分などと長い。
価格は300万円以上と高額だが、点検の効率向上により、長期的に利点が大きいと考え、導入した。