「すべてのパネルを交換したい」、ずさんな工事の低圧太陽光

エネテク 第69回

2021/06/17 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 この春、都内で開催された太陽光発電関連の展示会に、エネテクは例年の通り出展した。

 すると、展示ブースを訪ねてきた事業用低圧の太陽光発電所を運営している事業者から、「稼働後4年~5年経つ低圧の発電所を所有しているが、発電量が著しく低下して困っている。太陽光パネルを全交換するには、どの程度の予算が要るのか」という質問を受けた。

 かなり大規模な被災にでも直面しない限り、この稼働年数で太陽光パネルを全て交換する例は珍しい。

 まず、発電所の状況を教えてもらうことにした。開発事業者やEPC(設計・調達・施工)サービス会社などによる保証の有無を確認すると、「知人に工事を依頼したため、契約書や保証書はもらっていない」とのことだった。

 出力低下に関し、これまでの点検内容や調査の有無を聞いたところ、「調査したことはない」とのことだった。

 そこで、まず点検することを勧めた。結果的に、後日、エネテクがこの点検を担当することになった(図1)。

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図1●現地を見てすぐに、不具合が多く発見されそうなことを予感した
(出所:エネテク)

 現地に到着して発電所を見渡しただけでも、不具合が多く検出されるだろうと、容易に予想できた。

 外周のフェンスは大きく歪んで錆びている。杭基礎の一部が沈下したことで、アレイ(太陽光パネルを架台に固定する単位)が歪んでいる。雑草は繁茂している。アース線は、ことごとく断線している。

 杭基礎と架台の支柱を固定するネジに、かなり長いものを使って、架台を浮かせて高さを確保している場所もある(図2)。杭基礎の打ち込み過ぎか、その後の沈下か、このように長いネジで架台の支柱を浮かせる理由は不明だが、この状況は倒壊を招く危険性がある。

図2●長いネジを使い、架台の支柱を浮かせて杭基礎に固定していた
(出所:エネテク)
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 点検をはじめると、すぐに発電していないストリング(太陽光パネルを接続した単位)が見つかった。

 この回路を調べると、溶けているコネクターが見つかった(図3)。圧着や接続の不良によって高抵抗化して発熱し、溶損し、断線したことが推測できた。

図3●溶けていたコネクター
(出所:エネテク)
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 幸いなことに、この場所は、ストリングの末端で生じていたため、復旧は比較的容易だった。

 このコネクターを含むパネルを切り離し、コネクターには絶縁処理を行うとともに、直列接続の枚数を6枚から残りの5枚に変えて、正常な5枚の太陽光パネルの発電電力は送電できるよう応急処置を施して復帰した。

 発電量が低下した主な原因は、この部分であると予想できた。

 通常のメニューでの計測機器による点検を終え、次は目視点検に移った。すると、不自然にテーピングが施されているコネクターが見つかった(図4)。

図4●テーピングされていたコネクター
(出所:エネテク)
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 テープをはがしてみると、その下には、端子が接続されていたものの、本来ならあるはずの、もう一方のコネクターの樹脂の外装がなかった。樹脂の外装がないために、テーピングでごまかしていたようだ。このような場所が4カ所もあった。

 施工時に、コネクターが足りなったことによる措置と推察される。端子の圧着だけ施して、絶縁テープで巻いて施工していた(図5)。

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図5●端子には接続されていたが、樹脂の外装がなかった
(出所:エネテク)

 杜撰な工事の典型的な例の1つといえる。

 この場所は、新品のコネクターを装着して接続し直し、安全に発電できるようになった(図6)。

図6●新品のコネクターを取り付けて対処
(出所:エネテク)
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 今回の例では、発電事業者は、工事を担当した知人を信頼して、間違いなどはないだろうと考え、すべてのパネルの交換を検討していた。その信頼を裏切るような施工の状態だったという。

 残念ながら、杜撰な施工がなされた太陽光発電所は、国内にほかにも存在している。エネテクでは、こうしたサイトを発見し、安全な設備に変えていくことも点検の重要な役割と考えている。



【エネテクによるトラブル・シューティング】