「すべてのパネルを交換したい」、ずさんな工事の低圧
「発電量が著しく低下して困っている。パネルを全交換するには、どの程度の予算が要るのか」という質問を受けた
2021/06/17
このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。
中国地方において低圧配電線に連系している事業用太陽光発電所を3区画所有している発電事業者から、エネテクに相談があった。
発電所の施工を担当した企業に、そのまま引き続いて保守を委託していたが、その企業が倒産してしまい、新たに保守を委託する企業を探している、という内容だった。
しかも、発電が停止しているということだった。原因はわからないという。当たり前だが、1日でも早く売電を復旧したいという意向は強かった。
エネテクが保守サービスを担当することになった。緊急を要する状況から、すぐに現地に向かった。
現地の状況を調べると、9台あるパワーコンディショナー(PCS)が、すべて稼働を停止していた。PCSの表示画面には、エラーを示すコードが表示されていた。遠隔監視・制御システム上でも、同じようにエラーが表示されていた。
PCSが稼働を停止していた原因を調べると、オンラインによる出力制御(出力抑制)に関連するものだった。今回の事業用低圧太陽光は、需給バランスを維持するために一般送配電事業者による出力抑制が始まっている地域に立地している。
この出力抑制に関連して、PCSと遠隔監視・制御システムとの間で、通信に異常が生じていた。
出力抑制時の遠隔制御のために、新たに加わった「通信の異常が5分間以上続くと、PCSの稼働を停止する」という機能によって生じていた。この機能が働いて9台のPCSすべてが稼働を止めたことがわかった。
PCSのメーカーと遠隔監視・制御システムのメーカーに問い合わせ、すべてのPCSの稼働を復旧させた。しかし、売電の停止から復旧まで、少なくとも1週間以上が経っていた。
この時点では、PCSの稼働は復旧させたものの、PCSと遠隔監視・制御システムの間で起きた通信異常の原因は特定できていなかった。
遠隔監視・制御システムの通信に関する異常は、比較的多く生じるトラブルの代表例でもある。1回、復旧させる対応を実施したからといって、原因までは特定できないことも多いのが実態ではないかという。
特に、通信側に原因の多くがある場合、原因を特定することは難しい。その時の電波の状況や、近隣の系統が停電していたといった理由でも停止することがあり、時間が経過すると自然に復旧していることもある。
現実の対応として、その発電所の特性を見極めて復旧させていくことしか対処方法がないようだ。
今回の場合、現地で作業した担当者は、復旧する過程で、何か違和感のようなものがあったという。しかし、目の前の作業としては、PCSをリセットすることですぐに復旧でき、目視点検や電圧などの測定でも異常が見つからなかったことから、今後、様子を見ることになった。
発電事業者に状況と対応を報告した際、これまでに同じような稼働停止があったかどうかを確認すると、過去にも同じように通信の異常が理由でPCSがすべて停止したことが複数回発生していた。
こうした時に、当時の保守サービス会社からは、「原因は、電波の送受信の状況が悪いこと」と説明されていた。
こうしたやり取りが繰り返されていたということは、今後も同じようにPCSがすべて止まることが起こりうる。
そして、約1カ月後、予想していた通りにエネテクの遠隔監視センターに同じエラーの通報が届いた。再び現地に向かった。現地でPCSを確認しても、前回と同じエラーが生じていた。
PCSの隣にある、遠隔監視・制御システムの筐体の扉を開けた(図1)。すると、筐体の中で、何か黒いものが動いていた。アリだった。卵まであった。
アリは、筐体の下部にある電線の入出力口を塞いでいる樹脂のパテを食い破って、遠隔監視・制御システムの筐体内に侵入していた。居心地がよいのか、産卵までして巣として生息していた。
第28回の「アリが電線を食いちぎり、メガソーラーが稼働停止!」で紹介したとおり、アリは顎が強靭で電線くらい、簡単に食いちぎるのだ。
応急措置として、アリを除去し、さらに、遠隔監視・制御システムの筐体にある、電線の入出力口を塞ぐためのパテを補修した。さらに、筐体内に、アリの駆除剤(アリの巣コロリ)を追加した(図2)。
この後、同じような通信の異常によるPCSの稼働停止は生じていない。
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