豪雨の後、「太陽光パネルに、おびただしいカエルの死骸」

エネテク 第72回

2021/07/29 17:45
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 近年は、記録的な豪雨といった、過去には想像できなかったような極端な気象が各地で増えている。太陽光発電所における被災も目立つようになってきた。

 こうした極端な気象は、生物にも大きな影響を及ぼす。今回は、こうした自然災害にともなう生物の思わぬ行動によるトラブルを紹介する。

 中国地方において、広い範囲で記録的な豪雨に見舞われた災害は記憶に新しい。この際、同地方の高圧配電線に連系している太陽光発電所の周辺で、多くの沢が氾濫した。この影響で、この太陽光発電所内も浸水した。

 この太陽光発電所は、エネテクがO&Mを受託している。

 豪雨の翌日は、台風一過のような猛暑となった。しかし、この太陽光発電所からは、稼働停止を知らせる警報が届いた。このため、エネテクの点検担当者が現地に向かった。

 しかし、前日の豪雨によって、あちこちで土砂崩れが起きていた。これによって近隣の道路の多くで通行できない状況だった。高速道路の一部も通行止めとなっていた。現地には簡単に到着できなかった。

 中でも、この太陽光発電所の近隣の道が、土砂によって通行できなくなっていた。この土砂は、近くの沢が氾濫した際に、沢からの泥水に混じって溢れてきたもののようだった。クルマで現地まで行くことは難しく、途中から歩いて現地に向かった。

 こうして何とか現地には辿り着いた。しかし、すでに夕方になってしまっていた。

 太陽光発電所に近づくと、太陽光パネルの上が、葉っぱのような緑色の異物に覆われている状況が見えた。

 近くでみると、それは葉っぱではなかった。おびただしい数のカエルの死骸だった。

 この太陽光発電所の中や周囲で、通常はカエルを見ることはなかった。豪雨の影響で多くのカエルが流されてきたものと推測された。

 周囲に流れる多くの沢が氾濫し、このサイトにも泥水が流れ込んでいたことから、沢の上流などに生息していたカエルが、激流で押し流されたと考えられた。

 その後、水が引いて、翌日には、さらに炎天の猛暑となった。

 カエルは、水場で生きている。水がない場所で炎天の猛暑に晒されたところに、青々としたものが広がっていた。なんだか池や沼の水面のように見えなくもない。

 そこに涼を求めて、えいやっとばかりに飛び込んだ。カエルたちが期待したのは、「古池や蛙飛び込む水の音」というような状況だったのだろう。

 しかし、そこは池でも沼でもなかった。太陽光パネルの上だった。

 この日の気温は35℃を超えていた。炎天の日照を浴び、かつ、フルに発電していた太陽光パネルの表面は70℃近くに達していた可能性がある。

 この上に次々に飛び乗っていったカエルは、灼熱の太陽光パネルに着地したとたんに、短時間で水分を奪われ、パネル表面に固着するように死んでしまったようだ。

 死骸を見ると、太陽光パネルの上から何とか動こうとしながらも、そのまま張り付いて動けなくなり、死んでしまった状況がうかがえる(図1)。

図1●何とか逃げようとしたものの、固着してしまった状況がうかがえる
図1●何とか逃げようとしたものの、固着してしまった状況がうかがえる
(出所:エネテク)
クリックすると拡大した画像が開きます

 太陽光パネルを池や沼などの水場と誤認する例では、トンボの例が知られている。太陽光パネルを水面と誤認して、パネル表面に産卵してしまう。

 トンボの場合は、平常時の誤認で、これも卵にとって不幸な例だが、今回のカエルの場合、濁流にのまれて流されるうちに、たまたま太陽光発電所に流れ着いたもので、災害に巻き込まれた生物に起きてしまった“悲劇”だった。

 この太陽光発電所の復旧において、太陽光パネルに固着するように死んでいたカエルの除去には、かなりの時間を要した。

 中でも、内臓が太陽光パネルにへばりついて乾いていた場所は、除去に苦労したという。こうした異物を放置すると、過熱の原因となり、いわゆるホットスポットが生じかねない。このため、すべて除去した。

 死骸の除去を終えて、ふと太陽光パネルの裏面側を見てみると、まだ生きているカエルがいた(図2)。

図2●裏面の電線の上にいたカエル。こちらは生きていた
図2●裏面の電線の上にいたカエル。こちらは生きていた
(出所:エネテク)
クリックすると拡大した画像が開きます

 太陽光パネルの裏面側にある電線などに、多くのカエルがつかまっていた。こちらは日陰のため、日干しにならずにすんだようだ。

 生きのびたカエルが、日中に発電している最中の太陽光パネルに、飛び乗ることがないことを願い、現地を後にした。



【エネテクによるトラブル・シューティング】