発見例が増えてきた、「雨が降ると漏電する」太陽光パネル

エネテク 第73回

2021/08/19 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 今回は、太陽光発電所において、雨が降った時だけに生じるという、あまり知られていない太陽光パネルの地絡の例である。最近になって、増えつつあるという。

 雨の日に、パワーコンディショナー(PCS)が地絡を検出し、稼働を停止する。遠隔監視システムでPCSの稼働停止が通知され、翌日、点検担当者が現地に向かい、安全を確認した上で、PCSを再起動する。

 点検担当者が現地に向かうのは、通常は雨天ではなく晴天時である。晴天時に、通常通りに発電が復旧する。その後、再び雨が降った日には、またPCSが停止する。

 エネテクでは、こうした「雨天時にのみ生じる地絡」が疑われる例を、複数の太陽光発電所で発見してきた。原因のひとつに、太陽光パネルの不良があると推測している。

 この地絡による不良の難しいところは、天候が回復すると、地絡の状態も解消されてしまう点にある。

 さらに、太陽光パネルメーカーにこの状況について問い合わせると、「雨天時に、パネルの絶縁抵抗値が下がるのは当然の現象」、「その際の絶縁抵抗値は、1MΩ以上あれば製品として問題ではなく、異常ではない」といった回答がなされることが多い。

 それでは、雨天時に地絡が生じる太陽光パネルの、その際の絶縁抵抗値は1MΩを下回っているのかどうか。これを証明するのは簡単ではない。

 そもそも、太陽光発電所における電気的な点検は通常、雨天時には実施しない。感電などのリスクが高まることに加え、雨に濡れながらの屋外作業は、点検に限らず身体的・心理的な負担が大きいからだ。そのため、通常は晴天時に点検する。

 しかし、この地絡は雨天時にしか生じないと思われるため、同社ではこれまで、安全かつ雨天時の状況を再現できる手法で、点検したこともある。例えば、雨の降っていない時に、噴霧器をつかって水で濡らし、その状態で1枚ずつ太陽光パネルを点検したことがある。さらに、豪雨の中、安全を確保しながら点検したこともある。

 いずれも通常以上に手間や根気のいる点検で、しかも、顧客に追加費用を請求することもできない。それでも実施したのは、今後、多く生じる可能性があるため、早く実態を解明し、太陽光パネルメーカーを含めた業界共通の知見になって欲しいとの使命感からという。

 こうして実際に、雨でPCSが停止した時には、太陽光パネルメーカーが不良と認定するとしている数値である「絶縁抵抗値1MΩ以下」に下がっているパネルがあることを、豪雨時の点検で突き止めた例がある(関連コラム:「雨が降ると漏電する」太陽光パネル、豪雨時の測定で異常値)。

 今回、紹介する太陽光発電所でも、これと同じような不良が生じていた。高圧配電線に連系している太陽光発電所である。

 この太陽光発電所において、雨天の日の午前、PCSの発電がとまり、雨がやんだ昼ころになってようやく起動し、発電が始まるという現象がおきた。

 雨が止んだ後にPCSが起動していたことから、それまでの時間帯は、雨などによって直流回路が何らかの影響を受けて絶縁抵抗値が低下したことで、稼働を止めていたことが予想された。

 そこで、似た状況が再現されている可能性が高い、雨天の日に現地に向かった。

 発電事業者に、その日に現地に点検に向かうことを知らせると、雨天時にPCSが稼働を止めた数日前に、雑草の草刈りをしたということだった。

 これを聞いて、除草作業中に電線を損傷してしまい、それによって絶縁不良が生じた可能性も考えられた。

 雨天時に、現地に到着して、まずPCSを確認した。やはり、PCSには絶縁抵抗値が低下していた記録が残っていた。

 そこでまず、このPCSの直流側の絶縁抵抗値を測定した。すると、ほとんどが100MΩ以上という正常な絶縁抵抗値を示した中で、1回路だけ約0.2MΩという、著しく低い絶縁抵抗値が計測された回路があった(図1)。

図1●直流回路の絶縁抵抗値が約0.2MΩと極端に低かった
図1●直流回路の絶縁抵抗値が約0.2MΩと極端に低かった
(出所:エネテク)
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 この高圧の太陽光発電所は、結晶シリコン型の太陽光パネルを24枚接続し、1つの直流回路であるストリング(太陽光パネルを接続した単位)を構成している。直流回路の電圧は約800Vあり、絶縁抵抗値は0.4MΩ以上が正常な状況となる。

 次に、この直流回路の開放電圧を測定すると、他の回路と同等の値だった。これによって、電線が損傷して断線している状況にはないことがわかった。除草作業時に電線を損傷してしまった可能性は低くなった。

 念のため、PCSを再起動して電流値を測定した。電流値も他の健全な直流回路と同等の値を示した。

 そこで、直流回路の中を切り分けて、絶縁不良が生じている場所を絞り込んでいった。

 すると、外見はまったく問題のない、ガラスが割れていることもない、電線も損傷していない、目視では不具合が生じていることがわからない、1枚の太陽光パネルの絶縁抵抗値が極端に低いことを発見した。

 この太陽光パネルの絶縁抵抗値は約0.2MΩで、このパネルが直流回路に悪影響を与えていることがわかった(図2)。

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図2●絶縁抵抗値が約0.2MΩと極端に低いパネルを発見
図2●絶縁抵抗値が約0.2MΩと極端に低いパネルを発見
(出所:エネテク)
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 そこで、この太陽光パネルを切り離し、残りの健全な23枚だけで接続し直した。この直流回路だけ、応急的に1枚少ない構成とした。

 この状態で直流回路の絶縁抵抗値を測定すると、絶縁不良の太陽光パネルを外す前の約0.2MΩから、100MΩ以上に改善した(図3)。

図3●不良のパネルを外して接続すると、直流回路の絶縁抵抗値が100MΩ以上に改善
図3●不良のパネルを外して接続すると、直流回路の絶縁抵抗値が100MΩ以上に改善
(出所:エネテク)
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 この状態で発電を続け、数日間、様子をみてみた。雨天時でも、稼働が停止することはなくなった。

 エネテクの今回の点検従事者によると、これまでストリングの絶縁不良というと、電線の損傷やコネクタの接続不良や劣化が原因であることが多かった。しかし、最近は、今回のように、太陽光パネルに起因する絶縁不良を発見することが増えているという。

 経年劣化に原因を求めることもできるが、雨天時には、一般的に太陽光パネルメーカーが不良と認める、1MΩを下回る絶縁抵抗値を検出している。

 漏電を防ぐのは、電気設備の基本中の基本であり、点検側には発見する責務があるとともに、設備メーカー側にも適切な対応が求められるのではないかとしている。



【エネテクによるトラブル・シューティング】