続・「マチュピチュ」のような尾根筋の太陽光、発電事業を止めて撤収

エネテク 第76回

2021/09/23 05:00
加藤 伸一=日経BP 総合研究所 クリーンテックラボ

 このシリーズでは、エネテク(愛知県小牧市)が、太陽光発電所の点検やO&M(運用・保守)サービスを担う中で対応してきたトラブル事例を取り上げている。同社は、2007年に創業した電気設備工事会社で、太陽光発電の施工も多く手掛けてきた。O&Mサービスでは、点検時に原因分析だけでなく、状況によっては、その場で不具合の原因を解消するといったワンストップの対応が特徴となっている。

 前回、山の中の何もない場所に、ぽつんと立地している太陽光発電所の例を紹介した。山道を登り、尾根に突如、現れるその姿は、まるで中南米にある古代遺跡「マチュピチュ」のようで、現地に向かうことすら困難だ(図1)。

図1●点検用のクルマでは近づけない山の尾根にある
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図1●点検用のクルマでは近づけない山の尾根にある
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図1●点検用のクルマでは近づけない山の尾根にある
(出所:日経BP)

 稼働後のトラブル対応を機に、エネテクが点検を受託したものの、普段の点検時に使っているクルマでは現地に辿り着けない。

 山のふもとから登り始める時点で、舗装されていない凸凹道に変わる。樹木の枝をくぐるように、曲がりくねった急な細道を登っていく。

 点検や設備の交換の度に、山のふもとに近い民家に空き地を借りて、そこに点検用のクルマを停めさせてもらう。そこから歩いて登って、現地まで向かう。パワーコンディショナー(PCS)を運んだ時などは、山小屋に食料や燃料などを歩いて運ぶ歩荷のような作業になったことを、前回で紹介した(図2)。

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図2●曲がりくねった細い山道
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図2●曲がりくねった細い山道
(出所:日経BP)

 この太陽光発電所は、低圧配電線に連系している。数区画の発電所が同時に開発され、隣接している。

 このうち1つの発電所が、発電事業を止めることを決定し、設備を撤去することになった。その作業を、エネテクが担当した。

 固定価格買取制度(FIT)に基づく買取期間は、まだ10年以上残っている。しかし、発電事業者や土地などに起因する何らかの事情によって、発電事業を止めて設備を撤去する太陽光発電所は、少ないものの例は出てきている。

 通常の点検用のクルマでは近づけない山道を通って、どのように現地から太陽光発電設備を運び出すのかが問題となった。

 エネテクでは、2つの車両を用意した。

 1つは、四輪駆動の軽トラックだった。通常の点検用の車両よりは、斜面が急で凹凸も大きい山道に向く。車幅が狭く、車長も短いので、つづら折りの細い坂道にも対応できるのではないかと期待した。

 太陽光パネルやPCS、架台や杭基礎など発電設備と資材を荷台に積んで、現地から降ろすのに活躍する。

 もう1つは、ユンボとも称される、小型の油圧ショベルだった。クローラー(無限軌道)で走行するため、今回のような凸凹道での走行には強い。

 アームの上下操作を使えば、杭基礎を引き抜いたり、撤収後の地面を軽く整地できる。山道を走行中に、もし軽トラックが立ち往生しても、前から引っ張るなどして救出できる。

 尾根にある現地までは、順調に山道を登ることができた。現地で設備を分解する作業も、順調に進んだ(図3)。あとは、軽トラックに設備や資材を積み込んで、山のふもとまで運び出すだけとなった。

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図3●発電設備や資材の分解は順調
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図3●発電設備や資材の分解は順調
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図3●発電設備や資材の分解は順調
(出所:エネテク)

 だが、部材を積み込んで山道を下り降りるのに悪戦苦闘した。

 まず、杭基礎や架台の支柱は長い。軽トラックの荷台に積むと、収まらずに後ろにはみ出してしまう。

 すこしはみ出す程度では済まず、まるでオナガドリの尾のように、車体から長く後ろにのびた状態になった。

 この状態でも、周囲の木々などにぶつからずに山道のカーブを曲がれれば問題はない。

 しかし、やはり曲がり切れない場所がでてきた。その場所では、軽トラックの荷台からいったん降ろして人手で運び、曲がり切った後、再び荷台に乗せて運んだ。

 その中でも、とくに長い杭は、油圧ショベルで運んで降ろした。アームには、ロープで吊り上げた。

 長い杭を吊り下げて山道を下ろす様子は、まるで酔っ払いが、お土産を吊り下げてゆらゆら歩いているような感じだったという。

 山道を降りている最中、軽トラックのタイヤが、次々とパンクするトラブルも起きた。左右の片方ではなく、両輪がパンクしてしまった。そこで軽トラックでの輸送を諦め、油圧ショベルを使って資材を運んだ。

 エネテクの点検や作業の特徴の1つに、ひとつ1つ状況を写真に撮って記録することがある。状況を正確かつ臨場感たっぷりに伝え、顧客への報告、社内での情報共有が容易になる利点がある。

 しかし、今回の撤収作業については、とくに山道を下った様子は、あとで悔やんだものの画像が残っていないという。撮影どころではないほどの苦闘だったようだ。

 このように四苦八苦したものの、無事に山のふもとまで設備と資材を運び出すことができた。

 この後の処理に関して、太陽光パネルの廃棄が手続き待ちとなっている。

 この発電所が立地する県には、太陽光パネルを産業廃棄物として処理できる企業がなく、隣県の事業者に依頼するしかない。加えて、産業廃棄物を都道府県をまたいで運搬するには制約があり、現在、この許可を得る手続きを待っている。



【エネテクによるトラブル・シューティング】